第19話 ヤンキー、ダンジョンへ
各部隊が昇級すべく、依頼をこなして数日たった頃、ララからある提案があった。
「ねぇ、リュー、ダンジョンに行ってみたらどう?」
「だんじょん?ってなんだ?」
「C級に上がった時に本来は説明されるのだけど、今回は盗賊の件があったからうやむやになったものねぇ。ダンジョンっていうのは、活性ダンジョンと安定ダンジョンっていう2種類あって、活性ダンジョンは1度も攻略されていないダンジョンで、攻略するか一定の数の魔物を間引きしないと大暴走を引き起こすのよ。それで、安定ダンジョンっていうのは、大暴走は起きなくて、安定して魔石を取得できるっていう場所なのよ」
「ほお。それは面白そうじゃねぇか。ダンジョン行くぞ!」
「最初は安定ダンジョンがいいと思うわよ? ギルドに申告してから行くわよ」
「おう!」
リューは意気揚々とジェイクとダインの元へ向かった。
「ダイン! ジェイク! ダンジョンに行くぞ!」
「兄者! ダンジョンに行くんか!?」
「ダンジョンて……大丈夫ですかね?」
ジェイクは心配そうである。
知識としてはダンジョンを知っていて、罠があったりするのを知っている為、心配しているようだ。
「ジェイク、安定ダンジョンに行くから差程心配しなくても大丈夫だと思うわよ?」
ララがなだめるようにいうと安心したように
「あぁ。安定ダンジョンですか。それなら大丈夫ですね」
「そんなに活性ダンジョンはやべぇのか?」
「そうねぇ。最終階には必ずボスとなる強い魔物がいるわ。それに、階層が深くなる毎に魔物も強くなっていくし」
「ほお。それはそれで面白そうだな」
ニヤついてそう言っていると、ジェイクが焦って止めに来る。
「兄貴! やばいですって! スタンピードなんてなったらどうするんですか!?」
「それがならないように間引いてるんだろう? だったら大丈夫だろうよ」
「今回は、安定ダンジョンに行くんですからね!?」
「わぁーってるよ! ほら、準備して行くぞ!」
部屋を出るとバルトに呼び止められる。
「外出ですか?」
「あぁ。ダンジョンに行ってくる」
「下の者にも伝えておきます。お気をつけて」
「おう! 夕飯よろしくな!」
「はい。美味しいものをお作りしておきます」
礼をして見送られるリュー達。
◇
ギルドに着くと真っ先にエリーの元へ行く。
「エリー! ダンジョン行きてぇんだけどさ!」
「おはようございます! ダンジョンですか? そういえば、C級になったからダンジョンに行けるようになったんでしたね」
「エリーさん、この前説明するの忘れたんじゃないかしら?」
ララが意地悪を言う。
「そ、それは盗賊の一件があったから説明が漏れてしまっただけです! ……すみませんでした」
「ふふっ。私がリューには教えたから大丈夫よぉ」
「うーっ。それならそんなこと言わなくてもいいじゃないですかぁ!」
反論するエリーはフーフーッっと威嚇しながら興奮している。
「ララ、余計なことは言わなくていい。エリー、でさ、ダンジョン行けるとこどこかあるか?」
「うぅぅ。ごめんなさぃ」
ララはリューに怒られて縮こまる。
それを横目にエリーは説明する。
「ダンジョンは南に2時間程行ったところに、安定ダンジョンがありますよ? 洞窟型ですね」
「洞窟型ってぇと?」
「洞窟の中に入っていくみたいな感じで地下に潜っていくようなダンジョンの事です」
「そうか。それ以外には何があるんだ?」
「それ以外ですと、建物型、自然型があります。建物型はその名の通り、建物がダンジョンになっているものです。古い遺跡なんかにあるんですけどね。自然型は、森がそのままダンジョンになっている感じですね」
「ふーん。色々あんだな。今回はその洞窟型に行ってみるわ。一番近いのか?」
「はい! 安定ダンジョンでは一番近いですね!」
「よしっ! じゃあ、行ってくる!」
「はい! お気を付けて! 手続きはしておきますので!」
意気揚々とギルドを出ていくリュー。
シュンとしたままのララを見かねて声を掛ける。
「ララ、さっきの気にしてんのか?」
「えぇ。余計な事言ってごめんなさい。ちょっと嫉妬しちゃって」
「次からあんな事言うなよ? エリーだって一生懸命仕事してんだからよ」
「はぃ」
ポンッと頭に手を置きナデナデするリュー。
「ダンジョンに行ったことあんのララだけだからよぉ。準備するものとか教えてくれよな」
「うん! えっとぉ、一応野営の道具でしょ、保存食でしょ…………」
少し元気を取り戻したララはジェイクとダインに指示を出し、必要な物を揃えるのだった。
◇
「この辺だろう?」
リュー達は洞窟型のダンジョンがあるという辺りまで来ていた。
「そうねぇ。もう少し奥かしら?」
森を奥に進む一行。そこに、洞穴のようなものが見えてきた。
「兄貴! あそこじゃないっすか?」
ジェイクが先に気付いたようだ。
「おう! そうだな! 行こうぜ!」
子供の用にはしゃぐリューを微笑ましく見守るララ。
「兄貴! 気を付けて下さいよ!」
「兄者! 待ってくれよ!」
後に続く子供2人。
このパーティは子供3人大人1人のような感じであった。
ララはそれも楽しいようであるが。
「奥まで入っちゃうとはぐれちゃうからだめよぉ!?」
「ぉぅ!」
遠くで叫んでいるが、わかっているのだろうか。
仕方ないのでララも小走りで行くことにした。
「早く奥に行こうぜ!」
「えぇ。入りましょう。確かここは3階層くらいのダンジョンのはずよぉ」
「最初にはいいかもしれねぇな」
「私が前に行くわ。罠とか分からないでしょ?」
「あぁ。頼む」
ララを先頭に進んでいく。
「止まって! ここを踏まないように来て!」
「罠か!?」
「えぇ! 分かりにくいけど罠よ!」
リュー達は踏まないように進んでいく。
すると、すり足の音がして来た。
「魔物が来たわ」
「俺が出る」
リューが前に立つ。
角を曲がった瞬間、リューのチョーパン(頭突き)が放たれる。
「オラァァ!」
ズンッ!
ゴブリンが魔石に変わる。
「なるほど、いきなり鉢合わせると襲われる可能性もあるんだな。気ぃつけねぇとな」
「そうよ! ダンジョンは油断禁物よ!」
「おう」
慎重に進む4人。
しばらく進んでいると、階段が見えてきた。
「おぉ。ここを下りるのか」
「おりましょ」
ララを先頭におりていく。
「なぁ、兄者! ワイらにも前に出させてくれよ! 出番がねぇ!」
「おう! じゃあ、おれがケツ持ちやっから!」
リューは最後尾に回る。
2階も出る魔物はゴブリンであった。
「けっ! 張合いがねぇぜ!」
「ダインには楽すぎたな?」
「そうだな! もう少し歯ごたえのあるところがいいなぁ」
「違ぇーねぇ」
余裕なダインはズンズン進んでいく。
ガゴンッ
「ん? なんだ!?」
ダインは焦るがもう遅かった。
上を見ると槍が降ってきている。
「うおっ!」
槍が迫り、ダインはもうダメだと覚悟を決めた。
その時
「ウインドストーム!」
バラバラバラッ
「大丈夫ですか!? ダイン!?」
「ジェーイク!! あんがとよぉ!! ワイはもうお終いじゃと思ったんわぁ」
「まったく! 勝手に進むからですよ!?」
「す、すまん」
ジェイクに説教されるダイン。
正座して聞いているダインを見て笑っているリューとララ。
「良かったなぁダイン! ジェイクが居てよぉ!」
「あぁ。助かった」
素直はダインなのであった。
「さっ! 行きましょ!」
気を取り直してララが先頭で行く。
階段をみつけ、降りていくと大きな扉があった。
「ここがボスか!?」
「そのようね!」
「うっし! 行くぞぉ!」
扉を開けるとそこには、大きなゴブリンと普通のゴブリンがいた。
「なんだあいつ!?」
リューが聞くと
「あれは、ホブゴブリンね」
リューが前に行こうとする。
すると、それを塞ぐように前に出た人物がいた。
「ここは、僕に任せてください!」
ジェイクであった。
「よしっ! 全ゴロシだぁ!」
リューが叫ぶとジェイクは前に走っていき、詠唱を始めている。
「ハリケーンアロー!!」
竜巻が鏃のようになり飛んでいく。
ボッボッボッ
ゴブリン達に穴を開けていく。
「ウインドカッター!」
魔力を多く込めたのだろう。
大きな風の刃がゴブリン達を襲う。
ズバァァァン
ホブゴブリンは上手く避けたようだ。
『ブギギッ』
ジェイクを嘲笑っているようである。
「まだだよ」
クイッ
指を何かを招くようにこちらに呼ぶ。
『プギィァァァァ』
ホブゴブリンはその意味を理解し、ジェイクを襲おうと駆け出す。
無防備な状態のジェイクに剣を振り下ろす。
スバァァァン
ホブゴブリンの首が飛び、魔石に変わった。
ジェイクはホブゴブリンを挑発していた訳ではなく、ウインドカッターを呼んでいたのであった。
「やったぁぁぁ!! 僕だけでも倒せましたぁぁぁぁ!」
「すげぇ〜じゃねぇかジェイク!! さっきのクイッってぇのカッケェな! クイッってやつ! やべぇ!」
リューが先程の戦いを思い出し、興奮している。
ホブゴブリンの魔石を回収し、奥へ進む。
「これまた戻るのか?」
リューが質問すると
「あの部屋に行けば入口へ戻るのよ。さぁ、入って!」
4人で部屋に入ると、ブンッという音と共に一気に外にやって来た。
「なんかワイら頑張った割に報酬が魔石の分だけってすくなくねぇか!?」
「それはね、活性ダンジョンをクリアするとダンジョン魔石が手に入って、その魔石の大きさがダンジョンの難易度によって大きさがかわるのよ。この3階層だと白金貨2枚くらいかしらね?」
「そりゃ、いいな!」
ダインが最初は文句を言っていたが金がもらえるとなれば反応がかわる。
「でも、何でそんなに買取額高いんだ?」
「それはね、街とか村に結界張る時に使うのよ。1回張ると永久的に維持してくれるから高額で取引されるのよ?」
「なるほどな! ララはよく知ってんな!?」
「ダンジョンも色々回ったから」
ダインが感心しているとララはそれが当然のように話している。
「今日はここで野営にすっか! 暗くなってきたし!」
「そうしましょ」
こうしてリュー達は初のダンジョン探索が終わったのであった。
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