第9話 ヤンキー、決勝トーナメント出場
『それでは、皆様お待たせいたしました! これより、決勝トーナメントを始めます!』
『オオオォォォォォ』
『第1試合はぁぁぁ! 剣術士ダイン選手と斧術士バッガ選手の対決です! 近距離が間合いの選手同士、注目の一戦です! それでは、試合開始!』
———試合が開始されたころ
「ふぁぁぁ。ねみぃ」
リューはまだ買い食いしながら順番が来るのを待っていた。
「待ってんのがだりぃなぁ」
闘技場の端の方でヤンキー座りして串焼きやらパンやらをモグモグ食べている。
『ワァァァァァアアアアァァァァァ』
「すげぇ声だな! そんなに面白れぇのか? まぁいいや。もう少ししたら待機室に行ってっかなぁ」
◇
『それでは、第4試合はぁぁぁ! 鉄壁の守りの重戦士ザーゴ選手とぉぉ、1人で100人以上を相手に勝ったおとこぉぉぉ、喧嘩人リュー選手の試合です! それではぁぁ、試合ぃぃ開始ぃぃ!!』
ザーゴは鎧に身を包み盾を構えて槍を構え、一向に動こうとしないでこちらを伺っている。
守りを固めて隙を見て槍で攻撃するスタイルなんであろう。
「フハハハハ! 貴様のような素手で闘うやからなどに負けはしないわ!」
「おまえさぁ、そんなに重いもの持ってたら動けねぇだろ?」
「動く必要などないのだ!」
「依頼受ける時もそんなことやってんのか?」
「依頼とこの大会は関係ない! 勝つためにやっているんだからな!」
「ふーん。そっかぁ」
そういいながらスタスタ目の前まで歩いていくリュー。
「フンッ」
ザーゴが槍を突きさしてくる。
後ろに下がって避ける。
リューは横に回り込みザーゴの側面に陣取る。
右手を引き絞る。
「行くぞぉ? 気合い入れろよぉ!?」
そう言うと、右腕をオレンジのオーラが包み込んだ。
ボッ ————ッガアァァァァァァンッッ
物凄いスピードで吹き飛ばされるザーゴ。
ヒューーーーーーー ズガァァァン
観客席の下の壁に埋まってしまった。
救護班が駆け寄ると気絶しているようだ。
『なんと、一瞬でザーゴ選手が吹き飛ばされてしまったぁぁぁ!! 一体どうなっているのでしょぉぉかぁぁ!? 私には理解できません!! あんなに重装備の相手をあんなにぶっ飛ばすとは凄まじいです!』
「ありゃ、ちょっとぶっ飛ばしすぎたか。会場壊しちまった。まぁ、なんも言われねぇならいいか」
『第4試合はリュー選手の勝利です!』
『ワァァァァァ』
『リューくんかっこいいわぁぁ!』
『こっちむいてぇ!』
『がんばってぇぇ!』
リューはまたしても手を振りながら降りていく。
何やらファンクラブでもできそう人気ぶりである。
やはり、強い男はモテるものなんだろうか。
それとも顔が良いからか……両方あればモテるか……。
待機場所に戻ると各選手が思い思いの待機をしていた。
武器を磨いている者、瞑想をしている者、くつろいでいる者。
好きなように過ごしているようだ。
その中にダインを発見したが、周りの者もいる為、手を挙げて挨拶だけする。
ダインも手を挙げ、お互い試合前なのであまりかかわらないように気を付けている。
『それでは、準決勝第1試合を始めますので、選手の方は準備をお願い致します』
ダインともう一人が一緒に壇上へ移動を始める。
ダインが拳を向けてきたので、リューもそれに応じ、拳を合わせる。
二人でニヤッと笑いすれ違う。
決勝で会おうと暗に言っているのであろう。
リューも負けるつもりは無い。
待機場所では、魔道板に試合が映し出される。
しばらく見ていると槍使いの懐に入り切り飛ばして場外へ追いやり、ダインが勝っていた。
次はリューの番である。
壇上へ登っていく。
『次の試合はぁぁぁ、巧みなハンマー捌きで勝ち進んできたマンマ選手!そして、謎の力を発揮するリュー選手です! 勝ったら決勝です! それでは、始めましょう! …………試合、開始ぃぃぃぃ!!』
「よいしょ!」
ズガァン
咄嗟に避けるリュー。
いきなり仕掛けてきたマンマ。
「僕の手にかかれば相手はペシャンコなんだな。降参した方がいいんだな」
「はぁ。ノウガキはいいからかかってこいやァァァァ!!」
リューもオレンジのオーラを出し構える。
「バカにしてるんだな! 行くんだな! ほいっ!」
リューの上からハンマーが迫る。
ズンッ
押し潰された……に見えたが、片手で抑えている。
「うぉぉぉぉらあぁぁぁぁ」
ハンマーを持ってそのままグルグル回り出した。
「な、なんなんだな! 離すんだな!」
「ふん!」
ピューーーーーー………………ドスーン
場外に飛ばされたマンマ。
ハンマーの下敷きになり気絶している。
『なぁぁーーーんとぉぉ! この試合を制したのは、リュー選手だぁぁぁぁ!!』
『ワァァァァァァァァ』
『では、続いての決勝戦は30分のきゅうけ』
「おーーーい!」
『はい! リュー選手! 何でしょう?』
「俺疲れてないから、決勝戦やんねぇか!?」
『なんという申し出でしょう! 皆さんどうですか!?』
『ワァァァァァァ』
『皆さんも早く見れて嬉しいようです! それでは、始めましょう!! ダイン選手、壇上へお願いします!』
ダインが上がってくる。
「よう。勝ち上がって来たな。ワイとリューどっちが上か決めようや!」
「おう! 俺が勝って上だとわからせてやるぜ!」
『それでは、決勝戦…………始め!!』
ドッッッッッッッ
両者の拳と剣が中央でぶつかり合い、衝撃波が起こる。
拳で剣とぶつかり合ってるのがおかしいのだが、リューは何とも思わず、気合いでぶつかり合えていると思っている。
ドッッドッドッッッドッッ
リューのストレートを受け流し、ダインが剣を返して切りかかるが裏拳で弾かれる。
目に見えない程の攻防をしている2人。
観客は次第に静かになり、2人の行く末を見守っている。
先に動いたのはダインであった。
「我流……三散華」
ドッドッザシュッ
最後の一撃が肩を切り裂いた。
「ハッハァァ! 効いたぜ! 俺も行くぜ!…………【瞬】」
カッ ドドドドドッ
バトルロイヤルの最後に見せた技を再び見せる。一瞬オレンジ色に発光し、目にも留まらぬ速さで攻撃する。
「かっ……はっ」
動きが止まるダイン。
「これで終わりだ。……【撃】」
右腕がオレンジのオーラに包まれる。
引き絞った拳を打ち出す。
ッボッゴォォォォンッ
ザーーーーーーーー
ダインが踏ん張って我慢しているが端に追いやられる。
ピタッと止まった。
かにみえたが、グラリと後ろに倒れる。
ドサッ
場外へ落ちるダイン。
『──────────決まったぁぁぁぁぁ!!』
『ワァァァァァ』
『ブロンズカップ! 優勝者は、リュー選手!!』
『リューくん凄いわぁぁ!』
『カッコイイー!』
『強い人好きー!』
リューはダインの元へ歩いていく。
ハッと目が覚めたダイン。
「はぁぁ。負けちまったか。つえぇやっちゃなリューは!」
「おう! 俺が兄貴分な!」
「ハッハッハッ! そうだな! 兄貴宜しくな!」
「おうよ! 弟よ! 任せろ!」
手をガッチリ組み起き上がらせる。
会場からは盛大な拍手が送られている。
2人で手を挙げて歓声に答える。
◇
それを見ていたとある女B級冒険者は、憤っていた。
「魔法職が出てないから勝てただけよ! あんなやつへでも無いわ! 男同士の友情みたいなの見せつけちゃって!!」
ダンッダンッ
地面を蹴りながらイライラしている。
周りの客からもヤベェ奴見たいな目で見られている。
◇
とあるS級冒険者は
「アイツの能力は凄そうだな! なんか能力をしっかり使いこなしてるっぽいし! 身体向上系の能力っぽいよなぁ」
「そうですね。強力そうですね!」
「あぁ。アイツは今後に注目だな」
VIP席で見ていた冒険者は3人で見ていたようだ。
こうして、上級者からも注目を集めた試合となった、リューとダインの試合は伝説のブロンズカップ決勝として語り継がれる事になる。
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