第37話 ヤンキー、外道を成敗する
祭りが終わってから3日経ったが、リューはどこか上の空であった。
ボーッとしているリューを見て、周りは心配そうにしていた。
「ララさん、リューさんなんかあったんすか?」
「あぁ。グレンか……んー。よく分かんないのよねぇ。まぁ、ちょっとは見当ついてるんだけど、結局リューちゃんがどうするのかってとこなのよね」
「なんか不味いことでもあったんっすか?」
「不味いことではないわ。たぶん……孤児院の子達の事が気になってるんだと思うのよね」
「あぁー。リューさんに挟みパンをぶつけちゃった子の事っすね?」
「そう。なんかほっとけないみたいで、エリーから、孤児院が奴隷商に目をつけられてるみたいな話を聞いたのよ」
「なるほど! 助けてあげたいけど、どう助けたらいいものか。って所っすか?」
「たぶんねぇ。そうじゃないかと思ってるわぁ」
「ちょっとウチの調査部隊を動かしますかね」
「いいの?」
「クラマスが困ってるんっすから、声かければ動きますって」
グレンはニッコリ笑いながら去っていく。
リューの為に斥候部隊を動かすようだ。
◇
ある日の孤児院での出来事を調査部隊は目撃していた。
「何回言われても子供は売りません!」
「しかし、経営が苦しいんじゃないですか? せっかく作ってる服も買い取って貰えないようですし? ここの孤児院の子供は可愛らしい子が多い。いい値段で買い取りますよ?」
まとめ役と思われる中年女性と、両脇に屈強な男2人を連れた小太りな男が孤児院の入口で口論している。
「別のお店にも声を掛けますので。それでもダメなら、今度、隣町まで売りに出かけてみるので。そこでお金を稼いできます。ご心配なく。」
「そうですか。売りたくなったら何時でも! 声を掛けてくださいね?」
嫌な笑みを浮かべながら去っていく小太りな男と2人の男。
「こりゃ、調べがいがありそうじゃ」
影から見ていたのは2番隊隊長のジャックであった。
◇
「クラマス。何やら悩んでいるらしいの?」
「ん? ジャックか……そうだな。祭りの時に見た孤児院の子達が忘れられねぇんだわ。頭に焼き付いて離れねぇ。なんとかしてやりてぇんだが」
「実はのぉ、グレンに言われて調べてきたのじゃ」
「グレンに? そうか。気を使わせちまったな」
「まぁ、みんなクラマスが心配だったんじゃ。それで、孤児院なんじゃがの、作った服を売って生計を立てていたようじゃが、ある時から買い取って貰えなくなったようじゃ。それが、奴隷商が来始めた頃と一致するということがわかったのじゃ」
「圧力をかけて買取しないようにさせて、孤児院が苦しくなるようにしていたって事か?」
「そのようじゃの。奴隷商自体は他所から来た者のようじゃ。色んな街で同じような手口を使っているんじゃろう。孤児院からの買い取りを拒否するように嫌がらせをしているようじゃしの」
「子供を食い物にしてるクズだったってことかよ」
「そうじゃのぉ。奴隷商も色々じゃよ。苦しいところの子供を買い取って、ホントにいい所に売ろうとしてくれる者もいるのじゃ。じゃが、今回みたいに食い物にしている奴らも少なくないじゃろう」
「それが分かっただけでもいいか。やりやすくなった。ありがとなジャック」
コンコンッ
ジャックの部隊員が入ってきた。
「なんじゃ?」
「孤児院に動きがありました。孤児院の院長は隣街に行ったようですが、そこを狙って男達が子供を連れ去ろうとしているようです」
「ジャック! 部隊員集めろ。今いるものでいいから出来る限り集めろ!」
「了解じゃ!」
素早く準備を済ませるリュー。
大広間に行くと大方人が集まっていた。
「時間がねぇ! 行くぞ!」
「「「「「おう!」」」」」
「ジャック! 孤児院までの案内頼む!」
「おう! こっちじゃ!」
凄まじい速さで移動しているジャックとリュー、その後を追う白竜。
孤児院に着くと、既に子供を馬車に乗せて運ぶところであった。
「行くぞ!」
「クラマス! 待つんじゃ!」
とっさに止めるジャック。
「何で止める?」
「ここにいるのは一部の人間じゃ。隠れ家に連れていくはずじゃ。そこを特定しない限り一味が残り続けるのじゃ」
「そうだな。俺が冷静じゃなかった。後を追うぞ」
馬車の後を静かに追っていく。
街の外へ出ていき、洞窟の前に着いた。
「おりろ!」
子供達を下ろそうとしている男達。
そこに迫る白竜。
「行くぞ!」
リューが飛び出す。
男達はリュー達に気づいた。
「!? なんだ!? お前────」
ドスッ
子供を下ろそうとしていた男は戦闘不能にした。
馬車の馬を操っていた男が下りてくる。
「敵襲!!」
バギッ
男を吹き飛ばす。
声を聞き付けた仲間たちが外に出て来てしまう。
「お前達、この馬車の守りを任せた! ジャック達2番隊は中に入って同じような子供達がいないか確認してくれ!」
「「「了解!」」」
「俺は、大元のやつを潰す!」
洞窟の奥へ入っていく。
「【体】」
オーラを体内に入れ、肉体を強化する。
「なんだ!? テメ─── ぐあっ」
「オラァ─── うあっ」
「行け行けー!」
一気に5人ほど出てくるが、リューの敵ではなかった。
ドゴォォォォ
1人を吹き飛ばし、それに巻き込まれる4人。
「「「「ぐぁぁぁ」」」」
何ヶ所かの分岐点を2番隊に調査を任せ、1番奥を目指す。
それは何故か。
悪いことを考えるやつは大体1番奥で仰け反っているものだ。
奥にはボス部屋のような扉が着いていた。
廃ダンジョンを根城にしていたようだ。
廃ダンジョンとは、安定ダンジョンのダンジョン魔石の魔力が尽きてただの洞窟になってしまったダンジョンを言うのだった。
ガァンッ
蹴り開けると、屈強な男2人と小太りな男がいた。
「なんだ!? 貴様は!?」
「子供達を食い物にする腐れ外道を始末しに来た」
「俺は、お前達のような外道には虫唾が走る! 全ゴロシだぁぁぁ!!」
リューからは白銀のオーラが溢れる。
「お、お前達! やれ!」
リューより二周りくらい大きな屈強な男が2人で迫ってくる。
ブゥンと拳を振り下ろしてくる。
パァンッ ドパァン
拳を弾き、掌底を頭に放ち頭がチリとなる。
血の霧が舞う中、ハイキックがもう1人の頭を襲う。
ズゴォォォン
頭が陥没して吹き飛ぶ。
残るは小太りの男だけとなった。
「何が目的なんだ!? 金か!? 子供が欲しいのか!? 好き勝手虐めたいのか!? あっ! 女の子か!? そういう趣味の人から人気が高くて──────」
「【瞬】」
ドパパパパンッ
手足が吹き飛ぶ。
「ぐあぁぁぁぁ! こんな事をしてタダで済むと思ってるのかぁ!? 俺は魔族がバックにいるんだぞぉ!?」
「お前みたいな外道は苦しめ」
そのまま転がして置いていく。
戻る道すがら救出した子供達が出てくるのを見守りながら殿を勤める。
「クラマス! 奴隷商は?」
「手足を無くして転がってるよ」
「なるほど。生き埋めですかい?」
「それが苦しいだろうと思ってな」
合流したジャックを引き連れて洞窟を出ていく。
「中の子供は全員助けたな!?」
「「「「「おす!」」」」」
「魔法部隊を残して先にいっててくれ!」
子供達を護衛しながら街に戻っていく白竜。
「魔法部隊! 俺と一緒に洞窟を崩すぞ! 二度とこんな洞窟を使わせるな!?」
「「「おす!」」」
「合わせるぞ!」
「「「おす!」」」
「さん! にー! いち! 【破】ぁーーー!」
「「「ロックキャノン!!」」」
魔法部隊は巨大な岩を射出するオリジナル魔法を放つ。
ズドドドドドドドドドォォォォォッッ
「これでここはもう使われない。帰るぞぉ!」
「「「おす!!」」」
リューと魔法部隊は洞窟が埋まったことを確認し、ブレイズの街に帰って行った。
こうして、孤児院の子供達は外道からの手から逃れた。
これからの事は、リューが考えているだろう。
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