第30話 ヤンキー、家族を拐われる
シルバーカップで優勝して後日、ギルドに行くとここ最近白竜が巷で話題になっていたらしい。
いい噂ばかりではないのが世の中というもの。
それぞれ色々言われていたようである。
「ちゃーっす! エリー、依頼あるか?」
「あっ! リューさん! 最近噂が飛び交ってますけど、大丈夫ですか?」
「あぁ。特になんにも聞こえてこねぇが?」
「なんか、ブレイブと喧嘩するとかしないとか?」
「なんでぇ。それは……あぁ。この前闘技大会の時に買ったらうちの家族を寄越せだの抜かして喧嘩売ってきたから買ってやったんじゃ!」
「なんだ。そういう事ですか! でも、気をつけてくださいね! 人数が多いクランだから悪い噂が沢山あるんです!」
「うちのクランには頼りになるやつが沢山いる。問題ねぇよ」
「それなら良いんですけど……あっ! リューさんこの前闘技大会優勝したじゃないですか? それを知った冒険者連盟の方がA級に推薦してくれたんですよ!」
「おう。なんだ? A級になれるのか?」
「はい! 昇級することになります! おめでとうございます!!」
「そうか。これで白竜もなめられることがなくなるといいんだけどな」
「そうですね! 喧嘩も程々にしてくださいよ?」
「おう! 今日は祝いをすることにするわ!」
そういうとギルドを出る。
「ララは何食いたい?」
「ふふっ。なんで私に聞くのよ? 自分のお祝いなんだから、自分が食べたい物を買ったら?」
「あぁ。確かにな」
店を見て歩きながら考えるリュー。
「やっぱりみんな肉が好きだから肉焼いて食う──────」
「ちょっとなんですか!?」
「いやーーーー!」
遠くで叫んでいる声が聞こえる。
リューとララは現場に行くともう居なくなっていた。
周りの人に聞いてみることにするリュー。
「なぁ? 何があったか知ってるか?」
「あぁ! あんた白竜の人だよな!? 拐われたんだよ! 白竜の女の子! バングルしてたから間違いねぇよ!」
「なに!? どっちに行った!?」
「あっちの方向だが、向こうにはブレイブの拠点とするクランホームがある。きっとそこに連れていかれたんだろう」
「わかった! ありがとな!」
おじさんにお礼を言うと、ララを振り返る。
「ララ、知らせに行ってくれるか? 俺は後を追う」
「えぇ。わかったわ! 無理しないでね!?」
「無理なんてしねぇさ」
後を追うリュー。走って向かっていると。
「リューさん! 拐われた子、あっちだよ!」
「リューくん! あっちに行ったわよ!」
「リュー! お前んとこの子があっちに連れてかれたぞ!」
街の人達は皆口々に情報を教えてくれる。
これは偏に白竜が普段いかに街の人達の一員として生活しているかと言う事である。
店で白竜が買い物をしてくれるというお店や、困っているところを助けられたというお兄さん。
白竜はこの街に根付いているんだなとリューは感じたのだった。
教えてくれた方向に向かうと、広い敷地に出た。
すると、建物の前にシフォンが座らされている。
「おおぉ! 1人で助けに来たのか!? 泣けるねぇ」
そこに居たのは闘技大会でボコボコにしたイワヨであった。
隣に知らない顔がいるがニヤニヤしている。
「お前よぉ、うちの副クラマスをよくも痛め付けてくれたな? この女を傷付けたくなければ、大人しくしろ」
すると、ドカッとあぐらをかいて座る。
「俺のことは肉なり焼くなり好きにしろ!」
「はっはぁ! いやーカッコイイよ! うん!」
ブレイブのクラマスはリューの元に近ずいてくる。
バキッ
顔面に靴の裏で蹴りを入れる。
それをみて抵抗しないとわかったイワヨはリューを執拗に殴る。
バギッ ゴスッ ドゴッ
「はっ! いい気味だなぁ? リューよぉ?」
何をされても歯を食いしばったまま動かない。
ドスッ ゴギッ ゴンッ
リューは頭から血を流し顔中が青アザで腫れてきていた。
「もう、気が済んだか? シフォンを離してやってくれねぇか?」
「お前よぉ、俺達がお前痛めつけただけで満足すると思ったか?」
「あぁん!?」
シフォンの元へ行き服を引っ張ると破きだした。
「やめてよ!」
「うるせぇ!」
バシッ
「シフォン! お前ら俺が手を出さなきゃ手ぇ出さねぇんじゃなかったのかよ!?」
「別に傷付けねぇなんて言ってねぇよなぁ?」
イワヨに話を振ると。
「そうだよ! お前バカだなぁ? これからこの子をひん剥いて楽しんでるとこ見せつけてやるからよ? あっ! 大人しくしとけよ? 動いたらこの剣でこの子刺しちゃうよ?」
「くっ。シフォン……」
「いやぁ…………」
「【アサシンアタック】」
ズシャァァ
「ぐわっ!」
イワヨは何者かに切られた。
横を見るとシフォンがいない。
「なに!?」
リューの横にシフォンがいてリューを抱きしめながら泣いている。
その後ろにはゾロゾロと白竜メンバーが現れた。
シフォンを助けたのはジャックであった。
「お前ら遅せぇよ」
ボコボコに腫らした顔で笑う。
「それにしても酷い顔っすねぇ」
「ワシは許せんのじゃ!」
「我らの家族を拐ったんだ! 覚悟は出来ているだろうな!? 賊め!」
「おでは、ゆるさないんだな!」
「ぼ、僕だって、家族に手を出されたら黙って居られません!」
各部隊それぞれ戦闘態勢になっている。
相手のブレイブもゾロゾロ建物から出てきたが、数だけは多かった。300人程居るだろうか。
「兄者は見てるだけでもいいんだせ? ワイ達は腸が煮えくり返ってる」
「馬鹿言え弟。おれは地獄の釜のように腸が煮えくり返ってんだよぉ」
リューは殴られていたのはなんのその。立ち上がってシフォンをララに預ける。
「ララ、シフォンを頼む」
「えぇ。任せておいて。痛めつけてやって!」
「おうよ」
両団体が睨み合う。
「貴様ら今日でこの世とはおさらばだ。白竜の家族に手を出したことを後悔してももう遅せぇ。覚悟しろよ?」
リューは白銀のオーラを纏っていた。
怒りにより、より気合いのオーラが高まったのだろう。
「──────行くぞオラァァァァァ!!」
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉ」」」」」」
「いけぇぇぇ!」
「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」」」」」」
24対約300の戦いである。普通に見れば24の方は負けるのだろう。
しかし、今回は白竜である。
一人一人の質が全然違うのである。
白竜はリューはA級、その他はB級なのだ。
対するブレイブはB級が2人でそれ以下が沢山いるのだ。
数だけが多いブレイブに白竜が負けるわけがなかった。
「オラオラオラオラァァァァ!!」
面白いくらい人が飛んでいく。
目に入った人を片っ端から殴りつけていっている。
「【波】ぁぁぁぁぁぁ」
白銀のオーラが凝縮され、極太のレーザーとして射出される。
ドゴォォォォォォォォゴゴゴゴゴ
建物前にいるイワヨめがけて放ったため建物も巻き添いにしてしまったようだ。
できた道をゆっくり歩きながら近づいていく。
殴りかかって来たやつを捕まえて顔面を殴りつけて地面に転がす。
それを繰り返していると。
誰も襲ってこなくなり、イワヨまでの道が出来ていた。
近くまで来ると、クラマスの後ろに隠れた。
「お前よぉ────」
「───────消えろ」
ドパァァァァァン
頭が跡形もなく消えた。
「ひぃぃぃぃ」
尻もちを付いて後ずさるイワヨ。
「口だけでビビって何もできねぇシャバ僧が……二度とてぇ出すんじゃねぇぞ? あぁ。出せねぇか。お前たち賊と同じ扱いだから死罪だわ」
そう言い残し後ろを振り向く。
「くそやろぉ!」
後ろから剣で刺しに来る。
グシャァァァ
裏拳で頭を粉砕する。
ブレイブだった者達は呆然として立ち尽くしている。
「お前達はやっちゃならねぇ事をした。罪を償うんだな? そして、もしまたこんな真似をしてみろぉ? お前らもこうなるぞ?」
去っていくリュー。
入れ違いに自警団の人達がやって来る。
「お前達は全員強制労働の刑だ!」
そう宣告され顔面を蒼白にして連れて行かれる元ブレイブの者達。
その後明らかにされたが、数々の犯罪に手を染めていたらしく、指名手配犯になるような位の悪だったようだ。
それが今まで判明してなかったことがまた問題になり、冒険者のクランには定期的に調査が入ることになったのであった。
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