第33話 ヤンキー、魔人とタイマンする
「あーあぁー。せっかく集めたのになぁ。やってくれたよねぇ。まったくぅ」
そこに現れたのは角を生やして青い長髪の細めの魔人であった。
「おい? スタンピード起こしたのはてめぇか?」
「あっはっはっはっ! ここに現れたらそういう事だよねぇ? えぇ? 言わないと分からないのぉ?」
魔人が挑発してくるが、リューは冷静に対処する。
「なぁ、名前はなんてぇんだ?」
「僕の名前知りたいの? 僕の名前はねぇ、タモンっていうんだぁ。まぁ、消えるんだから覚えなくて良いよ?」
「言ってくれるじゃねぇか。お前達、手ぇ出すなよ?」
後ろに控えていた白竜メンバーに手を出さないように告げて、タモンの前に立つ。
「俺が相手してやるよ」
「なぁにぃ? 一人でかかってくる気ぃ? こう見えても強いよぉ?」
「上等だ! 気合を入れる!」
リューは髪をかきあげ、やる気を爆発させる。
黄色がかった湯気が身体から吹き出す。
「【瞬】」
一瞬で魔人に肉薄して攻撃を仕掛ける。
ドパパパパッ
「おぉ! 早い早い!」
喋りながら避ける。
魔人の身体能力は素の状態でも相当高いようだ。
「【撃】」
ドゴォンッ
渾身のフックを左手一本で受け止められてしまう。
「えぇ? この程度なのぉ? 残念だなぁ」
ドスッ
タモンはガードしたままの体制から右足でリューの腹に蹴りを放ってくる。
「ぐっ……」
しかし、タダでやられるリューでは無い。
蹴りを与えた足をそのまま抱え込んで抑える。
「なっ!? ちょっとぉ! 離せよぉ!」
足を引き離そうとするが離さないように抱え込んでいるために足が抜けない。
「逃がさねぇ。オラァ!」
足を掴んだまま、右手で打ち込んでいく。
ドスッドスッドスッ
タモンは両手を使えるためガードされてしまう。
が、リューは関係ないようだ。
ガードごと攻撃を加える。
「【撃】【撃】【撃】」
ドゴォンッドゴォンッドゴォンッ
「くっ! いったいなぁ! 【フィジカルアップ】」
バチィン
凄まじいパワーで掴んでいた足を引っ張られ、離してしまう。
タモンが一回り大きくなり、マッチョになっていた。
「おいおい。まだパワーが上がるのか? おもしれぇなぁ!」
リューは笑みを浮かべながらタモンを見ている。
「僕を本気にさせたねぇ? この状態の僕に勝てるわけがないんだよ! さようなら!」
ボゴンッ
さっきまでタモンが居た地面が抉れている。
と思った瞬間。
ドゴォォォォンッッッ
リューはぶん殴られて吹き飛ばされた。
10数メートル吹き飛ばされて転げる。
すぐさま起き上がるが、顔の左側が腫れている。
頬骨が折れたようだ。
「やってくれるぜ。ふぅぅぅ。【防】張ったのにこれだもんなぁ。グレンと同じような力があるんだな」
「よく生きてたねぇ? エライよぉ」
「おれぁよぉ、喧嘩しかのうがねぇんだ。だからな、喧嘩では負けられねぇんだよ!」
立ち上がってタモンに向かうリューの体には黄色がかったオーラが張り付いている。
「【纏】これが今の俺の本気だ」
体全体をオーラでカバーし、ガードしつつも攻撃もできる。
今リューができる最大の使い方だった。
「僕とどっちが強いかなぁ?」
「行くぞオラァ!」
ズドォンッ
タモンはまた左手でガードするが同時に右の拳を繰り出してくる。
ガァァンッ
リューはガードをせず、そのまま顔面に拳を受けてしまう。
しかし、受けると同時に攻撃していた。
バキィィィ
「ぐっ」
「初めて効いたみたいだなぁ?」
「お前はなんで僕の攻撃を受けたのに平気なんだ!?」
「平気じゃねぇさ。気合いだ」
リューの理屈はよく分からないが、気合いで何とかしていると、そういう事であろう。
「まだまだ行くぜぇ?」
「僕だって負けない!」
ドガァァン
「がっ」
ドォスッ
「うっ」
バギィィィ
ドゴォンッ
白竜のメンバーはリューが勝つことを信じて後ろで見ているしかない。
どのくらいの時が流れただろうか。
2人は最早魔力も気合いも尽きそうになりながらもまだ殴り合いを続けていた。
「ウラァ!」
ボゴッ
「はぁ!」
バキッ
「「はぁ……はぁ……はぁ」」
「僕は負けないんだぁ!」
「俺も負けねぇ!」
タモンの右拳が迫る。
リューも右拳をクロスさせる。
バギャ
ズルズル……バタッ
立っていたのは
リューであった。
「っっっしゃああぁぁぁぁ!!」
両手を突き上げてガッツポーズをする。
ブンッ
タモンの倒れたところの下に魔法陣が現れる。
そこに新たな魔人が現れた。
「観させてもらったぜ。人間も中々やるもんだな!」
凄まじい雰囲気を放つその魔人にリューは再び構える。
その魔人は目が右眼が金、左側が銀のオッドアイであった。
「うーん。凄まじいオーラを放ってんな! 俺は、コウモクってんだ! 今回はこれで引くわ! じゃあ、またな!」
そう言って負傷した魔人を連れて転移魔法で消えていった。
「フーーーーーッ」
しゃがんでヤンキー座りになると、下を向き安堵のため息を吐いた。
「いやー……助かったなぁ……今アイツとやりあったら負けてたかもしれねぇ」
「リューさん! 痺れたっすよ!」
「さすが兄者だ! 凄まじい戦いだったぞ!」
「兄貴! すげぇかっこよかった!」
「リューちゃん流石ねぇ。惚れ直したわ! まさか魔人を素手で倒しちゃうなんて、凄まじいわね!」
グレン、ダイン、ジェイク、ララと順番に賞賛してくれる。
「俺達白竜のクランマスターは、素手で魔人を倒したぞぉぉぉ! こんな猛者は他にいねぇ! 我らのクラマスは最強だぁぁぁぁ!!」
「「「「「おおぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
ボロボロになったリューを口々に称えるのであった。
「はっはっはっ。こんなボロボロのクラマスを最強だなんて馬鹿なヤツらだなぁ」
ケラケラと笑いながら照れ隠しで頭をかきながら言っている。
すくっと立ち上がると、街の方へ歩き出す。
「リューさん! 肩使ってください!」
リューを支えながら歩き出したのはグレンであった。
「よぉぉし! こっから街まで、魔物には兄者に指1本触れさせるな!?」
「「「「「おす!!」」」」」
トコトコやって来たのはシフォン達であった。
「おぉ。シフォン、リント、ハイドにソフィ。良くぞ俺を助けてくれたな! また一緒に戦おうぜ!」
「はい! さっきの戦いみてました! ご主人様はホントに強くて誇り高いです!」
「俺もご主人様みたいに慣れるように精進します!」
「僕も……強くなりたい……」
「あたいも、ご主人様と一緒に戦えるように強くなる!」
「おう。一緒に強くなろうや。まだまだお前達は若い。鍛えれば鍛えた分、強くなれる。俺だってまだまだ上がいるからなぁ。怠ける訳には行かねぇのよ」
「流石です! ご主人様!」
「俺は、喧嘩しかできねぇからなぁ。みんなこんなクラマスで悪ぃな!」
「なにおう!? 我らがクラマスは最高だよなぁ!?」
「「「「「おうよ!!」」」」」
「「「「「クラマス最高!!」」」」」
白竜は本日1番の盛り上がりを迎えていた。
街に戻るまでボルテージは最高潮になっていった。
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