第28話 ヤンキー、シルバーカップに出場する
『それではぁぁ! これより、シルバーカップの予選を開催したいと思います!』
白竜メンバーはダンジョン攻略をして全員がB級に上がった。
それからの日々は色んな依頼を受け経験値を伸ばすことに費やした。
そんなある日、エリーから言われたのだ。
また闘技大会が開かれると。
すると、白竜メンバーはリュー、ダイン、グレンが参加することになった。
ララは、前回優勝者だがリューに負けたので出る必要は無いだろうと言い辞退したのであった。
「今回も上手くみんなバラけたな。でも、ダインとは準決勝で当たるな」
なんとも余裕なリューなのであった。
今回も8ブロックに分けられており、それぞれ第2ブロックにグレン、第6ブロックにダイン、第8ブロックにリューとなっている。
『それではぁぁ! 第1ブロックから始めます! バトルロイヤル開始ぃぃぃぃ!!』
遂に始まったシルバーカップ。
果たして優勝するのは誰なのだろうか。
第1ブロックが長引いていたが、いよいよ第2ブロックである。
『それではぁぁ! 第2ブロックを始めます! バトルロイヤル開始ぃぃぃぃ!!』
こういう時、白竜の証が逆に目立ってしまうのだ。
「白竜を狙えぇぇぇぇ!!」
「「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」」
白竜はかなり知名度が高くこの辺では知る人が居ないくらいに有名になっていた。
その人達が付けている強敵の証。
集中攻撃に合うのは必然であった。
「おぉ。清々しい位にプライドがないっすねぇ! かかってくるといいっす!……【腕】 オラァァァァ」
群がってくる冒険者に対してグレンはただ腕を開き、その場で回転する。
腕を増強しているグレンのそれは、遠心力も加わり物凄いパワーを発揮する。
ズガガガガガガガガ
人が宙を舞う。ピューピューと場外に飛んでいく。
気が付くと、立っているのはグレンただ1人であった。
『あーーーーっとぉぉぉ! きぃぃまったぁぁぁ! 最後に残ったのはグレン選手です!!』
「「「「「ワァァァァ」」」」」
ペコペコしながら闘技場から降りて行くグレン。とても勝者とは思えないくらいペコペコしている。
見た目が赤髪のドレッドのような髪に細マッチョな強面なだけに不思議な光景である。
◇
『続いてはぁぁぁ! 第6ブロックのぉぉぉ始まりです! それではバトルロイヤル開始ぃぃぃぃ』
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」」
『なんと、ここでも白竜のダイン選手が集中攻撃を受けております!!』
ダインに群がる冒険者。
「我流……【八咫烏】」
ズババババババババンッ
一振で2人飛び、二振目で3人飛び、どんどんと切り飛ばしていく。
切り終わった隙を狙われる。
「今だ!」
技の終わりの硬直を狙われる。
ダインは惜しくも予選敗退か。
そんな空気になった。
─────「我流……【円刃】」
技終わりで硬直になると思われたが振り終えだ勢いのまま今度は回転の力に変えた。
ズパァァァァァァン
「峰打ちだ」
全員が場外に出てしまっていた。
『きぃぃまったぁぁぁ! このブロックもぉぉぉ白竜のメンバー、ダイン選手の勝利です!』
「「「「「ワァァァァァァ」」」」」
ダインは手を挙げながら闘技場から降りて行く。グレンとは違うようだ。
◇
『続いてはぁぁぁ、第8ブロックのバトルロイヤルを開始しまぁぁぁす! それでは、試合開始ぃぃぃぃ』
シーーーーーン
誰も動こうとしない。
それは、そうだろう。前回優勝者を下したリューがいるのだ。
「ファイアーストーム!」
誰かが周りを巻き添いにしながらリューに魔法を放ってきた。
「おい! 誰がやった! 前回の闘技大会見てなかったのかよ! それは効かねぇんだって!」
「えっ!?」
すると爆炎の中からオレンジ色のオーラを纏って歩いてくる。
「【速】」
ダダダダダダダダダダッ
パパパパパパパパパパッ
リューを見失う冒険者達。
「おい! アイツどこいった!?」
「しらね───おわっ!」
ドゴッ
混乱しているうちに1人、また1人と倒れていく。
最終的に立っていたのは、やはりリューであった。
「ここでも、勝ったのはぁぁぁ白竜のクランマスターのリュー選手だぁぁぁぁ! 前回の優勝者を下した実力者はやはり強かったぁぁぁぁ!」
「「「「「ワァァァァァァァァ」」」」」
手を挙げて声援に答えるリュー。
「リューさんかっこいぃぃぃ!」
「リューくんこっち向いてぇ!」
「リューさん頑張れぇぇー!」
色々な声援が飛び交っている。
『顔の良さも相まって、ファンが増えているリュー選手です! しかし、リュー選手といえば、前回の闘技大会でララ選手とエキシビジョンマッチを行い、勝ったことでララ選手のハートを射止めた男です! もうこれは後世に語り継がれることでしょう!』
「それは、今言わなくていいわよ!」
「余計なこと言わないで!」
「なんで、思い出させるのよ!」
『あぁーーっと! 凄いブーイングだぁぁ! すみませんでしたぁぁぁ!』
控え室に戻ると勝ち残った人達がいた。
すると、話しかけてきた男がいた。
「なぁあんた、白竜ってクランのクラマスなんだろう?」
「あぁ。そうだが?」
「この前街でそのバングルしてる女の子を見かけてさぁ、可愛かったんだよなぁ。もし勝ったら俺っちにくれない?」
「俺は、家族を売るようなことはしねぇ」
「へぇ? 有名なクランのマスターは負けるのが怖くて賭けにも乗れないってのかぁ? 白竜の評判が落ちるんじゃないかなぁ?」
男がそこまで言うと、ダインが我慢しきれず飛び出してきた。
「おい! お前ふざけた────」
「ダイン」
言葉を遮りリューが手で制す。
「俺は、何をされても家族は売らねぇし、白竜の評判はメンバーの皆が築きあげてきたもんだ。そうそう悪くはならねぇさ」
「ちっ! 俺っちの誘いを断って、後で後悔しても知らねぇぞ?」
「ノウガキはいいから、試合で決着つけよぉやにぃちゃん」
「ふんっ」
部屋の端に行く男。
「兄者、賭けに乗ってコテンパンにすれば良かったねぇか!?」
「賭けに乗るってことは家族を賭けるってことだろ?」
「俺にぁそれはできねぇ」
「そ、そうだけどよぉ」
ダインは納得いってない様であるが、グレンは違った。
「リューさん、さすがの判断っす。自分は賭けに乗っていたら見損なうとこだったっす。けど、信じてたっす。俺達を救ってくれたリューさんはそんなことはしないと」
「あたりめぇだろ?」
「はい。でも、試合では本気で行くっす!」
「おう」
グレンはリューを信じていてよかったと、この時改めて思ったのだった。
ダインは自分が恥ずかしい思いをしていた。
まだまだ自分は未熟なのだと思い知らされたのだった。
(グレンよりワイの方が兄者を分かってなかったってのか……ワイは……まだまだ兄者を理解出来ていなかったみてぇだ。よく見て学ばねぇとな)
ダインはリューの弟として支えてあげれれば良いと思っていた。
しかし、この男のようになりたいとこの日、憧れを抱き、目標とするのであった。
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