第4話 ヤンキー、冒険者登録をする
リューと男衆達は街の中をズンズン進んでいた。
街の中頃に差し掛かった頃、盾に剣が交差しているマークの看板がぶら下がっていた。
「ここだ。入るぞ」
中に入ると熱気が漂っている。
左には酒場があり、まっすぐ行くと受付カウンターがある。
カウンターに向かう男衆。
「換金と冒険者登録を頼む。冒険者になるのは彼だ」
そういうと、リューを指差す。
受付の人の頭にハテナが浮かぶ。
「この変な格好をした人がですか?」
「まぁ、外国じゃ特服がねぇのか!? 分かんねぇか!? 日本の戦闘するときの服なんだって!」
リューが抗議をするが男衆が止める。
「待て。そう言われると思ってこれを持ってきたんだ」
ジャラジャラジャラ
「こんなにF級の魔石をどうしたんですか?」
「これもある」
「E級の魔石も!?」
「皆さんで倒したんですか?」
「いや、彼が1人で全滅させた。ゴブリンの村ができていてな。村の娘が攫われてしまったのを一緒に探して救出してくれたんだ。我々がそれを証明するために来た」
「わかりました。少し信じられない所がありますが、証人がいるのでその話を考慮して、冒険者として登録致します」
「そうか。ありがとう。魔石を換金した金は全てリューに渡してくれればいい」
「かしこまりました」
受付嬢との話を終えると、男衆の1人はカウンターから離れた。
「冒険者として登録してくれるというから、後は、リューの方で自由にやって欲しい」
「おう! ありがとよ」
「では、我々はこれで」
去っていく男衆の背中を見送り、受付カウンターで話を聞く。
「では、冒険者として登録しますのでお名前を教えて頂けますか?」
「リューだ」
「リューさんですね。他に得意分野等教えて頂くとパーティを組む時に募集がしやすいですが?」
「ぱーてー? そりゃなんだ?」
「パーティとは複数の人の集まりです。その人達で依頼をこなしたりします」
「はぁ。まぁ小規模のチームっつう感じか……」
「ご理解頂けました? パーティを募集しますか?」
「いや、それはいい。1人でやっから」
「ソロですね。わかりました。それでは、冒険者の説明をさせて頂きます。まず、級というのがありましてF,E,D,C,B,A,Sというふうに上がっていきます。級は依頼を達成した回数と一定条件を満たすことで上がります」
「うーん。難しいことはよくわからねぇが、てっぺんは何になるんだ?」
「てっぺん? えぇと?」
「冒険者のてっぺんだよ!」
「冒険者のトップという事ですかね? それなら、S級冒険者ですね!」
「えす級冒険者な! おれは、それになる!」
「志は高い方がいいと思います。頑張ってください!」
「おう!」
受付嬢も段々疲れてきたんだろう。ノリで合わせている。
そんな会話が酒場まで聞こえてきたんだろう。
酒場から笑いながら近づいてくるものがいた。
「はっはっはっ。お前面白い格好だな!? そんなんで冒険者が務まる訳がねぇ! しかも、S級を目指す!? 出来ないことは口にしない方が良いぜ、にぃちゃん?」
「これは、俺の戦闘服だ。戦うことの多い冒険者ならこれでも構わないはずだが?」
「はっはっはっ! そんなんで身を守れるのか? ジャイアントベアを爪なんてくらったら死んじまうぞ?」
「そんなのくらう方が悪いんじゃねぇか? 避けりゃいい」
「あぁ? おめぇに避けれるって? バカ言ってんじゃねぇ。あれは、盾で受け止めんのがやっとなんだよ!」
「盾だの剣だの持って、ビビってるシャバ僧だからじゃねぇか?」
「しゃばぞう? よくわかんねぇがバカにしてんだな? 身の程を分からせてやるよ!!」
その冒険者は腰の剣を抜き、切りかかってきた。
「くたばれ!」
リューは半身になって避け、顔面にチョーパン(頭突き)を放つ。
グシャ
「ぐあぁぁぁぁ」
顔を抑えてうずくまる冒険者。
鼻が陥没してしまっているようだ。
仲間が酒場から駆け寄ってきてうずくまる男を連れていくようだ。
「さっさとどっか行けシャバ僧」
絡んできた男がギルドを出た後。
「そんで、どこまで話したっけ?」
「あ、はい。S級冒険者になるのが、目標というお話をしまして……」
「おう! そうだ! まず何すりゃいい? そのえす級冒険者を倒しゃいいのか?」
「い、いえ! 違います! 依頼をこなしていって段々と級を上げていくものなんです!」
「そうか。じゃ、なんか依頼受けるわ」
「そうですか。F級ですと、薬草採取が最初は基本なんですけど……」
「薬草? くさぁむしってくりゃいいのか?」
この言い方を聞いてエリーは思った。
(これは、絶対に物になる薬草をとってくる気がない! 討伐系をやらせるしかないわね……)
「いえ! やっぱり違うのにしましょう!」
掲示板のところに足を運んで依頼を見てくれている。
エリーはふっと思った。
「あのー、この紙の文字読めます?」
リューはじぃーと見ると「なんじゃこの字? こんなん読めるわけねぇ」と言ってカウンターに戻ってしまった。
(えぇー。読めないなら一々選んであげないといけないじゃん。)
「今回は、ゴブリン退治と、オーク退治ですね! リューさんなら、楽勝ですよ!」
「この前のやつと、おおくってのは分かんねぇが?」
「豚の顔した人型の魔物です」
「この前のやつの頭が豚になってんだな? それなら、わかりやすい」
「はい! これは、常設依頼と言って、常にある依頼なので期限とかは特にないです。ここで、注意です! 一週間以上リューさんが行方不明の場合、死亡した扱いになります。冒険者とはそういうものです。」
「わかったがよぉ、依頼で一週間以上いないのはいいんだろ?」
「はい! 事前に言って貰えれば大丈夫です!」
「わかった。今日はこんな所にして宿取りに行くわ」
「あっ! これが報酬になります! F級魔石がが銅貨10枚なので114個あったので銀貨1枚と銅貨14枚です。それに、E級魔石は銀貨1枚なので全部で銀貨2枚と銅貨14枚になります!」
「おう。これが報酬か。なんか少ねぇ感じがするが」
「とんでもない! 銅貨30枚あれば1晩泊まれますし、銅貨5枚あれば定食が食べれますよ!? 銅貨は100枚で銀貨になり、100枚で金貨、白金貨と100枚ごとに上がっていきます! もしかしてお金のことも理解してない?」
「すまねぇ。金のこともよく分かってなかったわ。説明してくれてありがとな」
ニコッと笑うとほの笑顔を見た瞬間顔が暑くなるエリー。
そう。お分かり頂けただろうか。このリューという男、無駄に顔が整っているのだ。
その顔にやられたエリーは顔を赤くしながらシッシッと手を動かす。
「もう! 分かったなら、行ってください!」
「わかったよ。じゃあな」
カウンターを背にして出口に向かうリューの背中を見つめるエリー。
顔の火照りが収まらないようで、ソワソワしている。
「なんなのよあの人!」
訳の分からない人物の登場に振り回されるエリーは今後も振り回されるのだろう。
ギルドを出たリューは、宿を探していた。
屋台のおじさんに聞いてみることにする。
「おっちゃん! この串焼き3個ちょうだい!」
「いらっしゃい! あいよぉ!」
「この街初めて来たんだけどさ、宿って何処にあるかな?」
「宿か? あっちに沢山あるよ? ベッドのマークの店は全部宿だよ。へいお待ち!」
「そうなのか。あんがとな!」
「おうよ! また来な!」
宿に向かって歩いていくと、確かに沢山あるようであった。
「いっぱいあんなぁ」
キョロキョロしながら宿を探していると。
「そこの不思議な格好の兄ちゃん、宿探しか?」
冒険者風な格好をした男が声を掛けて来た。
青い髪を短く刈り上げ逆立てていて、身長はリューと同じくらいだろう。
皮鎧を着て剣を下げている。
「あぁ。どこがいいのか分かんなくてな」
「何のために宿に泊まるんだ?」
「冒険者ってのになったんだが、宿を取らねぇと始まらねぇだろう?」
「すまない。冒険者だったんだな! だったら、俺がいい宿紹介しよう! 冒険者なら、寝るだけだろう? 部屋は狭いが、連泊すると安くなるんだ! 飯も美味いしな!」
「おう! そこがいいな!」
「だろう? あっちだ」
男に付いていくと、少し年期の入った宿にたどり着いた。
「ここだぜ? 今日も宜しく!」
中に入っていくと、女将さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃい! 今日は2人なの?」
「いや、コイツが宿を探してたから連れてきたんだ」
「なんだい! そうなの? ありがとうねぇ!」
女将さんがリューの前に来る。
「何泊する?」
「んー金があまり無いから銀貨1枚で泊まれる分にしてくれ」
「わかったわ、じゃあ、安くするから4泊分ってことにしましょう!」
「それでいい」
「はい! 部屋はこの鍵の番号の部屋よ」
「おう」
部屋の鍵を受け取るリューは案内してくれた男に礼を言う。
「すまねぇ。助かったわ」
「いいんだ。ワイはダイン。宜しくな」
「おれはリューだ。じゃあな」
部屋に入るリュー。
部屋の中はベッド1個があるだけの簡素な部屋だった。
「何とか、宿にはありつけたな。後は、何とかなるだろ」
ベッドに横になり目をつぶると、すぐに寝てしまったのであった。
こうして冒険者としての第一歩を踏み出したのであった。
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