第5話 ヤンキー、依頼をこなす
朝の光で目が覚めた。
「んあ゛ー」
よく寝れたようである。
この街の宿には魔道具のシャールームがある。
そこでシャワーを浴びて食堂に向かう。
「おっ! リューも今から飯か!?」
「おう! ダインもか!?」
「おっちゃんちゃーっす」
リューがおじさんに挨拶すると、朝メシを出してくれた。
「いっぱい食えよ!」
「ありがてぇ! いただきます!」
「おい! そのいただきます? は何なんだ? どこの風習だ?」
「これは、日本ってぇところの食べ物と作ってくれた人に対してありがとうございます。私がいただきますっていう意味でいう言葉なんだよ」
「そいつはいいなぁ! いただきやす!」
「いただきます! だぞ!」
「かてぇこというなよ! ちょっと自分なりの言葉にしたまでよ!」
朝ごはんはスープと挟みパンであった。
サンドイッチのように丸いパンに肉と野菜が挟まっていて、ドレッシングの様なものがかかっている。
一口食べたリューは、言葉を失った。
「うめーーー!! こんなうめぇもんが外国にあるなんて知らなかったぜ!!」
「外国? ここはロベルタ王国のブラウズという街だぞ? 知らなかったか?」
「いや、知ってっけど、結局外国だろ?」
「ガイコクってのが、何か分からん!」
「日本って知ってっか?」
「ニホン? そんなとこ知らん」
「アメリカンはよ?」
「アメリカン? それも知らん」
リューよ、バイクでアメリカンはあるが、国はアメリカンではないのだぞ。
まぁ、異世界にはどっちもないからダインが知るわけがないが。
「うーむ。まっ、なんでもいい! とにかくうめぇ!」
「だろう? ここのはうめぇんだよ!」
ガツガツ食べながら2人は意気投合している。
「そういやぁ、リューは冒険者なんだろう? 級はいくつなんだ?」
「級? ……あー。えす級とかいうやつ?」
「なに!? リューはS級なのか!?」
「いやいや、ちげぇーよ。昨日登録したばっかだよ!」
「なんだよ! 紛らわしい! なんでS級なんて言ったんだよ!」
「だってよぉ、全部の級聞いたけど忘れちまってよぉ。えす級しか覚えてねぇのよ!」
「自分の級くらい覚えておけよ! お前はF級だ!」
「おれはてっぺん取る予定だからいいんだよ! そういう、ダインは何級なんだよ!?」
「ワイは、D級だ。リューよりは2つ上でS級に近いな!」
「ぐぬぬぬぬ。何も言えねぇ……」
「はっはっはっ! まぁ頑張れ! ルーキー!」
「クソォ。まずは、依頼をこなさねぇとなぁ」
悔しそうに歯を食いしばっているリューだか顔は嬉しそうだ。
この訳の分からない世界でもこんなノリで話ができる相手は貴重であった。
「じゃ、頑張れ!」
そういうと颯爽と宿を出ていく。
「俺も、依頼をこなすかな」
リューもギルドへ出発する。
ギルドへ着くとカウンターへ向かう。
もちろん、エリーの元に行く。
「おう! 昨日の依頼のゴブリンとオークだったか? 魔石集めてこようと思うんだが、どの辺にいるんだ?」
「はい! おはようございます! 最近目撃情報が多いのは東門の先の森の方ですね」
「わかった! 行ってみるわ! ありがとよ!」
ギルドを出ていくリュー。
その背中を見つめるエリー。
「やっぱり、私が専属みたいな扱いになるんだろうなぁ……グスン」
◇
ゴブリンとオークがいるという森へやってきた。
「この辺にいんのか?」
キョロキョロしながら探す。
「ん?」
洞窟の入り口に見張りのように立っているゴブリンを見つけた。
辺りを警戒しているようだ。
「うっし! いっちょやるぜ!」
茂みから飛び出し、ゴブリンの元へ駆ける。
ダンッと跳躍し、右ストレートを繰り出す。
ゴスッ
ゴブリンの顔面に突き刺さり、魔石に変わる。
「気合いを入れるまでもねぇ」
見張りらしきゴブリンを倒したので、中に入ってみることにした。
「くれぇなぁ。目に気合い入れて進むぞ」
すると、目から赤いオーラが立ち昇る。
「なんか見えてきた! よしっ! これなら行けるぜ!」
ズンズン奥へ進むリュー。
この男、気合いでなんでも解決できると思っている為、見えるようになったのも違和感がないようだ。
すると、少し開けた所に出た。
『プギィ?』
ゴブリンが5体寝床を作っていた。
この洞窟を拠点として使おうとしていた所だったらしい。
気付かれたことがわかるとリューは即座にゴブリンに駆けだす。
「うりゃーー!!」
飛び蹴りを放つ。
ドギャ
一瞬で魔石になった。
『プギャー!!』
仲間が倒されたことを察したゴブリンは攻勢に出る。
それぞれが武器を持ち出し攻撃しようとしてくる。
しかし、リューは冷静にサッサッをスウェーとダッキングで回避する。
そこにカウンターを合わせる。
「そりゃ! うらぁ!!」
1体にストレートを放ち、もう1体にはハイキックを放つ。
2体とも魔石に変わった。
あっという間に3体がやられた為、残りの2体はパニックになり逃げだそうとする。
しかし、リューは出口に陣取っていた。
「諦めろ魔物共!」
そう言って2体に向かって走る。
ゴブリンは右と左両方から迫ってきていた。
段々と近付く両者。
グンッと急にスピードを上げて両手を広げる。
ボゴッ ゴガッ
ラリアットをくらわせて地面に頭を強打したゴブリンは魔石に変わった。
「ふぅ。楽勝!」
魔石を集めて、洞窟を出る。
再び、森の中を彷徨う。
「んー。オークっつうのは分かんねぇからなぁ」
ブツブツ言いながら歩いていると。
オークらしき魔物が10体でなにやら建物を作ろうとしているようだ。
普通の冒険者であれば、4人パーティで倒す規模なんだが、リューは単独で、しかも真正面から行くようである。
「ッシャー! 気合い入れてくぜ!!」
両手で髪をかきあげ気合いを入れる。
身体から赤いオーラが吹き出す。
『ブヒッ?』
『ブブヒィー!』
オークが敵襲を知らせたようだ。
「かかってこいや! ブタども!!」
一斉に5体程のオークが迫る。
リュー掛けて、跳んだ。
「うりゃぁぁぁぁ!」
ドロップキックで真ん中のオークを吹き飛ばす。
着地し起き上がらずに周りのオークを足払いする。
転んだオークの頭目掛けてサッカーボールキックである。
お分かりだろうか。思いっきり足を振りかぶり、思いっきり爪先で蹴るあれである。
ゴギャ
たちまち魔石の変わっていくオーク達。
既に3体は魔石に変わった。
倒れているオークに構っている隙にリューに後ろから棍棒が振り下ろされる。
「うらぁぁ!!」
グシャッ
後ろに向かっての容赦ない裏拳で顔が陥没し、魔石に変わるオーク。
そのままの勢いでその後ろのオークも回し蹴りで魔石に変える。
残りは半分である。
距離を取っているオーク達。
リューは静かに両手を広げたまま、停止した。
「かかって来いよ?」
一瞬の静寂の後、バカにされたのを感じたのだろう。
『ブヒブヒィーー!』
武器を一斉にリューに振り下ろす。
バキッ
全ての武器を両手を上げて防いでいるリュー。
「うおぉぉぉぉらぁぁぁ」
両手で防いでいた武器を力ずくで弾き飛ばした。
リューのオーラが少しオレンジがかっている。
1体は衝撃で倒れている。
その隙に駆けていき、喧嘩キックをお見舞いする。
バギッ
首が背中に折れ魔石と変わる。
近くにいたオークの腰にタックルをかまし、持ち上げてそのまま地面に叩きつける。
ズガァン
起き上がるとオークが杖を振り下ろす所であった。
バシッと杖を片腕で受け止めると。
「オラァァ!」
オークもろともぶん投げる。
「ラァァ!!」
ハイキックでもう一体のオークを蹴り飛ばす。
周りを見るとリュー以外は魔石となっていた。
「終わったか。あっけねぇなぁ」
魔石を集めると1個だけ大きいのがある。
「ん? 1個だけでけぇな。まあいいか」
ポッケに突っ込むとそのまま歩き出した。
ブラウズの街に戻る事にしたリュー。
この日の依頼はここまでであった。
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