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第九話 X.暴虐のデキムス

対空砲と軽迫撃砲、重迫撃砲をそれぞれ4門という大荷物を持っている俺達はこれらを自分達だけで運ぶ事は明らかに不可能なので、運ぶ人員を確保するついでに足りない兵力を補充するために募兵する事にした。

と言ってもやる事は魔導工房のプリンターを借りて赤紙を印刷し、そこにまだ徴兵適齢の人がいる家の住所と氏名を記入して郵便局に持って行くだけ。

そして、一週間後に集まった人々は…!


「ついにこの時がやってきたぜ!どの銃を使って魔王軍をぶち殺せば良いんだ?!」


砲兵2個中隊と歩兵1個中隊程度の人々、よかったちゃんと予想通りの人数の人が来てくれて。徴兵逃れは王都ではよく聞いたが、港町ではあまりない事らしい。

なんでも王の出身地だから今まで徴兵が免除されてたとか。そこを王子特権で徴兵をゴリ押した訳だね。

でもこれから彼らを砲兵としてこき使うには、訓練する必要がある。

そしてそのノウハウを持っているフレイヤは…


「な、なんなんだこの人達…あまりにも頭が悪すぎる…」

「え?この棒は弾を入れるための棒なんですか?知らなかった。これで砲口を掃除するのかと。」

「砲身が削れるんだよそういう事すると…」


敬語じゃないフレイヤも新鮮だが、大砲の使い方に慣れない大勢の人々を前に大分疲れているようだ…そうだ!ここはこの前使い方を覚えた回復魔法装置で元気付けてやろう。


「フレイヤ、ちょっと右手貸して!」

「え?殿下…?」


緑色の魔法石を装填した回復装置をフレイヤの右手に当て、トリガーを引いた。

すると緑色のいかにも回復しそうな光が満ち、フレイヤの目元にあったクマもみるみるうちに消えていった。


「どう?元気になった?」

「あ…あ…で…殿下…なんて事を…」

「え?」

「回復魔法で働かせ続けるなんて…でも、王国を守るためなら仕方ないですよね…うぅ…」

「ご、ごめんね、これとは関係なしに休憩時間とか作るから…」


よく考えたらブラック企業大歓喜じゃんこのシステム、回復魔法をエナドリみたいに使うなんて…!









あれから数日が経った。


「殿下の回復魔法のおかげでたった数日で彼らをそれなりの練度に訓練できましたよ!えぇ…」


目元にクマも何もなく、健康そうに見えるのに目だけが死んでいるフレイヤを前に俺は何も言えなかった…


その後老いて退役した元軍馬を12頭格安で港町の軍司令部から購入し、砲を運ばせる事にした。

ようやく準備の整った俺達はついに村へ戻る事にした。

流石の猟師の爺さん達も驚くだろうなぁ…






















目に入ったのは、焼き払われた家々、焦げた木々、そして恐らくは…人だったもの。


「あ…あぁ……」

「殿下…」

「た、対空砲を展開しなさい!敵がいる可能性が高いわ!!」


俺が呆然としている間に中隊長のお嬢様風の兵士は対空砲を展開している。正しい判断だ。


「殿下…大砲は展開しますか…」


正しくない判断をしたのは、俺だ。


「………」

「殿下…」

「………」

「殿下!!!」

「!!!」


「この村が失われたのは手痛い損害です!ですが!今考えるべき事は自分を責める事ではなく!これからどうするかです!!さもなくば今魔王軍に殺されるかもしれません!!」


「さぁ!大砲は展開しますか?!」






「…事が起きるとすれば近接戦闘だろう、大砲の活躍する場はないから「ッ!!!」」


背後から爆発音が聞こえ、気づいたら地面が目の前に広がっていた。


「ほぅ…俺の不意打ちを見切るとは、この女やるようだな。」

「…ぐっ、やはりこんな大きい障壁を広い範囲で展開すると負担が…」


立ち上がり、前を向くとそこには謎の男が空中に浮遊していた、恐らく敵だろう。


「村を焼くのも面白かったが、この女と遊ぶのも楽しそうだなぁ、ちょっと付き合え!人間!!」


「死ねですわぁぁぁぁぁぁ!!!!」


その声の直後にドカンと対空砲が砲声を轟かせる。


「ッ!なんだこの道具!消えろ!!」


その男は魔導障壁で対空砲を防いだと思えば手を対空砲の方へ向けたと思うとバシュンと大きな火の球を放ち、それは対空砲の方へ…


ボカン!!!















「ハァ…ハァ…うぅ…」

「この女…どれだけ魔力があるんだ…?あんなに大きいバリアを2回も…」


「フレイヤ!!」


フレイヤは2回連続で大きい魔法を使ったせいか、体の至る所に切り傷のようなものができており、わずかに血が噴き出している。


「こんなに魔力があるなら…俺との子を成せば、どれだけの魔術師が誕生するか…!!」


「おい!そこの女!俺の子を産め!!!」


フレイヤは気付けば気絶しており、バリアには期待できなさそうだ。ならば…!


「対空砲撃て!!」

「りょ、了解!!撃て!!!」


ドン、ドンドンと3門の対空砲が一斉に火を噴く。


「バカめ!そのようなちっぽけな道具が役に立つ訳…え?」


撃ち続けていると奴のシールドにヒビが入った。

まだ我々は撃ち続けている。


「装填完了!発射準備よし!」

「発射!」

「え…ちょま…」


シールドのヒビは増え続け、奴は反動で少しずつ後ろに押し出されている。


「ええいクソ!」


奴はそう言うと天高く飛び立った。


「ここまで高くまで来ては弾も届かまい!!女を傷つけないために加減してやるが、女以外は死ぬだろうなァ!死ねぇ!!」


奴は指を対空砲のうち一つに向けると謎のビームを放ち…それは対空砲のシールド(対空砲についている垂直な板)に当たった!


「ッ!そのためのシールドですわ!重くても付けてて良かったですわ!野郎ども!!狙いをよく付けなさい!!!」


曳光弾のように輝く弾幕は高速で飛び回るあの男を前にしても少しづつ近づいている!

そしてそのうち一発が命中した!


「当たりましたわ!!」

「………!!!」


奴は何が叫んでいるが、空高く飛んでいるので聞こえない。


二発、三発と当たり始め、ついにシールドのヒビは割れ目になり、シールドを割った。


「……!!!……!!!」


奴は何かを叫んでどこかへ飛び去っていった。

あまりに速かったので対空砲の旋回が間に合わずに取り逃してしまった…


「や、やりましたわ!!さぁ指揮官!!フレイヤ様を助けて差し上げて!!!」

「わ、わかった!」


俺は回復装置を正しい使い方で使った。

やはり回復力のありそうな緑色のオーラが辺りを満たした。


「…殿…下……」

「フレイヤ!?」

「…ありがとう…ございます…」

「無理に喋るな!クソ!!どうしてこんな良いヒロインがこんな酷い目に遭うんだ!!おい!持ち堪えろ!!もうすぐ衛生隊が「いえ、もう自分で治せるので大丈夫です」あそう…」


フレイヤは切り傷だらけでも自分で回復魔法を使って回復した、強い子だね…


「いえいえ、殿下のお陰ですよ。あのまま血中魔素濃度が不足していたら気絶で済まずに死んでましたよあははは」

「そう…だったのか…」


フレイヤ…

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