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第6話 ヤンキー、E級になる

ブラウズの街に戻ったリューは、ギルドへ報告に来ていた。


「おっす、ねぇちゃん。ゴブリンとオークを倒してきたんだ。換金頼むわ。」


ポッケからカウンターに魔石を出しながら話すリューに膨れるエリー。


「ねぇちゃんではありません! エリ―です! 今、依頼の処理します!」


「お、おう。頼むわ」


少し他の冒険者を眺めていると、誰も目を合わせようとしない。

不思議に思っているリュー。


覚えているだろうか、登録の際に絡んできた男を。

鼻をつぶして撃退したが、その撃退した冒険者はなんとC級だったのだ。


C級の中でも成り立てだった為増長していたのだろう。

しかし、それでも中堅に当たる為数自体はC級の者は少ない。

だいたいがD級止まりなのだ。


「あの! 1個だけD級魔石入ってたんですけど!?」


「あぁ。あれでえ級だったんだな」


「一体、何を倒したんですか!?」


「ん? ゴブリンの群れと、オークの群れを倒した」


「えっ!? これ1体ずつじゃなく、群れを倒したんですか!?」


「あぁ。すぐに終わってよかったぜぇ」


「そういう問題じゃありません! 普通はパーティであたるものです!」


「そんなこと言ったって、おれチーム組むやついねぇし一人でできるからいいじゃねぇか」


「無事だからいいものの! 危険ですよ!」


「わぁーったってぇ。気を付けるからよぉ」


「本当ですね!?」


「おう。だから、早く換金してくれよ。腹減ったぜ」


腹をさすりながらカウンターにうな垂れるリュー。

困った人を見るように哀れな目を向けるエリー。


(なんで、この人のお守りを私がしなきゃいけないの!? もぉぉぉ~)


思ったことが顔に出てしまうエリーは、むすっとした顔になってしまっていた。


「あのー、エリーさん? なんか顔が恐いんですが……」


「今、真面目に処理してますから!! 黙ってて下さい!!」


「は、はぃ。さーせん」


大人しくカウンターに寄りかかって周りを見て待っていると。


(黙ってればカッコいいんだけどなぁ……はっ! 私はなにを!? 不覚にもカッコいいと思ってしまっていた!! ダメだ……毒されている!!)


ブンブン頭を振るエリーを見てリューが首を傾げている。

しかし、先程怒られた為、黙ってみていることにしたようだ。


「リューさん」


「はい!」


「登録の際に提出した魔石の分で昇級の条件は満たしていましたが、実力が未知数だった為保留になっていたようです。しかし、今日の討伐で実力が判明した為、E級へ昇級となります」


「おう。えす級に近づいた訳だなぁ?」


「まぁだぁまだ! ですけどね!」


膨れながら反論するエリーだったが、リューは遠くを見る目で思い出に浸っていた。


「少しでも近付きゃいいのよ。そうやってチーム内でのし上がったもんよ……」


「えっ? どこかのクランにでも所属していたんですか?」


「くらん?ってえのは知らねえが、日本ってとこに自分のチームがあったんだよ」


「あーへぇー。そのニホン?は知らないですけど。自分のクランがあったなら強いのも納得できます。でも、みんなその服着てたりするんですか?」


「そーだな。みんな思い入れのある特服とっぷくきて暴れまわったもんよ」


昔のことを思い出し、シミジミし始めるリューにエリーが素朴な疑問を投げかける。


「どうしてブラウズにきたんです?」


「それがな、知らない間にその辺の森に倒れてたんだよ」


「もしかして、転移者ですか!?」


「ん? なんだそれ?」


「違う世界からきた人のことです! 古い文献にそういう人がいたと記されているんです!」


身を乗り出して聞いて来たエリーだったが、異世界転移ものなど知らないリューには異世界と言っても全く理解ができないだろう。


「んで? それだったら、どうしたんだよ?」


「転移者は、みんな強力な固有能力を持っているそうなんですよ! 心当たりないですか!?」


「ん~、ない!」


「なんかあるでしょ!?」


「ない!!」


エリーには可哀そうだが気合いで何でもできると思っているリューに、特殊な能力の心当たりなどないであろう。


「むー。特別に鑑定してあげます! ホントは、お金取るんですけどね!」


「おっ! いいのか!? 楽しみだなぁ」


「私は固有能力ではないですが、鑑定できる能力があるので」


「頼むわ」


「では、手貸してください」


「おう」


カウンター越しに手を繋ぐ二人。


(意外とゴツゴツした手してる……男らしいわね……違う! 鑑定!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

【名前】リュー

【年齢】17

【固有能力】気合い

【汎用能力】無し

【称号】異世界人、F級冒険者

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「えっ!? 17歳なんですか!?」


「あぁ。そうだけど?」


(なんでこんなに大人っぽいの?……私は22歳になるのにこんななのに……)


「違った! 固有能力ですが、【気合い】だそうです! 心当たりあります?」


「ない!!」


まぁ、そうなるだろう。日本でも気合いで何でもやれて来てしまっていた為、異世界の固有能力で身体能力等が向上しているのだが、それもいつもの事。そう感じてしまっているようだ。


「ない? まぁいいです。今日からE級です! あと、あの森の周辺でD級の魔物が出るとなると上に報告しなければなりません、何かD級魔物の心当たりないですか? 例えば、オークの中の一体が大きかったとか……」


「いやぁ。大きい奴はいなかった。少し小さい奴に杖で攻撃された気はするな……」


「それ! それですよ! 杖持ってるのは、オークマジシャンで、変位種でD級なんですよ!」


「へぇ~。それは知らんかったぜ」


「覚えておいてください! 魔法を使ってくるんですから!」


「まほう? ほうきで空飛んだりするやつ?」


「ほうきで飛ぶ? それはよくわからないですけど、炎を飛ばしたり、風を起こしたりするやつです!」


「そんなことできるのか!? すげぇなぁ」


目をキラキラさせて前のめりにエリーに近付く。


(うっ! 子供っぽいところもかわいい……そうじゃない!)


「リューさんは汎用能力ないから使えないですよ?」


つい意地悪な発言をしてしまったエリー。

リューはそれを聞き悔しそうな顔で「ぐぬぬぬ」といって悔しがっている。


「けっ! 魔法なんて殴り飛ばしてやる!」


悔しくて言っているだけだと周りは思っているが、リューなら実際にできてしまいそうな気がするが。

悔しがっていると、後ろから声を掛けられる。


「おう! ルーキーがなに一丁前に悔しそうにしてんだよ!」


不機嫌そうに振り向くとダインが立って笑っていた。


「ダインか。俺は、火出したりできないんだとよ!」


「あぁ! エリー、鑑定したの?」


エリーに話を振るダイン。


「鑑定しましたよ! リューさん異世界人だったんですよ!? 知ってました!?」


「あー! だから、二ホン?だっけ?とかガイコク?とかわけわけんねぇこと言ってたのか!」


ダインとエリーから指をさされるリュー。


「イセカイジンじゃねぇ! 俺は、日本人だ!」


ダインとエリー諦めるのだ。この男は異世界というのは想像力のキャパをオーバーしているのだ。


「わぁったって! それでいいけど、ここが、そのニホンのある場所じゃねぇってこと! わかったか!?」


「うーん。わかった。元の所には戻れねぇって事だな? そんなら、それでいいわ!」


晴れやかな笑顔で言うリューを見てエリーは胸が苦しくなった。


(自分のいた場所に戻れない……なのにこんなに前向きに考えてる。リュー、凄いわ……)


気づいていないがエリーはリューの事ばかり考えてしまっている。


「リューよ! ワイが力になっから、一緒にS級冒険者になろうぜ!」


「おうよ! 兄弟!」


「はぁ? お前とは兄弟じゃねぇって!」


「違ぇよ! 兄弟分ってことだよ! 家族の様な仲間ってことよ!」


「そういうことなら、大歓迎だ! 宜しくな、弟!」


「俺が弟かよ!」


「俺の方が絶対年上だしな! 階級も上だし、問題なし!」


「ちっ! この問題は保留! 強い方が兄じゃねぇとな!」


「はっはっはっ! あぁ。ワイ達は家族じゃ! 困ったことがあったら言えよ!?」


「そん時は頼むぜ」


腕を出すダインに腕をクロスさせるリュー。


こうして、ダインとリューは兄弟分になり、リューに家族のような存在ができたのであった。


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