第16話 ヤンキー、クランを作る
王都外から戻ってきた一行はギルドへ向かった。
見知らぬ受付嬢に話をする。
「ブラウズの街から来たんだが、常設依頼は一緒か? ゴブリン倒したんだが」
「はい! 一緒となっております!」
受付嬢がそういうと。
「お前ら魔石出して報告しろ!」
男共に報告させる。
「俺、E級に上がりました!」
1人が言うと俺も俺もとみんなE級に上がったようだ。
「討伐の依頼がキッカケになって良かったぜ、報酬も貰ったか? 今日みたいにやれば、稼げるだろ? こうやって稼いで飯食え! いいな!」
そういうとギルトを出ようとする。
「待ってください! 俺達はリューさんに付いていきます!」
「「「「「お願いします!」」」」」
「んー。わぁった。ここまでしたんだ、最後まで責任とらねぇとな!」
「「「「「おす!」」」」」
「しっかし、大所帯だな。どうすっかな……」
考えていると、受付嬢が提案をしてくれる。
「リューさん、王都のギルドではクランを申請することができます」
「くらん?ってなんだ?」
「複数のパーティが一緒になった感じです!」
「チームみたいなもんか……」
作るかどうか悩むリュー。
「何悩んでるのぉ?」
ララが聞くと。
「いや、ジェイク達はどうしてぇのかと思ってよぉ」
「呼んでくるわよ?」
そういうと宿に呼びに行ってくれた。
「兄貴! 用事は終わったんすか!? なんなんすかこの人達!?」
「兄者! 一体何事だ!?」
ジェイクとダインが男共を見ながらやって来る。
「いや、スラム街の奴らを集めて仕事出来るように支援したらよぉ、これに付いてくるってんだよ。それでな、どうすっかなぁと思ってたらクランってのを作れるって言うからよぉ。おめぇらがどうしてぇかなぁと思ってよぉ」
「いいと思います! クラン、作りましょうよ!」
「クランの名前付けなきゃいけねぇんだとよぉ」
「それに関しては、もう候補があります! 白竜です!」
「おぉ。おれがリューだからか?」
「はい! 白い戦闘服に身を包んだ竜なので、白竜です!」
「んー。まぁ、それでよしとすっかぁ」
受付嬢の元へ行きクラン結成手続きを行う。
「クラン結成頼むわ」
「はい! かしこまりました! では、クラン名は何になさいますか?」
「おう! 白竜にするわ!」
「そうしましたら、加入する人は申し出て下さい」
すると、加入する者達が続々と申し出ていく。
一時行列になったが、なんとか皆の加入が終わったようだ。
「終わったかぁ?」
リューが確認するとみな頷く。
「お前らは、これでみんな家族だ! 俺達はブラウズに戻る! ついて来たい奴はスラムにいる家族もみんな連れてこい! 面倒みてやらぁ! 門の外で待つからな!」
「「「「「おす!!」」」」」
ぞろぞろ出ていくと、スラム街へ向かう。
1時間ほどしてからリューとララ、ジェイクとダインは、門の外で待っていた。
すると、スラム街にいた全ての人がやってきた。
総勢50人ほど居るだろうか。
大移動の開始である。
白竜メンバーが周りを囲み、非戦闘員を魔物から守る。
先頭は、リューが行く。
出てくる魔物は全て蹴散らす。
後ろを歩いている皆の目にはリューの背中の気合いという文字が、脳裏に焼き付いている事だろう。
大人数の移動であることと、女の人や子供もいる為、進むスピードが遅い。
野営をすることにした。
「おーっし! 男共、食料とってこーい!」
白竜メンバーが食料を狩りに行く。
鳥やイノシシの様な生き物を狩ってきて、みんなで捌く。
その間は辺りを警戒しながら見張りをする。
リューが見張りをすることで白竜メンバーは安心して狩りができるのだ。
それだけ、リューは信頼されているのだ。
「取ってきたぜぇー!」
ダインが声を上げながら帰ってきた。
「おーう! お疲れさん! お前達もなー!」
「「「「「おす!」」」」」
「よっしゃ! 5グループ位になって飯だ! よく焼けよぉ!!」
「「「「「おす!」」」」」
肉を焼いていると一人の男が近づいて来た。
スラム街のリーダー的な存在の男だ。
「隣いいっすか?」
「おう。どうした?」
「自分は、グレンといいます。スラムでは取りまとめのような立ち位置でした」
挨拶に来たグレンという男。
よく見ると痩せてはいるが、筋肉質な体をしており長いチリチリの赤髪はドレッドヘアを思わせる。
「そうなのか。みんな俺についてきちまったがよかったのか?」
「はい! むしろ、家族も付いて行っていいと言って下さったので、白竜メンバーで説得しました!」
「そうか。ブラウズに戻ったらまず住むところだな。言った以上、俺が何とかするから安心しな」
「はい! 有難う御座います!」
「おう! まず、腹いっぱい食え!」
「おす!」
尖らせた木に刺した肉を焚き火の近くでジリジリ焼いて食べる。
これが思いのほかうまく、全員満足そうに食べるのであった。
食事を終えた後は、就寝となる。
しかし、見張りの者が必要なので、リューとララ、ダインとジェイクのペアの二交代で見張りを務めることにした。
最初はリューとララである。
皆が寝静まった頃、パチパチと焚き火の音だけがする静かな時間が訪れた。
「ねぇ、リューくん。スラム街の男連中、皆クランに入れてよかったの?」
「あぁ。素行が悪い奴が多いが、困っちまって解決する手段がタダ飯を食うとか、そういう手段になっちまっただけで人としては悪くねぇんじゃねぇかと思うんだ。この前、飯屋さんにもきちっとケジメ付けて謝ったしな」
「まぁ、そうねぇ。でもぉ、家族みんな連れて行っちゃって本当に大丈夫?」
「金はある程度あるから家を買えば何とかなると思うんだがな……まぁ、こんなに人数いるんだ。村とかも作れるだろ」
「それも面白いかもしれないわねぇ。見つけるまではどうするの?」
「宿屋に泊まってもらうしかねぇな。金は俺が持つ」
「それがいいでしょうねぇ。そういう責任をしっかり持つところ、好きよ?」
「おう。言ったことにはビッと責任もたねぇとかっこわりぃだろ?」
「ふふっ。そうねぇ」
いい雰囲気に話をしながら、夜は更けていく。
夜も半ばになった頃。
「兄者、姉御、交代するぜ。何もなかったか?」
ダインが起きて交代を知らせて来た。
「多少生き物が寄ってくるのはあったが、大丈夫だ。何かあったら俺達も起こせよ?」
「おうよ。ジェイクと一緒で遠距離も攻撃できる。問題はねぇよ」
「おう! 頼もしいな、流石兄弟」
「おうともよ! 任しとけ! ほら、行くぞジェイク!」
ジェイクは眠そうにダインの後に続く。
「兄貴、姉貴、おつかれ…さまです…こうたい…します……グー」
「ジェイク! しっかりしろ!」
揺さぶられるジェイクは何とか目を覚まし、焚き火の前に向かう。
「頼んだぞ」
「頼んだわよぉ。おやすみぃ」
リューとララが就寝に入る。
寝静まった頃に、ダインはジェイクとの仲を深めようと考えていた。
「ジェイクよ。おめぇ、強くなりてぇか?」
「うん。僕は兄貴の為に強くなりたいと思ってるよ」
「それでいい。ワイも兄者の為に強くなりてぇ。けど、自分の為でもある……ワイは、前にパーティを組んでいた奴らがいたが、メンバー一人の無謀な行動によって、魔物にやられちまった。俺以外全滅だった。命からがら戻った俺は自分の弱さを悔やんで塞ぎ込んでいた」
「そんなことがあったんだね。知らなかったよ。でも、なんでまだ冒険者を続けようと思ったわけ?」
「兄者に会うまでは、金を稼ぐ為だけに続けてた。金がないと生活できねぇ。ワイは冒険者稼業でしか生きていけなかった」
「ふーん。それ以外にも何かなりそうだけど」
「それは、ジェイクのように学があればできるだろうが、ワイには無理だ。そんなダラダラ過ごしていた時、兄者にあった。最初は変な恰好してんなぁと思い、キョロキョロしているところを声かけたんだ。」
「へぇ! ダインから声掛けたの?」
「そうだ。宿屋を紹介してやってなぁ。そしたら、あっという間に家族みたいに接してくれてなぁ。そんで、この前の闘技大会ではぶっ飛ばされるし。ワイも腕には自信あったんだがな」
「その試合、僕も見たんだ。こんな人みたいになりたいって思ったんだ。そして、兄貴に助けられたとき、言ったんだ。兄貴みたいになりたい!って。そしたら、怒られたよ。俺にはなれないって。僕には僕にしかできないことがあって、兄貴でさえできないことが僕にはいっぱいあるって言ってくれた……僕は、誰にも認められなかった。だから、認めてくれる兄貴について行こうと思ったんだ」
少し涙を浮かべながら話すジェイク。
もらい泣きしているダイン。
「ううううっ。そうだったのか。お前もつらい思いをしてきたんだなぁ。ワイもジェイクを認めてんぞ! ワイらは家族だ!」
「ちょっと! 声が大きい!」
大きめの声になってしまったダインをなだめるジェイク。
「ふふふふっ」
「がははははっ」
二人の絆は更に深まったようだ。
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