第32話 ヤンキー、再びスタンピードに立ち向かう
家族を鍛える機会を持った事で、習慣として使用人とも、訓練をするようになっていたのである。
そんな平穏を壊す音が響き渡る。
カンッカンッカンッカンッ
街の鐘が激しく叩かれる。
これは、余り聞きなくない、街に危機が訪れていることを意味する報せである。
リューは真っ先にギルドに行き状況を確認する事にしたのであった。
「みんな聞いてくれ!」
奥からギルドマスターが出てきて冒険者のみんなに今の状況を説明しだした。
「今街の東側に大量の魔物の大群が押し寄せてきている。この前のスタンピードと同じかもしれんが、今回は地震のようなダンジョンが発生するような予兆もなかった。何が原因かわからないが、この街を守って欲しい!」
「あたりめぇだ!」
「皆で守るぜ!」
「やってやるよ!」
冒険者達はみな立ち上がって決意を口にする。
「みんな、頼んだ!」
「「「「「「おう!!」」」」」」
リューもすぐさま準備に取り掛かることにした。
屋敷に戻るとすぐに白竜全員、使用人も含めて総員を集めた。
「みんな! 今この街は再び魔物に襲われそうになっている! 救えるのは俺たちしかいない! 戦闘員は戦う準備を! 使用人達は、戦闘が長引く可能性があるので、回復薬や飯の準備をしてくれ! 東門に飯を持っていくぞ!」
「「「はい!」」」
「俺たち白竜は全員で事に当たるぞ!」
「「「「「「「「おす!!」」」」」」」」
指示を出すと東門へ向かうリューであったが、各部隊も一緒についてきたようである。
使用人達は色々準備をしてから東門にて拠点を設営する予定である。
東門へ出てきた白竜は、魔物を通さないように横に並ぶ。
「ドム! 後ろにはぜってぇ通すなよ!」
「了解なんだな!」
「ジャック! 接敵まであとどれくらいだ!?」
「あと5分もすれば接敵じゃ!」
「フィル! 射程に入ったら撃てよ! マーク! でかいヤツを頼む!」
「「了解!」」
黒い影が多数前方を埋めつくして迫ってくる。
「よしっ! 0番隊! 1番隊! 突っ込むぞ! 俺に続けぇぇぇぇぇぇ!」
「「「「「「「オォォォォォ!!」」」」」」」
「気合い入れるぜぇ!」
リューの体を黄色いオーラが包み込む。リューのオーラの密度が以前より増しており、色が変わっているようだ。
前方にはウルフ系のモンスターを筆頭に、ゴブリン、オーク、スケルトンなど、数を多くすればいいと思っているようである。
そうなってくると、自然に発生したスタンピードではないと予想されるが、リューはそこまでは考えていないのだ。
「【瞬撃】」
「【腕】連撃!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ
魔物が次々と宙に吹き飛んでいく。
「【八咫烏】」
「【フレイムストーム】」
「【ウィンドハリケーン】」
0番隊の面々が次々と攻撃を繰り出してくるのを避けれるはずもなく。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォ
目の前の辺り一面の魔物が吹き飛ばされて周りには魔石が散乱していた。
「魔石は放っておくぞ! まだまだ来る! お前ら! 突っ込むぞ!」
「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」
突っ込もうとした時、他の冒険者たちも駆け付けた。
「白竜だけに任せる訳には行かねぇ! 俺達も意地を見せるぞ!」
「「「「「おうよ!」」」」」
リュー達の後ろからは冒険者達が押し寄せてくる。
「4番隊! 前線を押し上げるぞ!」
「わかったんだな! みんな踏ん張るんだな!」
「「「「「おう!」」」」」
4番隊は盾を構えて魔物の群れに正面から当たっていく。
ズンッッッッ
「みんな踏ん張るんだな!」
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」
魔物の進行が少し遅くなった気がしたその時、後ろからきた冒険者達が合流した。
「野郎どもかかれぇぇぇ!」
「「「「「「うらぁぁぁぁぁぁ」」」」」」
魔物達は一気に数を減らしていく。
しかし、まだまだ魔物はうじゃうじゃしている。
2時間程戦い続けただろうか。
少し少なくなってきたように感じる。
段々と負傷するものが目立ってきた。
リューはいち早く気づき、負傷した者の元へ行く。
「ここは俺が引き受ける! 下がって回復してこい!」
「助かりました! すぐ戻ります!」
そう言って下がっていく白竜戦闘員。
リューも段々と疲労が見えてきていた。
ザシュ
「くそっ! オラァァァ!」
ドゴォォン
敵を吹き飛ばすが、腕を負傷してしまったリュー。
「まだまだぁぁぁ!」
魔物の群れの中に飛び込み殴り倒していく。
ガッ
「やべっ!」
足を引っかけて転んでしまう。
2時間動きっぱなしの腕には相当な負担がかかっていたようだ。
近くの魔物が武器を振り下ろしてくる。
手をかざしてなんとか致命傷は避けようとする。
ザシュザシュ
ん? 俺は何ともねぇな。切りつけた音はしたはずだが……。
見上げると、少し小さな影が立っていた。
「ご主人様! 助けに来ました!」
「お前達! こんな前線で何してる!?」
「これ回復薬です! 飲んでください!」
そこにいたのは、シフォンを始めとするリント、ハイド、ソフィであった。
皆、剣や杖を手に前線に出てきたようだ。
「せっかく鍛えてもらったんだ! 俺達だって戦えます!」
「お前達……ハッハッハッハッ! この程度で俺は負けねぇぞ! 回復薬は貰う!」
ゴクゴク飲み干すとパワーが溢れる。
「お前達のおかげで、さらに、気合が入ったぜぇ!」
リューから爆発的に黄色いオーラが噴出する。
「いっちょでかいの行くぜ!」
自然体でオーラを腕に溜める。
両手を引き、勢いよく突き出す。
「【破】ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ゴォォォォォズドォォォォォン
リューはシフォン達を置いていかないようにゆっくりと歩いて前に進む。
「私も行きます! ファイアーバレッド!」
ズドドドドドンッ
辺りの魔物に攻撃を与えている。
すると、魔物が襲いかかってくる。
ガツンッ
防いだのはハイドであった。
「僕が……守る」
「すげぇじゃねぇか! シフォン! ハイド! 俺も負けられねぇな!」
リューが楽しそうに言うとリントも前に出る。
「俺だって負けられない!」
ザシュザシュッ
リントは両手に短剣を持つ双剣スタイルのようだ。
「リントもいいぞ!」
「くっ!」
「ヒーリング!」
褒めた矢先から攻撃をくらってしまい、ソフィに回復してもらっている。
「はははっ! みんなすげぇじゃねぇか! ちゃんとチームとして機能してるぞ! オラァァァ」
ラリアットをして魔物を吹き飛ばし、数体をまとめて魔石に変えている。
「はぁ!」
「ファイアーバレッド!」
4人は懸命に魔物達に立ち向かい、1体、2体と次々に魔石に変えていく。
その前でバッタバッタと魔物を吹き飛ばし、叩きのめしていく。
「【全】 突進!」
ズドォォォォォン
「追いついたっすよ! リューさん! 前は俺達が引き継ぎます! 少し休んでください!」
「もう少しなんだな! 皆行くんだな!」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」」
「我らは遠距離から援護するぞ! 矢を放てぇ! 投石部隊! うてぇぇぇ!」
ズガァァァァン ズガァァァァン
次々と投石で攻撃していく。
「僕達も魔法で一掃しますよ!」
「「「「「ウォーターストーム!」」」」」
「「「「「サンダーストーム!」」」」」
ゴォォォォォバリバリバリバリッ
あっという間に魔物は減っていったのであった。
「あーあぁー。せっかく集めたのになぁ。やってくれたよねぇ。まったくぅ」
突如そこに現れたのは、頭から角を生やした魔人であった。
この魔人はいったい……




