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序章 夢と現実と異世界

夢を見ていた。


「…で……が……」


異世界に転生して、魔物を倒し、現地の人々にちやほやされる夢。


「…君……答え……」


バッタバッタと魔物を倒して、現代知識チートで人々の生活を豊かにして、チート能力で無双して、それで…


「ヤブサメ君…この問題…答え…」


「ヤブサメ君!!!」

「は、はい!!!ッ痛てぇっ!」


間違えて骨折している方の手で手を上げそうになってしまった。

魔法があればすぐに治るというのに、現実ではそう簡単に治らない。

一応怪我人なので優しさを持ってくれているのか笑い声は聞こえなかったが、周りの顔を覗いてみれば笑うのを我慢しているような表情をしていた。


「ヤブサメ君…この問題の答えは?」

「は…どの問題ですか?」


おい誰だ『プッ』て笑いそうになったやつ、まぁ仕方ないか…


「…まったく、この問題だ」


先生はコンコンと伸びる棒的なアレの先で黒板を叩いた、そこにはこう書かれていた。


『xt/α-yt/β』


「…わからないです…」


ついに笑いが巻き起こった。


「…もういい、この数式はランチェスターの法則の一次法則だ。経過時間をtに当てはめ自軍、敵軍の人数をそれぞれxとyに当てはめれば戦闘員の減少数は時間に関わらず一定である事が分かる。ここで定数αとβはそれぞれ自軍と敵軍の練度や兵器の性能を表している。」


…なんでランチェスターの法則を学校教育で扱っているのか分からないが、少なくともこの曜日のこの時間は数学だったはずだ。

最近の数学はえらく軍国的になったんだなぁ、ぐんくつの音が聞こえるぜ。


(※軍靴はぐんかと読みます。)


先生はこう続けた。

「さて、では次の問題。」


そう言うと先生は単に100万という数字を黒板に書いた。


「これは何の数字ですか?ヤブサメ君、答えなさい。」

「分からないです…」


今度は教室はシンとしている、俺のあまりの馬鹿さに皆が呆れてしまったのだろうか?


すると先生は無表情でこう言った。


「これは、あなたが殺した人数です。」


どういう事だ?俺は教室を見渡した。

するとさっきまでクラスメイトだった顔は見たこともない男の顔や、あるいは怪物のような異形の顔になっていた…おい誰だあの女子の顔をゴブリンにしたやつ、女の子やぞ。


「人殺し!」

「今すぐ死ね!」

「地獄に堕ちろ!」

「ちくわ大明神」

「ふざけるな!」

「死ね!」


ついにしーね、しーねとコールが始まってしまった。折角ちくわ大明神を挟んで流れを変えようとしたのに。

その時俺は気づいた。


あぁ、これが夢か。










「ジーク殿下!起きてください!」


目が覚めると、知ってる曇り空だった。

目の前にいる銀髪ロングの美少女は我らがフレイヤ、信頼できる部下だ。


「起きろと言われてもそう押さえつけられてたら起きられないよ」

「あぁ!良かった!!!」


抱きしめられた、ああ!胸が!胸が当たる!!!

『自制心』と3回心の中で唱えた、するとフレイヤの背後に見知らぬ影が…そしてそれは何かを振り上げた!


「危ないっ!」


まだ俺の頬に頬を擦り付けていたフレイヤを抱き抱えて右に体をフレイヤごと回転させる。直後にドゴンと棍棒が地面にクレーターを作る音がした。アレに当たればおしまいだ。


ひとまず左太腿に付けていたククリナイフのようなものを抜き目の前のオーガ目掛けて投げた。

肉に刺さるグシャという音がした、が彼はうめき声一つ出さない。代わりに彼は笑った。


「ガハハハハハ!!!そのようなちっぽけな刃物が効くとでも?その愚かさを冥府で後悔するがいい!」

「効くと思ってないよ!」


俺は胸に下げた小銃を向け、銃先に付けたグレネードランチャーを…ない?!


「何で無いの?!」

「ガハハハハハ!!!死ねぇ!!!!」


まずい、拳銃を抜くのは間に合わないしそもそも意味が…


ゴォォォォという炎の轟音が目の前を裂いた。


「GAAAAAAAAAA!!!!!」


炎に包まれた彼は名状し難い叫び声を上げたが、それはそう長く続かなかった。


ドドドと呼ぶかゴゴゴと呼ぶか迷うような音がそのオーガを蜂の巣にした、恐らく対空実弾魔法の水平射撃だ。

彼は弾幕の中で倒れていった。死んだのだろう。


「殿下!大丈夫ですか?!」

「あぁ、フレイヤのおかげだよ」


やはり持つべきはたった一丁の自動小銃ではなくただ一人の優秀な部下だろう。フレイヤのおかげで死なずに済んだのだから。


「…殿下!顔が煤だらけですよ!」

「あぁ、フレイヤのおかげだよ」


最初から対空実弾魔法撃つだけで十分だったんじゃないかな…?




「というかこんな所にオーガが出るなんて、前線部隊は何をしてるのさ?」

「ッ!………」

「?、どうした?」


「……壊滅しました。」

「…え?」

「第3歩兵大隊は!敵生物兵器により!壊滅しました!」


生物兵器?魔王軍が?理解できない。ここは現代じゃないんだぞ。


「魔王軍はグールを大量に召喚し、第3歩兵大隊の同時処理能力を超過させ全員を壊滅させました、生存者はいません…」

「…」


そんなの聞いた事が無かった、今まではそれなりに上手く作戦を立ててきたから。

そもそもグールなんてものを聞いた事が無かった俺は未だに混乱していた。




「殿下!今は彼らを追悼する時間ではありません!すぐに指示をください!猟兵大隊は全て生きています!」

「………そうだな、とりあえず後退して態勢を整える、砲兵と魔導砲兵に火力支援させて、歩兵大隊と猟兵大隊を丘まで後退させろ!」


ハッと短く返事をしたフレイヤはそばにやってきた猟兵に指示を下し、通信魔法で連絡を取り始めた。


さて、俺はどうするか。

司令部はご覧の通り破壊されている。まさかここに来て残存航空戦力を全て結集して司令部をピンポイントに爆撃してくるとは。

全て撃墜したものの多くの優秀な士官を失った。再建には時間がかかるだろう。




羽ばたく音が聞こえる、第二波か!?

空を見上げてその位置を探ろうとしたら後ろから肩を叩かれた。


「…ジーク。アグネスだ。迎えに来たぞ…救援には少々遅かったみたいだな。」


振り返ればワイバーン騎兵の中隊が瓦礫と死体だらけの司令部に着陸していた。


「…持つべきは良い友だね。助かったよ。だけど、俺達より先に前線の包囲されている歩兵と猟兵を先に回収して丘まで輸送してくれ」

「ワイバーンは空飛ぶ馬車じゃないんだぞ?…分かった、すぐに取り掛かる…私の目の届かない所で死ぬなよ」


そう言ってアグネスはワイバーンに飛び乗って他のワイバーン騎兵とともに飛び立った。


「さて、俺達も行くとするかね」

「ハッ」


歩いて何時間かかるのだろうか…と思っていたら、突然誰かに抱き抱えられた。


「うわぁっ?!」

「こっちの方が速いですよ、殿下」


フレイヤに抱き抱えられたと思えば、一瞬でさっきまでの景色が後ろへ行った…あ、もう見えなくなった。


「ちょ、降ろし…」

「こっちの方が速いですよ、殿下」


さらに加速した、人間にしてはおかしいでしょこれ。


俺は抱き抱えられている間に今後の取るべき行動を考えた。

そもそもどうしてこんな事になったんだっけ…?

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