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白狼少女はかなわない  作者: 池田 条
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森の異変

初めてこちらに投稿させていただきます池田条です。1作目ですので、気を付けてはいるつもりですが誤字脱字があることが考えられます。そういった点は指摘していただければありがたいです。なお、私生活の都合で不定期投稿になるのでご理解のほどをお願い申し上げます。

 ここは世界に獣人や精霊が人間の隣人として街中を行き交い、人々の行使する魔術、精霊のみが使う魔法によって生活を豊かにしてきた世界。

 そんな世界の茜色に染まり始めた空のもと。辺境に存在する広大な森の奥に1発の銃声が響いた。それを合図に数羽の鳥があわただしく木から飛び立ってゆく。やがて静寂が訪れた森の奥には、一人の浮かない顔の青年がひとり立ち尽くしていた。


「……まじか。やっちまったな。」


と青年はぽつりとつぶやく。

 この青年の名前は、アッシュ・ハンター。この広大な森を狩り場とする唯一の猟師で、草木に紛れるための茶色いマントに、鈍色の髪が印象的な青年である。

 本来ならもっと大物を狙っていたはずのアッシュだったが数日前から不猟に悩まされており、今は、長時間歩きまわってやっと見つけた獲物を逃してしまったところであった。

 アッシュはしばらくすると今日も成果がないという絶望を振り払うかのように頬を叩き、持っていた猟銃を近くの木に立てかける。アッシュ自身もその木に寄りかかると、遠い目をしながら空を見上げた。


「今日も収穫なしか。親父だったらこんなときどうするんだろうな……」


 そうつぶやくアッシュは過去を思い返す。

 アッシュの父はアッシュと同様に猟師であった。そもそもアッシュはその父から猟師としての技を教授されることで、この森で猟師として生活できるようになったのだ。猟師としてのアッシュの父は警戒心の強い獲物をしとめたり、凶暴な獲物であってもひるむことなく冷静に対処することができるような凄腕の持ち主であった。しかし、家でのアッシュの父はそんな鬼のような姿とは程遠く、まるで別人のようにやさしかった。アッシュの父は、幼いアッシュが新しいことを覚えるたびにえらいえらいとアッシュの頭をなでてほめてくれていた。そんな強くて優しかった父はアッシュのあこがれであった。

 あこがれだったの父の姿を思い出しながら、今の状況をどうしたものかと考えこんでいたアッシュだが、ふと周りを見回すと森の深くまで入り込んでいることに気づいた。あたりには差し込む光も少なく恐ろしげな雰囲気が立ち込めている。普段のアッシュであれば間違いなく途中で引き返していたはずであったが、数日の不猟による焦りから森の危険な領域にまで足を踏み入れていたようだった。


「こんな深くまで入っちまったのか。こんなところに長居するのはまずいな。早いとこ帰らないと。」


と、アッシュは一人ごちる。そして、立ち上がろうとしたその時だった。アッシュは森のさらに奥から何者かの視線を感じた。アッシュは顔を向け、視線を感じるほうにじっと目を凝らしてみるが何かがいるようには見えない。


「何だ?誰かいるのか?」


 本来、この森は恐ろしい獣が出るということでこのあたりの人は入ろうとしない。そもそもこの森は都市や町からも離れた場所で、これといった特産があるわけでもないため外部の人間など全くと言っていいほど来ない。そんな森の中、正体不明の視線はアッシュに大きな恐怖を与えた。加えてこの場所は、アッシュですらなかなか入らないような暗い森の奥だ。その恐怖は増幅されアッシュに襲い掛かってくる。


「ああ、くそっ。何だっていうんだ!」


 アッシュは急いで傍らに置いておいた猟銃を掴むと、身を翻し森の中を家のある方へ駆けて行った。





 アッシュはいまだ背後に感じる視線に背中を押され、激しく息を切らせながら森の来た道を戻っていく。途中、何度も木の根や石に足をとられ転びそうになりながらも走り続けた。

 そうして、必死に走り続けているとようやく遠くにアッシュの家が見えてきた。


「はあ、はあ……やっと、着いた!……あっ。」


 アッシュがようやくこの視線から隠れることができると少し気が緩んでしまった瞬間だった、足元に張っていた太いツタに足を引っかけてしまう。アッシュはバランスを崩し、動転していた脳はそれに対応できず、成す術もなく頭を地面に強打する。


「ぐあっ!しまっ……た……。」


アッシュは意識の途切れる直前、森の奥から駆け寄ってくる人影が見えた気がした。



ここまでお読みいただきありがとうございます。感想評価なども受け付けておりますので気が向きましたらよろしくお願いします。

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