第27話 ヤンキー、白竜の証を配る
「ララー! 出掛けるからちっと付いてきてくれねぇか?」
「勿論よ!」
祝勝会を終えた後日、リューはララと街に繰り出していた。
護衛依頼の前に頼んでいたアクセサリーの受け取りである。
「ちゃーっす!」
「あら、待ってたわよぉん」
アクセサリーショップの店長さんはオジサン……ではなく筋肉ムキムキスキンヘッドのお姉さんなのだ。
「これが、白竜のバングルよ?」
「おぉ。よくできてんなぁ。ありがとな」
「リューちゃんの頼みだもの。いいのよぉ。ララちゃんが羨ましいわぁ。こんないい男捕まえて!」
「ふふっ。私は幸せ者よ」
ララがリューにしなだれかかり、店長に見せつける。
「もぅ! 見せつけちゃって! じゃあ、これいっぱいあるから二つに分けて渡すわね。」
「おう。ありがとよ」
「それにしてもリューちゃんのだけ別のデザインとかにしなくて良かったの? クラマスなんでしょう?」
「あぁ。いいんだ。みんな家族だ。同じのを身につけてた方が一体感が出るだろ? 俺だけ別のをつけてたら気取ってるみてぇで嫌だからよ」
「そっ。リューちゃんらしいわ」
「だろ? んじゃあ、またな!」
「あっ! リューちゃん! これ忘れてるわよ!?」
「おう。そうだった。いけねぇいけねぇ」
店長から受け取ると、ララに渡す。
「ララ、アクセサリー欲しがってたろ? これ、付けてくれ。魔力が増幅する様に魔石が埋め込まれてる指輪だ。」
「えっ!? 嬉しい……」
涙目になるララ。
「貰っていいの? あぁ。サイズが変わるように魔道具になってるからどの指でも良いぞ?」
「うん! じゃあ、ここにするわねぇ!」
迷いなく左の薬指に付けた。
この世界でも、左の薬指は恋人が付けたり花嫁が付けたりと特別な意味を持つらしい。
アクセサリーショップを出ると一直線に屋敷に戻る。
ララは浮かれ気分である。
「リューくん、だから今日はわざわざ私を呼んで来たのね!?」
「あぁ。2人だけの時の方がいいと思ってな」
「ふふっ。ありがとう!」
リューの腕に絡みつきながら歩いて屋敷に戻る。
戻ると、バルトに指示を出す。
「バルト、すまねぇが、戦闘部隊を集めて貰えるか?」
「かしこまりました」
玄関前のホールに集まる戦闘部隊。
使用人として働いている面々も不思議そうに見ている。
「集まったか?」
「「「「「おす!」」」」」
「これから、白竜の証を渡す。それを普段から腕につけるようにしてくれ」
「「「「「おす!」」」」」
「じゃあ、配るぞぉ」
0番隊、1番隊と順番に配っていくが、バングルはだいぶ余っているようだ。
「兄者、沢山余ってるのは何でだ?」
「あぁ。今から屋敷の使用人達にも配り歩くんだ」
「兄者が自らか? 集まってもらえばいいじゃねぇか!?」
「いや、屋敷の使用人達はみんな働いてんだからその場に行って渡すんだよ」
「そ、そうか。わかった」
ダインの考えはこの世界のクラマスの常識からしたら当然の考え方だろう。
しかし、リューはみんな家族だという考えでいる。クラマスだからと無駄に偉そうにするのは嫌なのである。
最初に配りやすいバルトに会いに行く。
「バルト、これが白竜の証だ。身につけるようにしてくれ」
「このようなものを私に?」
「あぁ、使用人達にも配ろうと思って全員分用意したんだ」
「なんと、そのようなお心遣い、有難う御座います」
「まぁ、そう畏まるなよ! じゃあな!」
「あっ! お待ちください! 使用人達のいる所は私が全部把握しております。ご案内しますよ?」
「いや、いいんだ! たまには屋敷をブラブラしてぇんだ。見つけた順に渡すからよ」
「はぁ。わかりました」
去って行くリューをバルトは不思議そうに見ていたが、これまでの事を思い出し納得する。
そういえば、そういう人であったなと。だからこそ、こんなに人が慕い付いて行くのだろうなと。
「まずは、分かりやすい使用人室にでも行くかぁ」
コンコンッ
「はい? 誰です?」
ガチャ
「あぁ、休憩中すまねぇな」
「ご、ご主人様!!」
ガタガタガタッ
奥からも慌てる音が聞こえる。
「な、何故このような所に!?」
「あぁ、今な白竜の証を配っててな。これをみんなに付けて欲しいんだ」
「こ、このようなものを私達にですか!?」
「みんな白竜の一員だろう? みんなのおかげで俺達は美味い飯食えて、綺麗な家に住めてんだからよぉ」
「そのようなお言葉、勿体のうございます」
嬉し涙を流しながら話すメイド。
奥にいた複数のメイドと使用人にもバングルを渡す。
「私達一同は、スラムから救っていただき、こんなに立派な住まいを得て仕事にお給金まで……本当に感謝しきれません……ご主人様のおかげてございます」
メイドと使用人達が一斉に深々と礼をして感謝の言葉を述べる。
「おう。まぁ、成行きだったが結果良かったと思ってる。こんなに大勢の家族が増えたんだ。ご主人様ってのも小っ恥ずかしいんだがな。まぁ、気楽に働いてくれよ」
「有難う御座います! 誠心誠意働かせて頂きます!!」
「ありがとよ。じゃあ、休憩中悪かったな」
手を振り使用人室を出ていくリュー。
「あとは、適当に見て回るかな」
ウロウロしながら掃除中のメイド、料理中の使用人、庭を手入れ中の使用人等、色んなところにいる使用人に声を掛け、バングルを配り歩いた。
配り歩いていた時、少年2人と少女2人が働いていた所に遭遇した。一生懸命に、白竜の戦闘部隊の靴を磨いていたのだ。
「おう! ご苦労さん! ちょっと手を止めて話聞いてくれねぇかな?」
「ご主人様!!」
ハッとしたように4人は直立した格好になる。
「そんなにかしこまる必要はねぇよ」
「で、でも、ご主人様の前で失礼はダメだって言われてます!」
「大丈夫だって。これを渡しに来たんだよ」
バングルを4つ出す。
「こ、これって戦闘部隊に配ってたやつですよね!?」
「あぁ、これは白竜の証だ。お前達も白竜だ。これ付けてくれ」
「あ、有難う御座います!!」
畏まる少年たちを見て頬が緩む。
「お前達、名前は?」
「俺は、リントです!」
「僕は……ハイド……」
「私は、シフォンです!」
「あたいは、ソフィ!」
「ハッハッハッ! 元気で良いな! 仕事は大変か?」
「いえ、仕事できることがこんなに素晴らしいとは思いませんでした! お給金も貰えるし、何より戦闘部隊の物に触れるのが嬉しいです!」
「いつも靴磨いてくれてんのか?」
「はい! 俺達はこの仕事が1番好きです! 将来は俺も戦闘部隊に入りたいと思ってます!」
「おう! 一緒に戦おうな」
「はい!」
「邪魔したな。頑張ってくれ」
「「「「はい!」」」」
(この世界はあんな歳からでも、働かなけりゃ生きて行けねぇ。厳しい世界だがこうやって仕事を与えることでやりがいを見出してくれる人達がいるんだ。俺はもっと上に行かなきゃならねぇ。アイツらの希望になるんだ)
全ての使用人に配り終えたリューは自分の部屋に戻る。
この事があってから、白竜の使用人達と戦闘部隊の隔たりが少し無くなったように感じるリューなのであった。
あの子供達のお話は、もう少し先のお話である。
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