第18話 二人の熱くて長い背徳感いっぱいな夜
魅惑的な百合華の顔が迫る。
まるで魅了と催淫を同時にかける淫魔に魅入られてしまったかのように、悠は爆発寸前のカラダを震わせながら百合華を見つめていた。
もう後戻りできない、禁断の関係に足を踏み入れてしまいそうになりながら。
「ユウ君……」
「お姉ちゃん……」
百合華の熱を持って潤んだ美しい瞳が煌き、柔らかそうなくちびるが少し開いた。
「って、ちょっと待った」
「んんっ……」
悠が百合華の口を押える。
「ほっぺって言ってたよね? 今、口にしようとしてたような?」
「んっ、ひのふぇいだよ……」
油断も隙も無い義姉だった――――
「も、もうっ、冗談だよ。ちゃんとほっぺにするから」
本当は義弟のファーストキスを奪いたかったのかもしれないが、百合華のくちびるは目標を変更し悠の頬に迫る。
そして、二人の顔は重なって行き、ぷるるんっとした形の良いくちびるが悠の頬に触れた。
「ちゅっ……」
「んっ、ううっ」
頬にキスをされただけなのに、悠のカラダに電流が流れたかのような快感が迸る。
恋愛感情や興奮状態が極限に達し、脳内物質のドーパミンが大量分泌されたのだ。
それはまるで、愛の牢獄に囚われてしまったかのような、逃れることのできない契約の証を刻まれてしまったかのような、完全に義姉のモノにされてしまった刻印のような。
上に乗られた柔らかなカラダから体温が伝わり、心地良い義姉の匂いと垂れ下がる髪が首筋をくすぐる。
爆発寸前の悠のカラダも密着して、わんぱくところもバレバレになっている。
悠は再び陥落寸前になってしまった。
(だ、ダメだ……。一度は耐えきったかと思ったのに……もう、我慢できない……。こんなことをするんだから……きっと、お姉ちゃんも俺と同じように好きなはず……。俺が、この両手で強く抱きしめて、お姉ちゃんのくちびるにキスをすれば……きっと受け入れてくれるはず……。もう……いいよな…………)
決壊しそうな悠の気持ちだったが、ギリギリのところで踏みとどまった。
(だ、ダメだ、やっぱりダメだ!! 今俺が感情に流されてしまったら、全てを崩してしまうかもしれない。積み上げて来た信頼も、家族の絆までも)
悠は百合華の目を見つめた。
(俺は……お姉ちゃんを幸せにしたい! 将来、結婚して大切にしたいんだ! だから今はダメだ! 一人前になって、両親も周囲の大人たちも納得させるようにしないと!)
ぐぐっ!
悠は百合華を肩を持って優しく押しのけた。
「はい、もうオシマイだよ。お姉ちゃん」
「う、うん……」
ベッドに並んで腰かける。
お互い黙ったまま真っ赤な顔をして固まってしまう。
攻め攻めだった百合華も、頭が沸騰していっぱいいっぱいになっていた。
(あ、危なかったぁ~! ユウ君が止めてくれなかったら、最後まで行っちゃいそうだったよ……。逆光源氏計画が我慢できなくて破綻寸前だよぉぉぉ~っ!)
「あ、あの……お姉ちゃんは自分の部屋に戻るね」
「う、うん」
百合華は自室に戻って行った。
◆ ◇ ◆
ドアが閉まり、百合華が自室に戻ったのを確認してから、悠はベッドの上に寝転がった。
(危なかったぁぁぁぁ! 絶対バレてるよな……)
悠が自分のカラダのある部分を押える。
きっと、上に乗られた時に気付かれているはずだ。
もう、恥ずかしいやら抑えようのない衝動が凄いやらで、体をグネグネしてしまう。
一方、自室に戻った百合華は――――
(危なかったぁぁぁぁ! もう、色々と大変なことに……)
百合華が自分のカラダのある部分を押える。
上に乗った時に、パジャマ越しに義弟のカラダの変化を感じ取っていた。
もう、恥ずかしいやら抑えようのない衝動が凄いやらで、魅惑的な体を抱えてウネウネしてしまう。
壁を隔てた両側の部屋で、情欲の炎に身を焦がした二人は、お互いを想いながらイケナイコトをめっちゃしまくった。
◆ ◇ ◆
翌朝――――
食卓で顔を合わせた二人は、何やら気まずい感じになっていた。
それもそのはず。
悠は、昨夜の姉とのキスの後に、姉をおかずにしてイケナイコトをいっぱいしてしまった。
もう恥ずかしくて姉の顔を見られない。
(うっ……いくら興奮していたとはいえ、神聖なお姉ちゃんをおかずにしてしまうなんて……。いつもは、漫画やアニメの姉ヒロインで、お姉ちゃんに似ているのを使っていたのに……。うわああっ! 頭の中がお姉ちゃんでいっぱいで、お姉ちゃんしかおかずにできなくなりそうだぁ!)
百合華は、昨夜の弟とのキスの後に、弟をおかずにしてイケナイコトをいっぱいしてしまった。
もう恥ずかしくて弟の顔を見られない。
(あうっ……興奮し過ぎて、いつものようにユウ君をおかずにしていっぱいしちゃった! いつもは、ユウ君とのエッチを想像してやってたのに……。もうだめっ! ユウ君を縛るドS先生の調教プレイを想像しちゃって、もうアブノーマルなのしかおかずにできなくなりそうだよぉ!)
微妙に想像内容が違っていた。
「ちょっと、悠。体調でも悪いの? またゲームばかりやってたんでしょ?」
ぼんやりしている悠に、絵美子が声をかけた。ゲームで遊んでばかりで、勉強をやっているのか心配なのだ。
悠は面倒くさそうに答える。
「勉強もやってるから大丈夫だよ」
「本当なの?」
百合華が少し助け船を出す。
「あっ、ユウ君は大丈夫ですよ。分からないことがあったら私が教えますから」
「そうなの? ありがとう。百合華が悠の姉になってくれて、本当に良かったわ。これからもお願いね」
「はい、任せてください」
絵美子は完全に百合華を信頼しているようだ。
だが、あなたの息子さんにエッチに迫ってしまったり、アブノーマルな想像をしておかずにしてしまったのだと思うと、ちょっと申し訳ないやら背徳感でいっぱいやらで、百合華はゾクゾクと身震いしてしまう。
(ああっ……ただでさえユウ君が好き過ぎてドキドキしてるのに、絵美子さんに隠れて息子にエッチなことをしちゃってるかと思うと、余計に興奮してカラダがウズウズしちゃうよぉ~)
百合華は込み上がる想いを抑え、顔は平静を装う。
(でもでも、ユウ君への想いは真剣なんです。絵美子さん……いえ、お母さん、許して下さい……。ちょっと……いやだいぶ、アウトな感じもするけど、何とか我慢したからセーフだよねっ!)
※限りなくアウトっぽいけど、ぎりぎりセーフということで。
◆ ◇ ◆
悠は支度をして学校に行く為に玄関へと向かう。
「行ってきます」
トトトトト――
「あっ、ユウ君、忘れ物だよ」
百合華が追いかけてきた。
ドアを開けようとしていた悠が立ち止まる。
「えっ、忘れ物なんかあったかな?」
悠のところまで来た百合華は、一瞬チラッと後方を確認すると顔を近づけ――
「ちゅっ!」
頬にキスをした。
「えっ……っ…………」
突然のキスに狼狽えて真っ赤になる悠の耳に、百合華はそっとささやいた。
「行ってらっしゃいのキスだよっ(ぼそっ)」
百合華も真っ赤になっているのだが、そのまま何も無かったように話を続ける。
「間に合って良かった。忘れ物しちゃダメだよ。いってらっしゃい」
「うっ、うううっ……」
今更ながら悠は気付いた。この、地上最強の姉の恐ろしさを。
一回だけ『ほっぺにチュウ』を許してしまったら、これから家の中で親に隠れてキスしまくるつもりなのだと。
もう、至る所で背徳感いっぱいの、『おはようのキス』や『いってらっしゃいのキス』や『おかえりのキス』や『おやすみのキス』を、ちゅっちゅちゅっちゅしまくるつもりなのだと。
(し、しまったぁぁぁぁぁ! 何故、俺は頬にキスを許してしまったんだ! ただでさえエロくて我慢できないのに、毎日キスなんかされたら我慢の限界を超えてしまう!)
頬に残る柔らかな感触だけで、かぁぁーっと熱くなるのが分かる。
これから毎日行われるであろう義姉のオシオキのようなご褒美を想像すると、悠のカラダの奥の方から幸せなのか恐怖なのか何なのかよく分からないものが溢れてきた。
ますますパワーアップする百合華のスキンシップに、果たして陥落寸前の悠の防御は耐えられるのか。
ぐいぐい迫ってくるエロ姉の攻撃に、悠は気持ち良過ぎて気が遠くなるような感覚になった。




