第56話 想像を絶するオシオキスペシャルで悶絶する悠
悠が目を覚ますと、そこは百合華と一緒のベッドという楽園だった。
色々あった林間学校も最終日となり、後は片付けをして帰るのみである。
悠は深夜の情熱的な告白を思い出し、布団の中で猛烈に恥ずかしさが込み上げ、隣で寝ている百合華の体温を感じてドキドキが止まらない。
(くぅぅ~っ……あの星空とロマンティックな雰囲気で盛り上がって、凄い情熱的なことをしてたような……。は、恥ずかしい……恥ずかしくて、お姉ちゃんの顔をまともに見られないぜ……)
悠の隣で寝たふりしている百合華も、実は深夜の情熱的な告白を思い出してドキドキが止まらない。
(うぅぅ~っ……あんなロマンティックな雰囲気で、ユウ君に『永遠に一緒』って言われちゃった。は、恥ずかしい……恥ずかしくて、ユウ君の顔をまともに見られないかも……)
実は、この百合華――――
恥ずかしいのは告白やダンスの件だけではないのだ。
夜間の見回りから戻り、悠の眠るベッドに潜り込んだ百合華なのだが、もう告白の興奮やら他の女に対する嫉妬やらがグチャグチャで、欲求不満が限界を超えてしまっていた。
ドロドロとした感情とウズウズとカラダの奥の方を刺激し続ける欲望で、ついうっかり悠と密着して滅茶苦茶イケナイことをしまくっていた。
悠にバレないように、そして同室の花子にもバレないように。
百合華は、滅茶苦茶声を我慢しまくって何度もピーしてしまったのだ。
「んん~ん、良い朝です」
反対側のベッドで花子が起きた声がする。
そろそろ起きないと怪しまれてしまうだろう。
「お、おはようございます」
先に悠が覚悟を決め、恐る恐る起き上がった。
「あっ、明石君おはよう」
花子も挨拶を返す。
ふらっ――
むにゅ!
「あっ!」
よろけた悠が、百合華の胸を触ってしまう。
「ひゃん!」
百合華が飛び起きた。
「あ、ごめん……」
「ユウ君、なに触ってるの! 後で説教ですからね」
恥ずかしさを誤魔化して怒ったフリをする。イケナイことしまくって、早く朝シャワーを浴びたい百合華なのだ。
そのせいで色気が増しているのか、今の百合華は更にフェロモン倍増し、部屋中にピンク色のオーラが漂っているように見える。
まさしくフェロモンが可視化できそうなほどに。
「じょ……女王!」
「師匠です!」
「い、いえ、すみません師匠。凄い色気なので……」
「ちょ、ちょっと寝汗をかいただけです。シャワー浴びますね」
「どうぞ……」
あまりにも凄まじい百合華の色気に、花子も目をぱちくりして驚いている。
間違えて女王と呼んでしまうくらいに。
もう、ここまでくると本当に人なのか淫魔女王なのか分からなくなるほどだ。
「くんかくんか……」
悠が、何を思ったのか自分の腕の匂いを嗅いでいる。
(あれっ? 今日は一段と、お姉ちゃんの匂いが強いな。またお姉ちゃんが俺を抱き枕にしてたのかな? くんかくんか……この匂い、落ち着くぜ……)
自分の腕をくんかくんかする悠を見て、百合華が顔を真っ赤にした。
(ちょちょちょちょっとぉぉぉぉぉぉ~っ! ユウ君、くんかくんかしないでぇぇぇぇ~っ! 目の前でなんて恥ずかし過ぎるよぉ……)
今日も今日とて百合華は百合華だった。
あまり深く追求してはいけない。
ジャァァァァァァァァ――――
百合華がシャワーに入っている間、悠と花子が二人になる。しばしの沈黙だ。
花子は百合華の人間離れした色気が気になるようで、悠をチラ見しながら色々と妄想していた。
「さすが師匠……魔神の刻印の淫魔女王のようです」
花子がポロっとエッチな深夜アニメの話題を漏らしてしまう。
「せ、先生……エッチなアニメ観てるんですか?」
思わず口を滑らした花子に、うっかり悠がツッコんでしまった。
「こ、こここ、これは違うんです……」
そう、この花子先生はエッチなアニメも大好きなのだ。
ちょっとヘンタイなのもバッチコイだ。
その辺は悠と気が合いそうだった。
「お、お願いします。何でもしますから、ほ、他の生徒には内緒にしてください」
「え? 何でも……」
何でもするとか変な展開になりそうだが、悠の場合は姉に徹底的に躾けられているので、そんな気は起こらなかった。
「いえ、誰にも言わないから大丈夫ですよ」
「本当ですか?」
「はい、俺もアニメは好きなので」
「あ、明石君、優しいです。よかったぁ……」
バレたのが悠で、花子も安心する。
むしろ、お気に入りの悠に恥ずかしいネタで脅されるエッチな展開を望んでしまうくらいだ。
「でも、明石君のお姉さんの色気は何処から……やっぱり弟エキスを吸って……わ、私も悠君のような弟がいれば……」
「ちょっと、先生! 問題発言ですよ。事案発生ですよ」
「しゅみません……」
もう色々とヤバい花子に、何処からツッコんで良いのか分からなくなる悠だ。
(お姉ちゃんも色々とヤバいけど、この先生もヤバいよな……。意外と世間にはヤバいお姉さんが多いのか?)
※悠の周囲だけです。
◆ ◇ ◆
林間学校の全日程が終了し、悠たちは帰りのバスに揺られていた。
相変わらず悠の周りには女子ばかりだが、行よりも女子同士が仲良くなっていて、悠の顔が自然と緩んだ。
やはりギスギスよりほのぼのが良い。
「でも残念だったよな。明石を部屋に連れ込めなくて」
真理亜がつぶやく。
「まあ、次は容赦しないわよ。悠」
悠の横に座っている貴美も真理亜に同調してしまう。
「次は徹底的に堕としてあ・げ・る・(ぼそっ)」
沙彩が後席から身を乗り出し、悠の耳元で悪魔のような囁きをした。
女子同士は仲良くなったが、悠への扱いはより怖くなってしまったようだ。
悠は『聞かなかったことにしておこう』と思った。
◆ ◇ ◆
「うぅ~ん、やっぱり家が一番」
自宅の到着するなり、百合華はソファーに飛び込みゴロゴロする。
今日は特別に、姉と一緒に下校した。林間学校に同行した教員も、生徒と一緒に解散となったのだ。
ちょっとだけ同級生気分で帰宅したのだが、姉が年寄りのようなフレーズを言ってしまい台無しだ。
「お姉ちゃん、行儀が悪いよ」
「ふ~ん……ユウ君、そんなコト言っていられるのも今の内だよ」
「えっ?」
帰りのバスでは抑えていた姉のフェロモンが、急激に上昇し放出される。
それはもう本物のサキュバスのように。
やっぱり人間離れしているようだ。
「今から起訴状を読み上げます。被告人悠は、林間学校の三日間に於いて同級生女子とイチャイチャし、それを姉に見せつけたものである」
突然、姉裁判が始まってしまう。
「は? ええっ?」
「なお、この裁判は通常のものとは違い黙秘権は認められません。罪状認否もありません」
百合華が一人何役もこなし検察官も裁判官も一人でやるらしい。
そしてちょっと横暴だった。
「続いて冒頭陳述。被告人悠は、林間学校の間に、同級生女子から腕に抱きつかれる32回、首に腕を回される8回、体に抱きつかれる3回、並んで料理を作る、部屋に連れ込まれそうになる、バスの中でイチャイチャ行為をする、更にそれを最愛の姉に見せつけるという許されざる大罪を犯しました――――」
「いやいやいや、何の裁判だよ! 不可抗力だよ。てか、ちゃんと数えてたのかよ」
「判決を申し渡す」
百合華裁判長が主文を後回しに厳しい判決を出そうとする。
「判決早いよ! 途中飛ばしちゃってるよ!」
「――――よって、被告人悠を、一緒にお風呂で洗いっ子、『あーん』で食べさせる、ひざ枕してテレビを観る、脚をマッサージ、水着で添い寝の連結刑に処す!」
「がぁぁぁぁーん! いや、普段からやってるような……いや待て、最後の水着で添い寝って何だよ?」
「そんなの、ユウ君と私が水着になって一緒に寝るに決まってるでしょ」
百合華が、とんでもないことを言い出した。
パジャマで寝るだけでも凄まじいエロさなのに、水着で寝たら素肌が密着して大変なことになってしまう。
そして、水着では悠のわんぱくなあそこもバレバレだ。
「くっ、そんなの我慢できる自身が無い……」
「ふふっ、水着だからって全く手を抜くつもりはないからねっ! あっ、水着は寝るとき使うから、お風呂は裸で良いよねっ!」
「良くねえよ! アウト過ぎるよ!」
突然、服を脱ぎだす百合華。
ただでさえエロいのに、今日は当社比五倍くらいのエロさになっている。
溜まりに溜まった悠への想いで、疼きっぱなしのカラダが爆発しそうなのだ。
「だから、服を脱ぐなっ!」
悠の文句も空しく、百合華は下着姿になってしまった。
「ほらほら、お風呂行くよ。ユウ君が同級生の子とイチャイチャした報いを、一億倍の刑罰にして返すからね。もう、どうなっちゃう分かりませ~ん」
興奮して上気する百合華が、悠を引っ張って浴室に連れ込む。
林間学校の三日間で溜まりに溜まった欲求不満が遂に爆発する時が来たのだ。
「ああっ、俺……もうダメかも……」
悠の諦めの言葉を残し、浴室のドアは無情にも閉められた。
ガラガラガラ――ガチャ!
「ふっふっふ……ユウ君、もう逃げられないよぉ~」
「くっそ、このエロ姉、ノリノリじゃないか……」
悠は目を瞑って背中を向け、姉の裸を見ないようにする。
フェロモン全開の百合華を見たら、絶対に我慢できなくなってしまいそうだからだ。
「そんなに恥ずかしがらなくても。ユウ君って恥ずかしがり屋さんなんだからぁ~♡ まっ、そこが良いんだけどね」
見ていないのをよいことに、悪乗りした百合華がとんでもないプレイをしてしまう。
ボディーソープを泡立てると、自分の体にヌリヌリしてから、悠の背中に抱きついて密着させた。
「うわっ、な、何? どうなってるの?」
「ユウ君は楽にしてて良いよ。お姉ちゃんが全部洗ってあげるからねっ」
にゅる、にゅる、にゅる、にゅる、にゅるっ――――
柔らかな体を密着させ背中をすりすりする。
そのまま両手で悠を抱きしめて、全身を隈なく洗ってゆく。
たまに手が危険な場所に滑り込んでしまうが、きっと偶然だからセーフだろう。
「うわぁぁぁぁ! 何だこれ! 何だこれ!」
あまりの快感に悠が座っていられず、タイルの床に崩れ落ちた。
「ふふっ、まだまだこれからだよ。お姉ちゃんスペシャルは」
百合華はそう言うと、両腕だけでなく両脚まで絡めてしまう。
容赦のないヌルヌル攻撃が悠の全身に余すところなく襲い掛かる。
悠の脚に百合華の脚が絡みつき完全にロックされ、もはや完全無防備にされたカラダに次々と連続攻撃を受け続ける。
「ユウ君、ユウ君、ユウ君、ユウ君、大好きユウ君!」
興奮した百合華が止まらなくなってしまう。
「くぅぅぅぅぅぅ~~~~」
そして悠は限界を迎えた。
(ああっ、もうダメだ……)
どんな姉のオシオキにも耐え続けた悠が、遂に限界突破して陥落してしまった。
決壊した欲望の閃光は、まるで夏の局所豪雨のように押し寄せ、虹を反射するプリズムのように空中に走った。
余りの恥ずかしさで固まる悠と、興奮し過ぎてベスケベモードの百合華は、このままどうなってしまうのだろうか――――




