第40話 ヤンキー、再びタモンと戦う
「シフォン、この前はありがとな。俺を正気に戻してくれて」
「いえ! とんでもありません! あれはご主人様のせいではないですから!」
「ありがとな」
そういうと屋敷を出るリュー。
ここの所、リューは自分が壊してしまった街の復旧を手伝っていた。
白竜の面々がやると言ったのだが、自分のしでかしたことだからと自ら手伝っていた。
「今日も精がでるねぇ!」
「うっす!」
街の人から声を掛けられることもあり、楽しくも思っていた。
そんな日の昼。
「ねぇ、この前の僕からのプレゼントはどうだった?」
「あれは、お前の仕業か?」
「僕の恨みのこもったプレゼントだよ?」
「おぉ。感謝するぜ。あれで俺は更に強くなれた」
「それはよかっ─────」
ドゴォォォォン
魔人を上空に打ち上げるリュー。
追って飛び上がる。
「おおぉ!」
ズドォォォォン
森の方に撃ち落とす。
足元に気合いを張り、蹴って飛ぶ。
効いてはいないだろう。
手ごたえは感じていなかった。
「あっはぁ。なんか強くなった? 楽しいねぇ」
「お前を始末し損ねた事でこの前の事がおきたんだとしたら、俺は今日でお前を必ず始末する」
「ハッハッハッ! 出来るかな?」
「この前のようにはいかねぇよ?【体】」
「新技? 効くかなぁ? 【フィジカルアップ】」
両者が一回り大きくなる。
2人同時に拳を出す。
ズンッッッ
ぶつかりあった事により大気が揺れる。
「この前のようには行かねぇさ。【撃】」
ゴシャッ
「ぐぅ! その状態からでも技が出せるのか!?」
「俺は、この前までの俺じゃない」
「くっ! 【スピードアップ】」
タモンは速度を上げてリューに突っ込んでくる。
ズドォォン
片手で受け止めるリュー。
「早いが、見えてるぜぇ?」
「まだまだだぁ!」
残像ができる程の速さの拳の衝撃が迫る。
「【瞬】」
ドパパパパパパパンッ
「これでもまだ互角かなぁ!? もう1段階上げようかぁ!? 【ストロングアップ】」
振りかぶった拳が振り下ろされる。
ズドォォォォーーンッッッ
先程までリューが立っていたところにクレーターができる。
咄嗟に後ろへ飛び避けただった。
更に攻撃力がアップしたようだ。
「この戦いは負けられねぇ。 【纏】」
リューの身体に白銀のオーラが張り付く。
これでリューの防御力も攻撃力もあがる。
「オラァッ!!」
殴りつけた反動で硬直していたタモンを。
蹴り飛ばす。
バキャァァァッッ
ズザアァォァ
ガードしたようで吹き飛ばされたがタモンは立っていた。
ニヤリと笑う魔人。
ペロリと舌なめずりする。
「良いですねぇ。面白くなってきましたねぇ」
「お前……何がしたいんだ?」
「ただ強い人と戦いたいだけなんですよ。その為ならこの前のような事もしますよ。怒りって人を強くするでしょう?」
「その気持ちは俺もわかるさ。わかるがなぁ、他人を巻き込んじゃいけねぇよ? それじゃあ、当人同士の喧嘩じゃなくなる」
「僕はさぁ、別に強いヤツと戦えればどうでもいいのさぁ」
「そうか。お前とはここで決着受けた方が良さそうだな」
両者が構え直す。
両者がぶつかり合う。
ズドォォォォンッッ
二人の右の拳がぶつかり合う。
リューはその反動を利用してクルリと反転し、回し蹴りを放つ。
バキッ
右手で防がれるが。
右足を引っ込め、左足での飛び回し蹴り蹴りを放つ。
ドゴォォォン
木を何個もなぎ倒してようやく止まるタモン。
「くっそぉ。やるなぁ。次の一撃で決めてやる! 短期決戦だ!」
走り出す。
タモンの体から魔力が迸る。
「【フルパワー】!!」
「おおおおぉぉぉりゃゃゃゃぁぁぁ!!」
もう一回り大きくなったタモン。
全ての勢いを載せるために助走をつける。
それを迎撃するリュー。
身体に白銀のオーラを濃く纏わせる。
「フゥーーーッ。来いよ」
構えて待ち構えるリュー。
タモンの近づいてくるのが、スローモーションのように見える。
1歩1歩近づいてくる。
タモンが飛び上がった。
重力も上乗せる気でいるようだ。
両手を合わせて天に構えている。
逆にリューは、重心を低くして構える。
「オラァァァァァァァァァァ」
オーラが全身から吹き出す。
「くらえぇぇぇぇぇ!!」
「おおおぉぉぉ!! 【天上天下】」
タモンの打ち下ろしと。
リューの打ち上げるアッパーカットがぶつかる。
ドガァァァァァァァンッッッ
2人の周りを凄まじい衝撃が走る。
木々が衝撃で靡く。
鳥が羽ばたいていく。
リューには、追撃があった。
「【唯我独尊】 オラァァァァァ」
渾身の頭突きがタモンの顔面に突き刺さる。
ゴキャァァァァァァァ
クルクル回りながら吹き飛んでいく。
ズカァァン ズガァァン ズガァァン
ゆっくりと歩いていくリュー。
タモンは完全に気を失っているようだ。
拳を振りかぶり。
頭に振り下ろす。
ドパァァァンッ
タモンの顔スレスレで拳が止まる。
少しすると目を覚ました。
「なんでやめちゃったのぉ?」
リューは自分でもなぜやめたのかわからなかった。
なぜかダメな気がした。
「気が変わったわ」
「そっかぁ。負けちゃったし四天王やめよっかなぁ」
「勝手にしろや」
「うん! 勝手にする! 修行の旅に出ることにする!」
ブンッ
タモンの足元に魔法陣が現れる。
「次は負けないよ?」
一言そういうと転移していった。
嵐のように何事も無かったかのように去っていった。
「はぁ。結局おれはあめぇんだよなぁ。なんでか分からねぇ。わかんねぇけど、殺しちゃいけねぇ気がしたんだよなぁ」
ヤンキー座りをしてしばし休憩する。
頭をかきながら、さっきの事を思い返す。
トドメを刺そうとしたとき。
怒りで殺そうとしてしまった気がする。
感情に任せて。
それじゃあ、魔物と変わんないんじゃねえのか?
だから、このまま殺しちゃいけないと思ったんじゃねぇか?
アイツらにも理由があるかもしれねぇじゃねぇか。
俺には俺の理由がある。
スッと立ち上がって街に戻ることにした。
俺は俺の周りの人を救いてぇ。
それだけだ。
街に戻ると街の人達に声を掛けられた。
「おい! すげぇ勢いでとんでったけど、大丈夫だったか!?」
「大丈夫っす! ぶちのめして来ました!」
「ハッハッハッ! すげぇな! ケガしねぇ様にな!?」
「うーっす!」
少し歩くと今度はおばちゃんが。
「リューちゃん! 大丈夫だったの!? なんか飛んでったけど?」
「大丈夫っす! 問題ないっす!」
「あんまり無茶しないんだよ!?」
「うーっす!」
この街の人達はあったけぇ。
こんな俺を気にかけてくれる。
俺はこの街と人を守りてぇ。
その為には、もっともっと強くならねぇとな。
屋敷へ戻ると白竜の面々が出迎えてくれた。
「リューちゃん!」
「兄者!」
「兄貴!」
「リューさん!」
「クラマス! 戦闘になったんですって!? 大丈夫でした!?」
「あぁ。この前の魔人がリベンジに来てな。またぶちのめしてやった」
「流石です! クラマス!」
「しっかし、また強くなってやがった。これより強えやつが来るかと思うと腕が鳴るな」
ニヤリと笑いながら話すリュー。
「やっぱりうちのクラマスは最強だ!」
「白竜最強!!」
この出来事はギルドの耳にも入ることになる。
さて、どうなる事か。
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