第21話 ヤンキー、白竜と帰還
「エリー、これの換金頼むわ」
「えぇ!? なんですかこれ!? また、西の森行ったんですか!?」
「あぁ。よく分かったな」
笑いながら言うリューに呆れるエリー。
「危険だって行ったじゃないですか!」
「大丈夫だって、コイツらも一緒に行ったし」
後ろを親指で指し示す。
後ろのメンバーがペコッと会釈する。
「はぁ!? 白竜のメンバーってまだEランクとかでしたよね!?」
「だーかーら、鍛えに行ったの! わぁーったか!? 早く換金してくれ!」
「わかりましたよ! ちょっとまってて下さい!」
エリーは後ろの奥の方に向かうと人を連れてきた。
「これを数えて貰えますか? まだまだあるみたいなんで」
エリーがそう言うと、助っ人達はゲェ!と言いながら数えている。
「報酬は後で出しますね、その後の人達も貰って良いですか?」
ゾロゾロと魔石を出していく隊長達。
「これさ、パーティー単位で狩ったんだけど、昇級ってできるか?」
「平均をとって換算するんで大丈夫ですよ?」
「あぁ、そうか、大丈夫ならなんでも構わねぇ」
リューよ、難しいから誤魔化したな。
それから30分ほど待つと換金が終わったようだ。
「それでは! 報酬を渡しまーす!」
「やっとか」
立ち上がってカウンターへ向かう。
「これは、リューさんの分です! 白金貨30枚と金貨21枚です!」
「おぉ。前回より多いな」
「どこまで行ったらこんなに魔石取れるんですか!? 深層まで行ったんですか!?」
「まぁ、良いじゃねぇか。次々!」
リューは下がると隊長がそれぞれ報酬を受け取っていく。
平均して白金貨10枚以上であったため、白竜メンバーは驚く。
「こ、こんなに貰えるんっすか!?」
「お前らの頑張りの成果だぜ?」
「うぅ。頑張って良かったっす」
涙目になり喜ぶグレン。
みんなシミジミしていたとこで、リューが声を掛ける。
「お前ら! 良くぞ一週間耐えたぞ! 今日は俺の奢りで飲みに行くぞ!!」
「「「「「「おおぉぉぉぉ!!」」」」」」
それからは、早かった。
ダインの行きつけの居酒屋に行き、店を貸し切りにする。
「おばちゃん! 金は、このリューがたんまり払うから貸し切りにしてくれ!」
「ダイン! 本当だろうね!?」
オバチャンに疑われるダイン。
哀れである。
そこにリューが到着した。
「オバチャン無理言ってすまねぇ。これで、取りあえず酒と飯を出せるだけ出してもらっていいか?」
そう言うと白金貨を一枚だす。
「これだけじゃ足りないよ!」
おばちゃんは勘違いしているようだ。
「そうか、ならもう1枚……」
「リュー! 待て! オバチャン! これ白金貨だよ!?」
「えぇ!! 白金貨………………はっ! こんなに貰ったら、出せるだけ出してやるよ! あんた! 気合い入れて料理作んな!!」
「おうよ! 任せとけ!!」
奥で料理を作るおじさんも気合いが入る。
「よーっし! お前ら! 今日は、騒ぐぞぉ!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」」
少しするとエールを人数分持ってくる。
「はいよ! お待ち!」
「飲み物揃ったかぁ? それじゃあ、この一週間よく頑張った! 今日は疲れを癒してくれ! カンパーイ!」
「「「「「カンパーイ!」」」」」
クビグビ飲み干すリュー。
ガチャンッとグラスを置き
「おばちゃん! おかわり!」
「あいよぉ!」
次々とグラスを空にしていく白竜メンバー。
大忙しのおばちゃんであった。
グレンが近づいてくる。
「リューさん、今回は本当にありがたかったっす。鍛えて貰えたのと、資金もこんなに得てしばらく苦労しなくて良くなるっす!」
「おう! グレンのビルドアップも大分色々できるようになったしな!」
「リューさんのアドバイスのおかげっすよ!」
「ハハハッ! なら、よかったなぁ!」
グレンが絡んでくると、それを手始めに隊長達が次々と絡んできた。
特に曲者だったのが、マークである。
「リューさん! なんで、僕にだけちゃんとしたアドバイスがないんですか!? 強い魔法を使えるようになればいいなんて、そんな大雑把なアドバイスあります!? まぁ、たしかに、そのおかげで強い魔法を発明出来ましたよ!? でもですねぇ…………」
愚痴が止まらないのである。
流石のリューも苦笑いで頷いていると、部隊の者がやってきた。
「クラマス、すみません! 今連れていきます! ちょっと、マーク隊長!? 誰に向かって愚痴言ってんですか! こっちで聞きますから!」
部下に連行されるマーク。
引き摺られて連れていかれている。
「くらます?ってなんだ?」
隣でリューにへばりついているララに聞く。
「クランのマスターを略してクラマスっていうのよ? 前に言わなかったかしら?」
「そうだったか? なんか色んな呼ばれ方すっからわかんなくなってきちまった」
「まぁ、いいじゃない? 色んな人に慕われてるってことよ」
「そうかぁ?」
「そうよん」
「んー。ならいいか」
再び飲み出すリュー。
回りを眺めていると、入口の方で揉めている声が聞こえてきた。
「だーかーら! 今日は白竜で貸切なんだって!」
「白竜なんて知らねぇよ! 俺らはこの店で飲みてぇんだよ!」
「分かんねぇ連中だな!? 力ずくで返してやろうか!?」
「ああ゛!? やんのかコラ!?」
「おい! 何やってんだよ?」
リューが声を掛ける。
「クラマス!? いや、コイツらが白竜で貸切だって言ってんのに入ろうとするんすよ!」
「なんだ? この店で飲みてぇのか?」
リューが聞くと、挙動不審になる男達。
「い、いやぁ、すみません! リューさんのクランとは知らずに強がりました! 失礼します!」
逃げるように去ろうとする男達。
ガシッ
「まぁ、待てって」
2人に肩を組み間に入る。
「ひぃぃぃ! 生意気言って、すみませんでしたぁ!」
「なんで、謝るんだ? この店好きなんだろ? 一緒に飲もうぜ! 今日は俺の奢りだ! 好きなだけ飲め!」
「えっ?? いいんすか?」
回れ右して一緒に店に入るリュー。
「おーい! コイツらもこの店が好きで一緒に飲みてぇってよ! 一緒に飲もうぜ!」
「「「「おおぉぉぉ!」」」」
「なんだにぃちゃん! この店好きなんか!? 俺もなんだよ!」
ダインが絡んでいく。
「ここの串焼きのタレが好きで……」
恐縮して好きな物を言うと
「おい!」
「は、はいぃ!」
「俺も好きなんだよ!! お前わかってんな! おっちゃん! 串焼きてんこ盛りねぇ!!」
ダインが男達が好きだという串焼きを頼む。
「あいよぉ!」
少しすると串焼きが沢山やって来る。
「好きなだけ食えよ!」
「「有難う御座います!」」
ダインの子分のようになっているが、食べながら少しずつ慣れてきたようである。
遠目から見ていたリューは微笑ましそうに見ている。
「いきがってる奴ほど可愛いもんよなぁ」
「リュー、なんかおじさんみたいね?」
「そうかぁ? この世界に来て老けたかなぁ」
「ふふっ。男が上がってるんじゃない? 達観してるリュー、好きよ?」
「そうか? 男が上がってんならいいか!」
「うん!」
肩にスリスリしているララを回りが羨ましそうに見ているが、リューは気にしてない。
この事をきっかけに色んなこの店を好きな人が訪れる度に呼び込んで一緒に飲んでいた為、かなり大所帯になった。
リューと言うやつの奢りで飲み放題らしいと言う、噂を聞きつけて人が押し寄せお祭り騒ぎになるのであった。
この街で、リューという男は懐が深い男だと言う噂が広がり、後に伝説として残るのであった。
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