第35話 ヤンキー、祭りを楽しむ 前編
「チャーーッス! エリー久しぶりだな!」
1週間ぶりくらいに帰ってきたリューは所々に傷を負っていたが、更に凄みが増していた。
「リューさん! お帰りなさい! また森に籠ってたんですよね? 白竜の人達から聞きましたよ?」
「おう! まだまだ自分は弱いとわかってな。鍛えなおしてたんだ」
「そうだったんですね!……あーっ。だからみんな闘技場借りてたんですねぇ」
「ん? あいつら闘技場借りてたのか?」
「えぇ。そんなんですよ。訓練するためだったのかなぁー?って」
「ほぉ。そうか。あとで聞いてみっかな」
「あっ! それより! 今日から神礼祭ですよぉ!?」
「しんれいさい?」
「そうです! 知らないですか? 神様に日頃のお礼をする為ってことで、お祭りがあるんです! 神様の像に採れた作物とかをまつるんです!」
「そうなんか。じゃあ、皆で見て回っかなぁ」
「白竜の皆さんとですか? いいですね!」
「そうだなぁ。リント達を連れてったら楽しいかなと思ってよぉ」
「それはいいですね! ちなみに……私も今日は早上がりなんですよぉ」
「おう! じゃ、一緒に行くか?」
「いいんですか!?」
「まぁ、いいんじゃねぇの? 皆で行くんだし?」
「はい! 終わったら合流します!」
「あぁ。魔石換金しようと思ったけど、また今度にするわ!」
「……そうしてください……帰れなくなる……」
「じゃ、またな」
後ろを振り向き手を挙げてギルドを出ていくリュー。
そのまま屋敷を目指して歩いていくと、気がつかなかったが確かに人が多い。
「帰ったぞぉー」
「ご主人様! お帰りなさいませ!」
一目散にやって来たのは戦闘服姿のシフォンであった。
「おぅ。シフォン。鍛錬してたのか?」
「はい! 正規部隊の方に入れてもらって訓練に参加させて貰っているんです!」
「そうなんか! すげぇことだぞ!? シフォン!」
シフォンの頭をナデナデしながら褒めると。
シフォンは顔を真っ赤にしながらコクコクと頷いている。
「あっ! ご主人様! 帰ってきてたんですね! 俺達正規部隊の訓練に混ぜてもらってるんです!」
「あぁ! シフォンに聞いて驚いてたぞ? リント達凄いじゃねぇか!」
シフォンの頭にあった手をリントの頭に移動し、ポンポンっとすると。
リントは照れくさそうに笑みを浮かべている。
それを羨ましそうに見ているハイドとソフィ。
「そういやぁ、今日は祭りらしいじゃねぇか? 息抜きがてら皆で遊びに行かねぇか?」
「ご主人様! いいんですか!?」
シフォンが飛び上がって喜ぶ。
「あぁ。皆で行こう」
「着替えてきます!」
「あっ! 俺達も準備してきます!」
シフォンは真っ先に着替えをしに行き、後を追うようにリント、ソフィ、ハイドと続く。
バルトのいる執務室へと向かう。
コンコンッ
「はい? どなたですか?」
「リューだ」
「ご、ご主人様! お呼び頂ければ伺いましたのに! 無事にお戻りになられてよかつたです!」
「あぁ。これから気分転換に皆で祭りを楽しもうかと思ってよぉ。行きたそうな奴に声掛けてくれねぇか?」
「はい。かしこまりました」
「じゃ、頼むな」
背中越しに手を振り執務室を出たリューは自室に向かった。
自室で寛いでいると、突然扉が開いた。
「リューちゃん! 戻ってきたのね!」
「あぁ。久しぶりだなララ?」
「待ってたのよ?」
ララは頭をリューの胸に付け甘えるように頭をグリグリしている。
「すまんかった。今から皆で祭りに行こうって話してたんだ。一緒に行かねぇか?」
「行くわ! 着替えてくるわね!」
着替えをする為に慌ただしく部屋を出ていく。
しばらくして、バルトが呼びに来た。
「ご主人様。祭りに行きたい者を集めました。大広間にいますので」
「わかった。ありがとな」
バルトは頭をスッと下げてさがっていく。
大広間に入ると、20人ほどが集まっていた。
ほとんどがメイドと子供であった。
その中に1人ゴツイのがいる。
傍に行き、声をかける。
「なんだ? 祭りに興味あったのか?」
「あっ! リューさん! お帰りなさいっす! 自分祭りなんて行ったことないから行ってみたかったんすよねぇ!」
振り返ったのはグレンであった。
目をキラキラさせながら楽しみにいているのが伺える。
「そうか。今日は楽しめ!」
「うっす!」
「それじゃあ! みんな祭りに行くぞー!」
「「「おぉぉぉ!」」」「「「はぁぁい!」」」
大広間を出てゾロゾロと歩いていく。
女性達はドレスで着飾り、男性達も精一杯の一張羅で来ている。
リューの隣にはララがやって来た。
「リューちゃん。どうかしら?」
その場でララがクルッと回りドレスが舞う。
胸元がパックリ開けて谷間が強調され、キュッとしたクビレがスタイルの良さを際立たせていた。
「綺麗だぞ? ララ」
「フフフッ。ありがと!」
ご機嫌そうにそう言うとリューの腕に自分の腕を絡みつけくっ付いて歩く。
シフォン達は早く行きたくて先頭を歩いていた。
「シフォン。慌てて人にぶつからないようにな?」
「は、はい! えへへ。楽しみすぎて早足になっちゃいました」
リューが声を掛けると照れくさそうに頭を掻きながら笑う。
そんなシフォンとソフィはドレスを着て着飾っており、ハイドとリントもオシャレな服装で歩いている。
「シフォン、ソフィ、今日は一段と可愛いわよ?」
「「ありがとう! ララ姉さん!」」
「皆、今日は気が済むまで楽しめ!」
「「「「はい!」」」」
みんないい笑顔で返事をして歩いていく。
段々と街中に来ると屋台が出ていて人が多くなってきた。
子供の賑やかな声が聞こえている。
ドンッ
リューの腰の辺りに小さな衝撃が伝わる。
見るとはさみパンの中身がリューの服にベットリ付いてしまっていた。
「あっ………………」
やってしまったという思いで固まって震えている女の子。
こんな強面の集団の一人にぶつかってしまい、しかも服にベッタリとソースを付けてしまっては生きた心地がしない事だろう。
泣き出しそうになっていると。
「いやぁ、すまんなお嬢ちゃん! こんなに集団で道塞いじまってたからぶうかっちまったよな!?」
しゃがんでその女の子の頭をポンポンッとする。
「食べるのを俺が邪魔しちまった! すまなかった! これでその挟みパンを好きなだけ食べるといい」
そう言って金貨を渡すリュー。
「これでいっぱいパン食べれるの?」
「あぁ! たぁぁくさん食べれるさ! お友達にもお父さんお母さんにもご馳走してあげるといい!」
「うん! お兄ちゃんありがとう! バイバイ!」
「おう! 前見て走れよ!」
「はぁい!」
トテトテと走っていく女の子を眺めながら笑みを浮かべているリュー。
その顔を見てウットリしているのはララだ。
「リューちゃん。女子供には優しいわね!」
「そうか? 男にも優しいと思うが?」
「そうかしら? 服に着いちゃったのはいいの?」
「後で洗えばいい。勲章みたいなもんよ」
「フフッ。そう」
その一連の流れを見ていた白竜の面々はリューの器の大きさを改めて実感するのであった。
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