第38話 ヤンキー、孤児を救う
子供達を40人程連れて帰ってきたリュー達白竜は、自警団に引き渡そうとしていた。
「奴隷商に酷い扱いされていた子達だが、親の元に帰れるだろうか?」
「いやー、無理だと思うよ? お金が無くて子供を売った人も居るだろうし、どこの街から来たのか情報がないんじゃあな」
酷い扱いを受けていた子供達も街の名前がわかっても、どこの国かはわからないのだ。
「そうか。この子達を俺が引き取るってのも大丈夫なんだろうか?」
「あぁ。それは構わないよ。むしろ、こちらとしては助かるね。子供をどうするかで色々面倒だからな」
「それなら、俺が引き取るさ」
「助かる。頼んだ」
白竜の名前は今やブレイズの街で知らない者はいない。
それに、白竜の大部分が元々はスラム出身で、リューに助けられたというのは有名な話であった。
自警団員も白竜ならとお願いする事にしたのだった。
「じゃあ、まずはこの街の孤児院の子達を院に連れて行って話をしよう。っと、その前に飯にしよう。ジャック、これで出来る限り食料を買ってきてくれ」
「わかったのじゃ! お前達も3人くらい手伝ってくれ!」
「「「おす!」」」
ジャックはリューから貰った金貨を手に、3人引き連れて食料調達に行く。
「お前達! もう少し待っててくれ! 今食べ物を用意する!」
ちゃんとした物を食べていなかったであろう子供達はやせ細っている。
洞窟から街まで歩いたことで疲れ果て、立っているのもやっとだ。
「あっ! 兄貴! 急に人集めてどこ行ったのかと思ったらこんなに子供達連れてどうしたんですか!?」
街の広場に集まっていたリュー達を見つけてジェイクが駆け寄る。
「おっ! いい所に来たじゃねぇかジェイク。バルトに子供が40人くらいしばらく泊まるから泊まるとこ用意してくれって伝えてくれねぇか?」
「えっ!? わかりました! 伝えてきます!」
ジェイクは急いで屋敷に戻っていった。
しばらく待っているとジャックが戻ってきた。
「クラマス! お待たせじゃ!」
食料を買いに行った4人は、両手いっぱいに食べ物を抱えている。
「それを子供達に配ってくれ」
「了解じゃ!」
次々と子供達に食べ物を配り始めると、子供達が戸惑っている。
「俺は、何もしない! 助けたいだけだ! それを食べてもなにかする訳じゃない! ゆっくりと食べて腹を満たしてくれ!」
その中の1人がパクッと食べた。
美味しい。と声があがると周りの子供達も食べ始めた。
中には涙を流しながら食べる子供もいた。
しばらくまともな食事をしていないんだろう。
食べ終わった頃に、バルトを初めとする白竜の使用人達がやってきた。
「ご主人様。ジェイクに話を聞きました。子供を預かるとか」
「預かるっつうか面倒見ることになると思うわ。孤児院の院長とも話してだけどな」
「畏まりました。使用人達を数人連れてきました。子供達を連れていくお手伝いをします」
「おう。頼む」
使用人達は1人で数名ずつ子供達をみながら屋敷に連れていく。
歩けない子供はおぶって行くようだ。
「あっ! バルト! 俺は孤児院に寄ってから行くからよ!」
「畏まりました!」
リューは1人で孤児院へ向かっていった。
すると、帰ってきたばかりなのだろう院長がオロオロしていた。
「院長さんでいいのか?」
「はい! 隣街から戻ってきたら子供達が居なくて……」
「子供達は今は俺達白竜の屋敷にいる。奴隷商に拐われたのを見た仲間が知らせてくれてな。奴隷商は全滅させた。安心してくれ」
「あぁぁぁぁ。よかったぁ。有難うございます!」
「それでな、ちょっと相談があるんだが、子供達を俺に任せてくれないだろうか? 勿論、院長も家に来て貰っても構わない。行くとこがないなら白竜に迎え入れよう」
「そう……ですね……子供達もいるなら私も行っていいでしょうか。実は1人でも食べていくのがやっとでして……」
「あぁ。歓迎するよ。ウチの使用人達とどの役割を担当するか話し合ってくれ。なるべく子供達に関わるように考慮するからよ?」
「有難うございます!」
「じゃあ、荷物まとめて行こうぜ」
「はい!」
院長は元々荷物が少なかったので、すぐに荷物をまとめて白竜の屋敷に向かった。
屋敷に着くと、バルトが出迎えてくれた。
「ご主人様。お帰りなさいませ」
「おう。子供達はどうだ?」
「順番に風呂に入っているところです」
「そうか。この方は孤児院の院長さんだ。子供達は正式にウチで引き取ることになった。一緒に院長さんも────」
「すみません。名前を名乗っていませんでしたね! マリアといいます」
「あぁ。すまんな。俺も自己紹介がまだだった。リューだ」
「存じ上げております。白竜はこの街では英雄ですから……」
「そうか? まぁ、これからはその白竜の仲間入りだ。主に子供達の世話をすることになるとは思うが……バルト? マリアさんはどこに配属だ?」
アゴに手をあてて考える素振りを見せる。
「そうですねぇ。子供達のお世話をする人材をマリアさん以外に補佐役を付けようと思ってました。ですが、そこまで子供達は手がかからないと思います。子供達の世話役以外に服の修復、作成をお願いしようと思います。それで、生計を立てていたとお聞きしましたので」
「あっ。はい! それなら私にもお手伝い出来ると思います。本当に有難うございます」
「流石だ。バルト。一応食べ物を食べさせはしたが、腹が減ってたら食わせてやってくれ」
「畏まりました。しかし、ご主人様。あまりまともに食べていない子供にはいきなり普通食ではなく、お粥のような柔らかいものを食べさせるのが良いのですよ?」
「うっ。そうなんか……食わしちまったな……すまん」
「覚えておいて下さればいいです。みんなにスープをご馳走しましょう。それでは、早速手伝って貰えますか? マリアさん?」
「はい。わかりましたわ」
バルトに怒られて少し落ち込んでいるリューは、自分の部屋に向かって歩く。
「リューちゃんお帰りなさい。どうかしたの?」
「いやな、バルトに怒られちまってよぉ」
苦笑いしながら頭をかく。
その姿を見てこんな顔をすることもあるんだなと新鮮な気持ちになったララ。
「話なら聞くわよ?」
部屋に入り、2人でベッドに腰掛ける。
「─────って事があったんだが、バルトに普通のものをいきなり食べさせるのは良くないって怒られちまってな」
「ふふふっ。それはバルトも子供達のことを考えて言ったんでしょうね。これからも同じ状況がありそうだったから教えたんじゃないかしら? でも、リューちゃんにしっかり言えるなんて流石ね。執事がいたについてきたじゃないの?」
「そうだな。覚えておいてくれればいいって言ってたし、そういうことなんだろうな。俺はまだまだ知らねえ事が多い。みんなに助けられてるのは自覚してんだ。喧嘩しか出来ねぇってのは言い訳なんだよな」
「そうねぇ。これから学んでいけばいいんじゃないかしら? リューちゃんをしたって集まってるから気にする人はいないと思うわよ?」
「んー。出来ることからやって行くしかねぇな」
「そうよ! 暗い雰囲気はリューちゃんには似合わないわよ!」
「あぁ。ありがとなララ。なんか吹っ切れたわ」
「ふふっ。どういたしまして」
この日は久しぶりに2人だけの時間を満喫したのであった。
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