第22話 ヤンキー、再び護衛をする
飲み明かした後に、休日をしばらく取り、活動を再会しようとしていた。
「リュー様、今日のご予定は?」
リューの部屋でバルトがリューの予定を聞く。
最近の日課であった。
前日までは「休む」で終わりだったのだが。
「あぁ。今日は依頼があるか聞いてこようと思う。また、白竜で動こうと思ってな」
「左様でございますか、メンバーを集めますか?」
「あぁ。頼むわ」
「畏まりました」
礼をし、部屋を出ていく。
暫くするとガチャッとドアを開けられる。
「入るぞ?」
ダインが先頭にやってきた。
「集まってもらって悪いな。今日は依頼があるか見てくるが、あれば明日から護衛依頼に行こうと思う。そうすれば、メンバー皆でC級だろう?」
「そうっすね! 皆でやれるなら心強いっす! 正直、貴族とか商人の相手をできる気がしないっす!」
グレンが正直な気持ちを話す。
「そうだろう!? だから、ジェイクが居るんだよ! なぁ!? ジェイク!?」
「僕は、その為だけに居るんでしょうか!?」
「いやいや、そういう訳じゃねぇが?」
「こういう時だけいいように使って!」
「でもよぉ、ジェイクしか居ねぇんだぜ? こんなことできるのはよぉ」
「わ、わかりましたよ」
頭を掻いて照れながら顔を赤らめている。
「ふふっ。単純ねジェイク」
小声でリューに話しかけ笑うララ。
「だがよ、ジェイク頼みなのは事実だからなぁ」
「まぁ、そうね。私も嫌だし、皆いやらしい目で見るのよねぇ」
「それだけ、ララが魅力的なんだろう?」
「ふふっ。ありがと!」
ララとリューがラブラブしていると、恐る恐るダインが声をかけた。
「兄者! では、まずギルドに行って見てからか!?」
「あぁ、そうなる。行った結果はまた連絡する」
「「「「「了解!」」」」」
皆が部屋を出ていった後に、リューも出る。
◇
「おーっす! エリー! 護衛依頼とかねぇかな?」
「おはようございます! リューさん、タイミング良すぎますよ? どっかで見てます? 私の事?」
「見てねえって……」
「じ、冗談ですよ!? 丁度、商人達が合同で王都に行くらしくて、護衛依頼が来てたんですよ!」
「おぉ! そりゃ丁度いいな!」
「でも、5個位の商会が固まっていくんですよねぇ……」
「白竜で受けるぜ? それなら、人数足りるだろ?」
「ああ! 白竜の人数なら丁度いいです! しかも、護衛依頼受けたらみんな昇級できるじゃないですか!?」
「なっ? 丁度いいだろう?」
「タイミング最高ですね! 白竜で受けることにしましょう! 手続きしておきます! 出発何時でも良いらしいですけど、明日とかで大丈夫ですか?」
「あぁ。いいけどよ、どこの商会がくるんだ?」
「あっ! 筆頭がミラー商会だから、大丈夫ですよ!」
「あぁ。あのおっちゃんか! なら、知ってるし問題ねぇわ」
「ですよね? じゃあ、連絡しておきます!」
「おう!」
ギルドを出て、アクセサリーショップによる。
「あら? 私になんか買ってくれるのぉ?」
ララが嬉しそうにすると
「それは、また今度な。今日は白竜のバングル作りに来たんだ」
「バングルって腕に付けるやつ?」
「あぁ、貴族街に出入りする時にケビンが分かんなくて困るだろ? 何にするか考えてたんだけどな、バングルが1番邪魔にならねぇかなって」
「いいわねぇ! どんなデザインにするの?」
「俺ぁ簡単なやつがいいと思ってよぉ、黒いバングルに白いドラゴン描いてもらおうかと思ってよぉ」
「うん! いいと思うわ!」
「よっしゃ! じゃあ、頼みに行くぜ」
アクセサリーショップに屋敷にいる人数分をオーダーする。
一週間掛かると言うが、依頼もあるし丁度いいのでお願いすることにしたのである。
ララは久々のデートにルンルンで帰宅し、皆に不思議がられていた。
リューはと言うと。
隊長達を集めて今後の話をしていた。
「護衛依頼が丁度あった! 明日からの護衛だ! 依頼人は5つの商会がらしいが、筆頭はミラー商会と言って、俺達が護衛したことがある商会だった! ジェイクも知っているため、問題ないだろう! 各自、準備をしてくれ!」
「「「「「了解!」」」」」
◇
次の日、門の前で待ち合わせをしていた商人と白竜が集まっていた。
「ミラーさん、お久しぶりです! 今回もお願いします!」
ジェイクがにこやかに挨拶するとミラーもにこやかに挨拶してきた。
「ジェイクくん、久しぶりだね。元気だったかい? 今日は大人数ですまないねぇ」
「いえ! こちらも丁度良かったので!」
「ふぉっふぉっ。強そうな人が一杯で頼もしいねぇ!」
「はい! お任せ下さい!」
ジェイクは誇らしげに言った。
「じゃあ、出発するかね。どういう風に行けばいいかね?」
「縦に一列に並んで貰えますか? 白竜で囲んで護衛しますので」
最初から作戦は考えてあったのだ。
それをジェイクが伝える。
「リューさん、出発しましょう」
ジェイクがリューへ伝える。
「おーっし! お前ら! 取り囲んで護衛しろ! 出発だ!」
「「「「「了解!」」」」」
商会の馬車を取り囲んで進んでいく。
前を1番隊が守り、そこから2番隊が左翼前、3番隊がその後ろにつき、4番隊が右翼前で後ろを5番隊が付き、その後ろに0番隊が付く。
馬車について小走りでついていくが、西の森での一週間のうちに体力が大分ついた白竜。
このくらいはランニングと同じなのであった。
時々魔物が来るが、遠距離部隊の迎撃により、近づくことはない。
朝から進んできたが、問題なく、昼を迎える。
「おーっし! 昼にするぞ!」
リューの号令で皆が一様に立ち止まる。
「陣形は崩すな! そのまま昼食をとれ!」
商人達は戸惑っている。
そこにジェイクが駆けつける。
「ミラーさん、ミラーさん達は、ご自由にしてもらって結構です。我々白竜はそのまま昼食をとりますので」
「そうかい? なんか悪いねぇ」
「いえいえ、お気遣いなく」
そういうとジェイクも昼食を取る。
昼食を取っているとララが声を上げた。
「リュー! 何かが迫ってくるわ!」
ララの索敵にかかったようだ。
前の護衛の時より索敵できる距離が増えている。
ドドッドドッドドッ
馬の足音のようなものが複数聞こえてくる。
「リュー! 馬車みたいな物が追われているみたいよ!」
リューは即座に目が良い者に指示を出す。
「フィル! 能力で何が追われているか見えるか!?」
「今見てみるである!」
フィルの目には馬車に王家の家紋が見えた。
その馬車が盗賊に追われているようだ。
「王家の家紋の馬車である! 盗賊に追われているのである!」
「よし! それなら、そのまま後続の盗賊に狙いを定めろ!」
「定めたのである! 皆も続くのである!」
「撃て!!」
「ってぇ!」
バシュバシュバシュッ
次々に落馬していく盗賊達。
しかし、盗賊らは後ろから本隊が来る。
「おぉーい! 王家の! そのまま通り過ぎろ! 盗賊は全て俺達が処理する!」
「かたじけない!」
そのまま通り過ぎる王家の馬車を横目に一番近いリュー達が盗賊の相手をする。
リュー達めがけて馬に乗った盗賊が突っ込んできた。
「我流剣術 一突」
「ファイアーバレッド」
「サイクロンアロー」
「【撃】」
ドゴォォォォォォォォン
突っ込んできた馬ごと吹き飛ぶ。
「さすが0番隊」
「すげぇ。あれが俺たちのトップパーティか」
「かなわねぇな」
それを見ていた白竜のメンバーは感心していた。
商人達は唖然としている。
ミラーだけが微笑んでいた。
その後に本隊が迫ってくるが、0番隊の敵ではなかった。
「ファイアーストーム」
「サイクロン」
ゴォォォァァァァァァ
風と炎の相乗効果で巨大な炎の渦となり、盗賊本隊を塵に変える。
「お前ら、恐いわ」
リューがララとジェイクを見ていうと、ジェイクが慌てて反論する。
「生身であれ受けて無傷な兄貴がなに言ってんですか!?」
「ガハハハハ! ちげぇねぇ! リュー! 一本獲られたな!」
ダインが笑いながらリューの背中を叩いている。
「まぁ、無傷で切り抜けれるけどよぉ」
拗ねたようにしているリューを愛おしそうに見ていたララ。
「リューは人殺しは極力したくないのよね?」
「まぁ。それもあるが、今回は躊躇ってねぇぞ?」
「わかってるわよ。優しいわよね? そのままでいいのよ」
ララが諭すように言うと、拗ねるのをやめるリューであった。
「よーっし! じゃあ、出発するかぁ?」
出発しようとすると、馬車が寄ってきた。
「ちょっとまってください! 兄貴! 馬車が来ます!」
「ジェイク! 俺も行くが、一緒に対応頼む!」
「はい!」
馬車の元へ行くと
「この度は、助けて頂いてありがとうございました!」
執事のような人物からお礼を伝えてくる。
「いや、いいんですが、護衛はどうしたんですか?」
ジェイクが優しく聞くと、執事はゆっくり話し出した。
「視察から王都に戻る途中で盗賊に襲われまして……待ち伏せされていたみたいで……それで、護衛は不意をつかれてやられてしまい。なんとか逃げてきたのです」
「そうだったんですか。我々も王都まで行きます。一緒に行きましょう」
ジェイクが提案すると
「有難う御座います」
可愛らしい声が馬車から聞こえてきた。
「姫様!」
「いいのです! 助けて頂いたのですから、お礼を言わないと!」
顔を出したお姫様にジェイクが見惚れる。
「はっ! 全然大丈夫ですよ! ねぇ、兄貴!」
「お、おう」
「お姫様! 一緒に行きましょう!」
ジェイクが勢いよく同行を誘う。
「はい! 有難う御座います! 皆さんお強いのですね!」
「有難う御座います! 皆、訓練してますので!」
「そうなのですね! 流石です!」
「それでは、行きましょう!」
案内して一緒に進む。
「ジェイク、なんかすげぇやる気に満ち溢れてねぇか?」
「ジェイクにも春が来たのねぇ。届かぬ恋か……」
「ん? なんで届かねぇんだ?」
「だってぇ、王族でしょう? 貴族でもないと……あっ。ジェイク貴族だったわ」
「おう。だからよう、案外行けんじゃねぇか?」
「でも、地位の低いとか言ってたけど」
「功績をあげりゃいいのか? じゃあ、えす級になれば、希望があるな!」
「んー。確かにそうねぇ」
話しながら進む隊列は無事に王都に着くのであった。
その後、王城に呼ばれることになるのは、ローグのことを考えれば当然のことであった。
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