第8話 ヤンキー、闘技大会に出場する
この日、ブラウズの街は賑わっていた。
なぜならば、闘技大会が開催されるからだ。
人通りの多くなった屋台街を歩く白い特攻服の男。
特攻服と言えば、そう、リューである。
大きな袋を抱えて通りをギルドへ向かって歩いていた。
ギルドに着くと真っ先にエリーの所に向かう。
「おう! エリーよ、これ預かってくれねぇか!?」
「リューさん! お久しぶりです! どこ行ってたんですか!?」
「まぁ、チラッと旅行に行ってたのよ」
「ふーん。で? その大荷物は何です?」
「ちょっと預かってて欲しいんだよ。闘技大会終わったらまた取りに来るからさ!」
「わかりました。闘技大会頑張ってくださいね! 今、闘技場で参加者受付してますよ!」
「おう! ありがとな!」
礼を言うとギルドを出て闘技場へ向かう。
◇
闘技場へ行くと、魔法使いから剣士、槍使い、斧使いと色んな武器や、防具を着た冒険者が沢山並んでいた。
人の案内をしていた人に聞く。
「すまねぇが、ぶらんず?カップに出場したいんだが、何処にならびゃあいいかね?」
「はい! ブロンズカップはあちらの列の最後尾にお並び下さい!」
「おう! どうも!」
案内された列に並ぶ。
順番が来るのを待っていると、後ろの冒険者に話し掛けられたリュー。
「あんただろう? 冒険者登録する時にC級のデップってやつの鼻を陥没させたとかいうの?」
「んあ? あーデップってやつは知らねぇけど、登録の時に絡まれて鼻にチョーパン(頭突き)くらわせたヤツはいたなぁ」
「チョーパン?」
「あぁ。頭突きだ、頭突き!」
「マジか。本当だったんだ、素手でやったっていうの……」
「そんなん、気合いがありゃあできるぜ?」
「いや、気合いでどうにかできるわけねぇ。あんたに当たらないことを祈るよ」
「そうか? まぁ、頑張ろうや!」
そんな会話をしていたリュー達は受付の順番が回ってきた。
「次の方ー」
「おう!」
「階級は?」
「いー級!」
「はい。参考までに戦闘スタイルは?」
「んー。喧嘩スタイル!」
「ケンカスタイル! 新しいですね! わかりました! では、次の人ー」
こうして、登録が終わったリュー。
ブラブラしていると、みんなの登録が終わったようだ。
『選手登録した皆さん! 本日中にブロンズカップを行います! しかし、D、E、Fの冒険者が多く登録されたため、最初は8ブロックに分けてのバトルロイヤルを行います! 魔道板にそれぞれ各ブロックの参加者を表示しますので、各自、確認をお願いします!』
「おぉ。おれも確認に行くかなぁ」
魔道板に 確認に行くと最後のHブロックであった。
「なんだ。最後かい! 外に飯食いに行くか」
同じように外に出ていく者もいる。
食事を済ませて試合に備えるのであろう。
「おっちゃん! 串焼きちょうだい!」
「おう! リューじゃねぇか! お前闘技大会出るんじゃねぇのか?」
「出るけどさ、最初のばとるろ?なんとかが、グループ最後だったんだよ! だから、飯を先に食うんだ!」
「そういうことか! 予選が最後の組だったんだな! まぁ、程々に食って勝てよ!」
「あたりめぇよ! おれは負けねぇ! 賭け事やるなら俺に賭けろよ!」
リューはここに来るまでに賭け事してる人を見掛け、そういうこともするということがわかり、いつも世話になっているおじさんにアドバイスしたのであったを
「ハッハッハッ! 自信あんだな!? そこまで言われたら、おめぇに賭けるぞ!」
「はっ! 任しとけ!」
そう言いながら、別の屋台にも行く。
挟みパンの売っているおばちゃんの屋台だった。
「おばちゃん! これ2つ!」
「あいよ! 毎度! リューちゃん闘技大会出るんじゃないのかい?」
「出るよ! 予選が最後の組だったんだよ!」
「そういう事かい! 頑張りな!」
「絶対勝つから楽しみにしといてくれ!」
「それは、楽しみね!」
食べ歩きしながら散策するリュー。
そろそろかなぁと思い闘技場に行ってみると。
『それでは、第7ブロックの試合を開始します! 第8ブロックの出場者は待機場所に移動してください!』
「ピッタリじゃねぇか。よし。行くかぁ」
待機場所に行くリュー。
周りの冒険者達はみな一様に緊張した面持ちでいる。
『ワァァァァ』
『決まりました! 第7ブロックを制したのは、ザーゴ選手です! それでは、第8ブロックの選手は壇上へ移動してください!』
ぞろぞろと移動を始める。
ピンッと空気が張り詰めていた。
壇上に上がるリューだったが、いつの間にか壇上の真ん中に立っていた。
周りを見るとみなリューに向かって構えている。
『おーっと、これは! リュー選手を皆が狙っているようです!』
「ふーん。まずは、俺から排除しようってか……」
呟くように話すと、周りの冒険者が叫ぶ。
「あんたはデップさんを無傷で下せる男だという話を聞いてな! 一番の脅威だと思ったから全員で協力することにしたんだよ!」
丁寧に理由を教えてくれる冒険者。
「ハッハッハッ! 全員で協力すると来たか。ビビッてるシャバ僧共にはお似合いだな」
「しゃばぞう? よくわからねぇが、この人数相手に勝てると思ってるのか!?」
周りを見るに総勢100人はいるだろう。
普通であればこの人数に勝てるなど誰も思わないであろう。
しかし、ここに来る前に既にそれ以上の数を相手にしていたリューからすれば、負ける理由にはならない。
『それでは、準備はいいですか? 第8ブロックの試合を開始します…………始め!』
先程話していた冒険者が号令をかける。
「みんなコイツを倒せば、俺達にチャンスがある! 行くぞ!」
「「「「「「おおぉぉぉぉ!!」」」」」」
リューに殺到する冒険者達。
しかし、リューは至って冷静であった。
「ハッハッハッ! かかって来い! 気合い入れろよぉ!?」
金髪をかきあげ、身体にオレンジがかったオーラを纏わせる。
リュー全開で行くようだ。
敵が押し寄せてくるこの状況でリューはどうするのか。
大きく一歩踏み出し、右手でラリアットを放った。
「うらぁぁぁ!!」
ッッッズッッドォォォン
場外へ人が飛ばされていく。
すると、今度は返す手で裏拳を放つ。
ッッッバッガァァァン
また場外へ人が飛ばされていく。
このペースだとすぐにリューだけになりそうであった。
リューの周りの人は空を舞っている。
しばらくそんな時間が続き。
「どりゃぁぁぁぁ」
大振りの蹴りが放たれ、残りの大半が吹き飛ばされる。
残るは5人であった。
一人が呟く。
「なんでこんなにつえぇんだよ! 同じ階級なハズだろ!? こんなん勝てっこねぇよ!」
するとリューは棒立ちになり、構えを解く。
「はぁ。かかってこねぇのか? 何も構えないで待っててやるから、同時に来いよ?」
手をクイクイしてかかってこいアピールをする。
「くそぉ! なめやがって! 同時に行くぞ!」
「3、2、1……かかれ!」
同時に飛び掛かってくる。
各々の武器が迫る。
そのとき
カッ ドドドドドッ
リューからオレンジの光が強く発光したように見えた。
その瞬間で、全てが終わっていた。
いつの間にか5人は場外で気絶していた。
一瞬静寂が包み込む。
『————ワァァァァァァ』
『これは凄まじい試合になりました! なんと、終始リュー選手一人の独壇場! 決勝トーナメントに進んだのは、リュー選手です!』
リューは手を振りながら、壇上を降りていく。
『30分の休憩の後に決勝トーナメントを開始いたします! 皆様、しばらくの間お待ちください!』
そのアナウンスが流れたので、リューはまた何か食べようと屋台を散策することにした。
リューの力の片鱗が見えたバトルロイヤル。
果たして、どこまで強くなったのか。
決勝トーナメントが楽しみである。
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