第29話 ヤンキー、実力を示す
『それではぁ、決勝トーナメントを始めたいと思います!』
「「「「「ワァァァァァァ」」」」」
『第1試合を始めたいと思います! 試合、開始ぃぃぃぃ!!』
グレンの試合が始まった。
相手は魔法使い。肉弾戦が得意のグレンには苦手な部類であった。
「エアーバレッド」
ドパパパパパッ
グレンは円を描くように避ける。
「サイクロン」
ゴォォォォォ
これには逃げ道がない。
大規模魔法をされると逃げ道がない。
こういったところで魔法使いでも勝ち上がれる勝因になっている。
『あぁぁぁぁーーーーっとぉぉ! グレン選手絶体ぜつめぇぇぇいいいぃぃぃーーー!!』
魔法が切れると、そこには闘技場事態に手で穴をあけ、そこに掴まって耐えていたようだ。
「【全】 いくっすよぉぉ!!」
魔法を放った後の硬直を狙い、即座に距離を詰めて迫る。
慌てて魔法を放とうとする相手。
「ファイ────」
「【平撃】」
最大にビルドアップした身体の掌の面で魔法使いを叩く。
ドパァァァァン
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
場外へ押し出しグレンの勝ちとなった。
『きまっっっったぁぁぁぁーーー!! グレン選手、魔法を耐え抜いてからの隙をついての一撃、見事でしたぁぁぁ!!』
「「「「「ワァァァァァ」」」」」
またグレンは頭をペコペコしながら闘技場を後にする。
◇
『続きまして第3試合を始めたいと思います!! それではぁぁ、試合、開始ぃぃぃぃ!!』
ダインの試合が始まるが、今は待合室の一件で虫の居所が悪い。
なのに、相手は空気が読めず、ダインを挑発してしまう。
「なぁ、白竜ってホントにつえぇのかよ? クラマスがシルバーカップに出てるようじゃあ、たかがしれてるよなぁ」
「あぁ? てめぇに兄者の何がわかんだよ? ワイでもわからなかったのによぉ」
「だってクラマスがB級止まりのクランがA級がクラマスの我らがクラン【ブレイブ】に勝てるわけねぇ」
「お前がA級でもあるまい。口だけか。情けない」
「なんだと!? この業物の剣がわかんねぇのか!?」
「剣だけに頼っていては、実力もその程度」
「うるせぇ! 受けてみろ! おらぁぁ!」
「我流……【柳切】」
ズバァァァァァン
相手の件を柳のように受け流し、切り裂くカウンターの技であった。
脇腹を切り裂き、相手が倒れる。
「救護を頼む!」
救護の係の者が走り寄り回復薬をすぐに飲ませる。
すると傷口が塞がっていく。
ダインも頭にきたようで峰打ちにしなかったようだ。
(ワイもあの程度の挑発で頭に血が昇るなんざ、未熟だな。まっ、兄者のことを馬鹿にされたんだ。しかたねぇか)
◇
『それではぁ、決勝トーナメント最後の1回戦です! 注目の白竜! リュー選手! 対するはぁブレイブ副クランマスターのイワヨ選手です! それではぁぁぁ! 試合ぃぃぃぃ開始ぃぃぃぃ!!』
「おい! ブレイブの副マスターと聞いてビビったか!? 勝てねぇと思ったんじゃねぇか? おれはなぁ、大規模クランを実質仕切ってるようなもんだ。ハッハッハッ! 驚いたか!? 賭けをしなくて良かったと思ってるかぁ? ビビって賭けにも乗らねぇ白竜のクラマス、リューさんよぉ? 俺だったら恥ずかしくてクラマスを名乗れねぇよ。白竜のメンバーはビビりばっかりなんだろうなぁ? どうした? ビビって何も言えねぇかぁ!?」
「ノウガキはいいからかかって来いよ? あぁ。話すことしか脳がねぇから掛かってこれねぇのか。これならかかってこれるか?」
両手を開いて生身のまま構えもしない。
「お前ぇぇぇ! 後悔すんじゃねぇぞ!」
剣を構え振り下ろす。
ザンッ
肩口から腰にかけて切られる。
しかし、血は出ない。
筋肉で止血している。
ガシッ
頭を掴む。
ゴスッ! ゴスッ! ゴスッ! ゴスッ!
チョーパン(頭突き)連打である。
「ふがっ! 鼻が……」
ガヅッ! ガヅッ! ガヅッ! ガヅッ!
闘技場の床に顔面を叩きつける。
「ま、まいっ……」
「【撃】」
ズガァァァァァァァン
場外の壁に叩きつけられてパタリと芝生に倒れ込む。
すると、救護班が駆けつける。
「俺は白竜の頭だ。クランメンバーを舐められて黙っては居られねぇ。俺のこと言うのは勝手だが、家族のことまで汚されるのは我慢できねぇわ」
リューの元にも救護班が来て回復薬を渡す。
ゴクゴク飲み干す。
『これは、衝撃の試合でしたが、勝ったのはぁぁぁリュー選手だぁぁぁぁぁ!』
シーンとした会場を去るリュー。
会場は恐怖の余り無言になってしまっている。
しかし、闘技大会とは本来死なせないように手加減はしているが、怪我など当然の様にあるものなのだ。
グレンは次の試合、速攻で片付けた。
白竜を舐められるのが耐えられなかったのだ。
次はダインとリューの試合になる。
『続いてはぁぁぁ、準決勝ぉぉぉ! 白竜同士の戦いです! ダイン選手対リュー選手です!』
「「「「「ワァァァァァ」」」」」
観客は元気を取り戻したようだ。
『それではぁぁぁ! 試合、開始ぃぃぃぃ!!』
「兄者、白竜最強ってのを見せてくれよ。舐められたままってのは気がすまねぇ」
「あたりめぇだ。全力でかかってこい」
「ワイは一撃で行くぜぇ」
「俺も全力でいってやる」
「我流……」
青いオーラの切り上げの斬撃と黄色いオーラの打ち下ろす拳が激突する。
「【昇竜】」
「【瞬速撃】」
ッッッッズドオオオォォォォォォンッッッッ
客席まで衝撃波が襲う。
ドサッ
倒れたのは……ダインであった。
「さ……すが……あに……じゃ」
「紙一重だったぜダイン」
救護班がダインに駆けつけ回復薬を飲ませる。
しかし、ダメージが大きかったのか起き上がれず担架で運ばれていく。
「「「「「ワァァァァァァァ」」」」」
『決まりましたぁぁ! 凄まじい一撃でしたねぇ! 衝撃がここまで伝わってきました!』
◇
『さぁ、それでは決勝戦を始めたいと思います! なんと決勝戦は、どちらもクラン白竜の選手です。筋肉を自在に操る男ぉぉぉグレンっっ選手ぅぅぅぅ! そして、強い上にイケメンというずるい男ぉぉぉ、リュー選手ぅぅぅぅ!!』
「「「「「ワァァァァァァ」」」」」
『それではぁぁぁ! 試合ぃぃぃぃ開始ぃぃぃぃ!!』
「自分も全力でリューさんと戦うっす!」
「あぁ。かかって来い。グレン」
「行くっす! 【全】」
二回りほど大きくなったグレンがリューを襲う。
「【防】」
ガキンッガキンッ
「硬いっすねぇ! これならどうですか!? 【連撃】っす!」
「【瞬】」
ドガガガガガッッ
「対応してくるっすか……なら重いの行くっすよぉ!」
ダンッ
高く跳躍したグレンは、筋肉の分増えた体重を乗せて拳を繰り出す。
「【重撃】っす!」
「【撃】」
ズドオオオォォォォォォン
ビリビリッと大気が揺れる。
観客席の周りも会場が震えている。
「これでもダメっすか……次で決めるっす!」
「よーしっ! こいっ! グレン!」
「【全身全霊】」
「【天上天下】」
カッ………………ズガァァァァァァァァン
衝撃でひかり、後から音が来た。
空の雲も割れている。
ドサッ
観客は息を飲み……闘技場に目を向けた。
すると、立っていたのは……
『しょぉぉぉしゃはぁぁぁぁぁ………………リューーーーー選手ぅぅぅぅぅぅぅ』
「─────ワァァァァァァァ」
今回も語り継がれる名勝負となったのであった。
しかし、これで白竜の実力は示された。
しかし、その実力を計れない愚か者もこの世にはいるようだ。
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