第23話 ヤンキー、恋仲を取り持つ
王都に着くと、商人達と別れる。
「明後日出発だろう? それまでどうすっかなぁ」
リューが言っていると王族の使者が現れた。
「リュー様。少しお時間よろしいでしょうか?」
「おう。今暇だからな」
「姫様を助けて頂いた件で、お礼がしたいとローグ様がお呼びです。」
「ローグのおっちゃんがかぁ。しゃあない、行くか」
「来てくださいますか!?」
「あぁ。姫様に会いたい奴もいるみたいだしなぁ」
ジェイクを見るとビクッッとして固まる。
「それでは、話が早いですな! 早速ご案内致します」
◇
謁見の間にて、ローグの前に立っているリュー。
「ローグのおっちゃん、礼はいらないぞ? この前の内の弟共の事で借りもあるし!」
「そういう訳にもいかないだろうが。我が娘が盗賊に襲われていたらと思うと胸が苦しくなる……それを助けだしてくれたのだ! 褒美を出さなければ、王族の名が廃るわ!」
「そうか? 俺は金でいいけどよぉ」
「私もお金でいいわ」
「ワイも金でいいぜ」
リューとララ、ダインは示し合わせたようにお金を要求する。
「ぼ、僕も……」
「ああ! そういえばお姫様にもう一度会って話したいってジェイクが言ってたっけなぁ!」
ジェイクも報酬を金にしようとするが、リューが口を挟む。
「そうねぇ、ジェイクはお姫様とお茶するのを報酬にしてもらったらいいんじゃないかしら? 王様、どうですか?」
王は不思議そうに肯定する。
「そんなことでよければ、俺はいいが、ちょっと待て。メアリーを呼んで来てくれ!」
王が頼むとお姫様を呼びに走る。
「お父様、お呼びですか?」
「呼んだのは、このメアリーを助けてくれた者達に報酬の話をしていたんだがな、一人メアリーとお茶がしたいらしいのだ。本人に聞いた方がいいと思ってな。どうだ?」
「それは、光栄ですわ! 是非、お茶をしたいですわ!」
お姫様が喜んでいると、ジェイクは顔を赤くして固まっている。
「だってよぉ! よかったなジェイク!」
「ほ、本当にいいんでしょうか?」
「いいんだってよ!」
「は、はい!」
固まっているジェイクに変わり、リューが聞く。
「それで、何時がいい? 俺達は明後日出発なんだよ」
「では、明日の10時頃ではいかがでしょう?」
メアリーが答える。
「あぁ。それで頼みます。いいよな? ジェイク?」
「あっ! は、はい!」
「じゃあ、今日は失礼するぜ!」
城を出て宿を探しに行く。
「兄貴! なんであんな事言ったんですか!?」
「かわいい弟が女に惚れたんだ。お節介やきたくなるっつうもんよ!」
「で、でも、王女様ですよ?」
「別に惚れるのはいいだろうがよ。後は、明日が勝負だな! そうだ! 正装を買ってやろう!」
「それはいいわね! 買いに行きましょう!」
「弟の晴れ姿だ!」
リュー、ララ、ダインは完全にこの状況を楽しんでいるが、ジェイクはというと緊張していた。
「あぁ。王女様とお茶会だなんてどうしよう。マナーは一通りわかるけど……ブツブツ」
ブツブツ言っているジェイクを無視して服屋へ向かう一行。
「でもよぉ。冒険者として会うんだから、別に貴族様みたいなやつじゃなくていいよなぁ」
「確かにそうね。冒険者としてビシッとしてた方がいいわね」
「ローブは問題ねぇが、中の皮鎧だな」
「そうねぇ。かなり年季が入っているしねぇ」
「じゃあ、防具屋だな!」
「えぇ! さぁ! 行くわよジェイク!」
リューとララは楽しそうにジェイクを連れまわす。
防具屋に着くと、性能のよさそうなものを見る。
「これなんかどう? ローブに入っている魔法と同じような魔法が入っているマジックアイテムよ?」
「それにするか! おっちゃん! これいくら?」
カウンターにいる店主に声を掛ける。
「それか? マジックアイテムだから高いぞ? 白金貨1枚と金貨50枚だ! 払えるのか?」
「これでいいか?」
白金貨2枚を出す。
「お、おう。すまなかった。金貨50枚のおつりだ」
「おう。どうもな」
防具屋を後にするリュー達は宿をとることにした。
「少しいい所でもいいよな?」
「えぇ。2人部屋よ?」
「おう。ダインとジェイクは1部屋ずつにするか?」
しなだれかかるララを抱き留めダインとジェイクに聞く。
「ワイも偶には1人部屋がいいぜ」
「そうだよな。じゃあそうしよう」
少し高めの宿を3部屋取り、リュー達の部屋に集合する。
「ジェイク、これ着てみろよ」
「はい!」
その場で皮鎧を脱いで着る。
「ど、どうですか?」
「んー、新しい感があるが、前のよりゃあビッとしてんじゃねぇか?」
「そうねぇ。もう少し使い込めば、もう少し冒険者らしさが出るんじゃないかしら?」
リューとララからは好印象であったが、ダインはちょっと違うらしい。
「ワイは前のみたいに使い込んであった方が歴戦の猛者っぽい気がするがなぁ」
「でもよぉ、王女様だぜ? みすぼらしいのはやめた方がいいだろうよ」
「そういうもんかねぇ」
ダインも弟をよく思ってもらいたいが為の意見なのだ。
「まっ! 明日に備えて飯食って寝ろジェイク!」
「は、はい!」
◇
次の日、宿の食堂で集まると、ジェイクの顔が酷いことになっていた。
「ジェイク、お前、大丈夫か? 寝てねぇのか?」
「緊張して寝れませんでした……」
ジェイクが目の下にクマを作っていた。
逆にツヤツヤしているララ。
「なんでそんなに緊張してるのよぉ。最初なんだから気楽に行けばいいじゃなぁい」
「僕は慣れてないんでそうもいかないんですよ!」
ジェイクが反論する。
「まぁ、飯食って、元気だして行ってこいよ!」
「えっ!? 一緒に来てくれないんですか!?」
「なんで、俺達が行くんだよ? お茶に誘われたのはジェイクだけだろ?」
「えぇぇぇ!!」
「まぁ、大丈夫だって! いつも商人達と接するみたいに接してれば良いじゃねぇか」
「うーん…………………………………………」
「おい! わかったよ! 王城までは行ってやるから!」
「本当ですか!?」
「しゃーねぇなぁー」
「有難う御座います!!」
◇
王城にて
「ローグのおっちゃん、ジェイクが付いてきて欲しいって言うから付いてきたけど、王女さんとはジェイクがお茶するからな?」
「構わんよ。俺は今日は何も無いから1杯やらねぇか?」
国王から誘われたリューは
「おぉ! いいのか? ジェイク! 行ってこい!」
「は、はい! ジェイク! 行ってきます!」
「大丈夫か? あいつ?」
リューが呟くと
「慣れるまでじゃないかしら? 慣れれば大丈夫よ」
「そうだな」
ララが言うと、リューもあまり気にすることもないかと思いゆっくりする事にする。
◇
ジェイクはというと
「ご案内します」
「あっ、はい!」
歩いていくとテラスに案内される。
そこには、パラソルの下にドレスを着たアメリがいた。
アメリの前に跪くジェイク。
「この度は、このようなお茶会にお招き頂き有難う御座います」
礼儀に基づきそうしたのだが
「やめてください、ジェイクさん! 今回のお茶会は私を助けて下さった報酬とのこと。命を助けられたのは私なのですから、そのような事はいりません!」
「し、しかし、王女様にそのような……」
「王女ではありません!」
「えっ!?」
「アメリです!」
「あっ! はい! アメリさん」
「ふふっ。良いでしょう。ジェイクさん」
「はい! それじゃあ、失礼します」
ジェイクが椅子に座ると、アメリは畏まって頭を下げた。
「この度は、私共を助けて下さり、本当に有難うございました! ジェイクさん達がいなくて、盗賊に捕まっていたかと思うと、ゾッとします」
「たまたまですが、助けることが出来て良かったです!」
「えぇ! 本当になんとタイミングの良かったことか! これは、運命ですね!」
可愛い笑顔でそう言われたジェイクは頭がパンクしそうになる。
「う、うん……めい」
色々妄想してしまっているジェイク。
「お茶を飲みながら少しお話を聞かせてください」
「は、はい」
紅茶を飲むジェイクだが、初めて飲んだ紅茶に驚く。
「お、美味しい」
「本当ですか!? 今日は私が入れてみたのですが……」
「すごく美味しいです! こんな美味しいお茶、初めて飲みました」
「そう言って貰えると凄く嬉しいです」
頬に両手を当て、頬を赤らめるアメリ、満更でもないようである。
「あの、ジェイクさんは冒険者なのですよね?」
「あっ、はい! まだ、C級ですけどね」
「まぁ! C級といったら中堅じゃないですか! その若さで凄いですわ!」
「いやぁ、兄貴が凄いだけで、僕はそんなに凄くないんです」
「でも、私には助けてくれたジェイクさんがとてもお強く見えました……」
「そ、そうですか?」
「はい。冒険者のこと、教えて下さいますか?」
「は、はい!」
◇
こうしてジェイクは緊張しながらも、昼くらいまで話が盛り上がり、姫様との絆を深めたのであった。
お茶会が終わり、一緒に王様の所に行くと、王様とリュー、ララ、ダインが出来上がっていた。
「戻りました!って兄貴! 飲み過ぎですよ! まだ昼ですよ!」
「あっ! ジェイク様! アメリ様とは上手く話せたのかぁ? おいぃー!」
肩を組んでくるリュー。
「ちょっと! なんで昼間からそんなに飲んでるんですか!」
「ジェイクくん! 娘が欲しいなら、俺を倒してからにするんだな!!」
王様もいい感じに出来上がっていた。
「お父様!! 飲みすぎです! いい加減にして下さい!!」
そう言うと王様を寝室へ連れていくアメリ。
「ジェイクさん、リューさん達も客室に泊まっていってください」
「いいんですか? なんか、すみません!」
「お父様のせいですから、いいんです!」
リューも連行される。
それに続くララとダインもできあがっていた。
皆で王城に泊まることになり、あっという間に帰る日になるのであった。
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