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鬼蜘蛛の子供

作者: 瀬川なつこ
掲載日:2021/10/28

油土塀の向こうでひそひそ内緒話。さては、呪い相手を殺す相談か。

合わせ鏡は不吉。十三番目の鏡に謎の阿弥陀如来。

櫻の下で、線香の香り。恋人を海に取られて、泡と化して、

優しい姉さんが、櫻と共に、舞い踊り、静かに鬼になってゆく。


先祖の霊、毎夜毎夜、娘の机の上に現れては。

次の日、大人の字で出来上がっている宿題に、困りつつ。

坂道を下るときは、息を止めて。

坂道の途中の家、あそこは人の死んだばかりの家だから。

嫉妬深い神様だ、とあまり人の訪れない神社に、童が遊ぶ。秋。


此処の、石畳の細い道、気をつけろ、鎌鼬が居る。

切られたか。胴体の外れた猫の首が転がる細道。

小指ほどのお地蔵様が、何度も功徳を講じる。

改心した山の山賊、小指ほどのお地蔵様に、山ほどの社を建立する。

校庭で遊んだ昔のあの子たち、彼らは、色々昔の遊びに詳しいが、息をしていない人々だ。


長閑な田舎に、遊園地を作ろうと、工事を始めて、

即身仏と祠が出てきて、肝をつぶす人々。

かごめかごめ、通りゃんせ。子供の遊びには、呪いが混ざっている。

童は、純粋、神様だというが、あれは、一種の邪悪な生き物たち。


罪と罰。僕は、君にどうしても謝らなくてはならない。

銀河鉄道には乗れない子供達。

純粋さを失った子供たちは、やがて大人になってゆく。

手足をもがれた蝶のように。

忘れてしまう、懐かしい想い出も、昔のたましひも。

それは、まるで違う生き物。子供は神の子なのだ。


冷蔵庫に、妹の乳歯が落ちていて、道路で蛇の抜け殻が落ちている。

妙な朝には、曲がりくねった蛇口から、血みどろの水で顔をすすぐ二度寝を見る。

白い月が東の方にのぼり、生垣の中に隠れた二つ目の太陽を見つける。

魔法瓶の中に、隠れている、小さな小さなお地蔵様。



寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、古文の得意な女子高生の恋文が、どうしても読めない。

水晶玉を、敷き詰めた庭で、踊るの私。

蛇行する曲がり角のある坂道を登ると、懐かしいあの人と、入道雲に出会える。

懐かしい匂いが漂う、仏間で、西日で黄金色に輝く塵を見つめながら、昏々と眠る病。



古い通り道を、着物姿で歩く、真っ赤な紐を首から風に靡かせて。

そうさ、僕らは赤に呪われた世代。

金襴緞子の着物を着た狂うた娘さん。裸足で宿場町を歩いていく。その美しさは病。

神社の鳥居に、着物姿の狐面の子がさきほどから、此方を隠れ見ている。

さては狐狸か魔性の類か、人間に遊んで欲しいのか。



夕べの、睦み事、明ければ、野山に、裸姿で。

野辺送り、内緒だよ、掌に隠していた蜉蝣は、死んでしまった。村の外れに、火の玉明神。

綺麗などぶ川を泳ぐ夢。土気色の貝砂利水魚が、息絶えそうな私を岸辺へと運ぶ。

砂時計を逆さにして、時が止まる気配をじっと待っている松虫。





紫陽花の、花の下に、お面が堕ちている。其の鬼面の隅が、血で汚れている。

童の跫軽やかに。野山で花が咲く季節成れども。

年寄の冷や水。壁に掛けておいた蓑に、鬼蜘蛛の子供が孵化してわらわらと。

魂消た話。京都の嵐山の化野に、人魂がひょいひょい、娘の涙を知っているかのように。


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