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第10話 ヤンキー、舎弟を得る

ブロンズカップの決勝を終えた翌日。


リューはギルドに来ていた。


「おっす! エリー! この前預けた荷物取りに来た!」


「おはようございます! 昨日は凄い試合をしたそうですね! 私も見たかったです……」


「あぁ。楽しい試合だった。おかげで俺が上だということをダインにも分かって貰えたしな!」


「ダインさんもD級の間では注目の冒険者なんですけどねぇ……」


「そうなのか? まぁ、おれと渡り合えたんだ。強いだろうな」


「えぇ……なんかリューさん凄いですね……」


「ん? なにがだ?」


「自信が漲ってるじゃないですか! なんか羨ましいです!」


エリーは何故こんなにも自信が漲ってるか分かっていないため、不思議な思いを抱きながらも羨ましがっていた。


「ははは! その袋の中を見りゃ、自信の理由もわかるぜ?」


「これの中身ですか?」


袋を開けてみるエリー。

中身を見てみると、大量の魔石が入っていた。


しかも、D級以上のものばかりであった。


「リューさん? これなんです?」


「何って魔物を倒して得た魔石だろうが? 上の階級の魔物いっぱい倒してよぉ。自信ついたぜぇ」


「依頼を受けて行ってないですよね?」


「あぁ。ダメなのか?」


「ダメじゃないですが! 危険なことに変わりはありません! 行く時は一声掛けてください!」


「お、おう。悪かったな。まぁ、一番強いとこ教えて貰って良かったぜ!」


その言葉に頭を抱えるエリー。

数日前の記憶が蘇る。


(そうだった……一番強い魔物が出る森を聞かれて……確かに西の森って言ったわ)


自分がその時に気づけていれば、という思いでいっぱいのエリーであった。


しかし、リューのような自由なものの思考を理解しようとしても中々難しいだろう。


「でさ、討伐依頼って事で魔石換金してくれない?」


「そうですね。わかりました。少しお待ちください」


袋の中から魔石を取り出しながら数を数えていく。


すると、C級魔石も多いが、B級魔石もA級魔石もあることに気付いた。


「リューさん!? 何でこんなに上級の魔石があるんです!?」


「一週間森に篭って奥まで行ってきたからさ!」



ちょっと前の記憶を思い出す。


「リューさん! お久しぶりです! どこ行ってたんですか!?」


「まぁ、チラッと旅行に行ってたのよ」


「ふーん。で? その大荷物は何です?」


「ちょっと預かってて欲しいんだよ。闘技大会終わったらまた取りに来るからさ!」



「旅行って言ってたのは……?」


「あぁ。間違ってないだろう? 森に篭ってたからさ!」


「まぁ、間違っては無いですけど。上級の魔石があっても一気に昇級はできないですよ? 昇級にも条件があるので……」


「あぁ。いいぜ。別に昇級する為に倒してきたわけじゃねぇから」


「そうですか……わかりました」


リューだからしょうがないと諦めたエリー。


換金するために一生懸命魔石を数える。


「リューさん、数え終わりました! A級魔石が3個、B級魔石が23個、C級魔石が68個、D級魔石が114個でした。 A級魔石が一個白金貨1枚、B級魔石が金貨50枚、C級魔石が金貨10枚、D級が金貨1枚なので、合計で白金貨21枚と、金貨44です!」


「おぉ! 初めての白金貨だな」


「上級の冒険者になると、やり取りする額が大きくなるため、ギルドに預けることができます! リューさんは特別になってしまいますが、預けますか? 必要な分だけ持っておくのがお勧めですが?」


「そうか! じゃあ、金貨は貰って白金貨は預けるわ!」


「はい! わかりました! それで、今回の討伐の換算で本来は、討伐のポイントでいうとB級になれます! しかし、昇級する為には、課題となる依頼があるため、昇級はD級までとし、それ以上は課題の依頼をクリアしてからとなります!」


「うむ。わかった。じゃあ、C級になるには何すりゃいいんだ?」


「はい……それが、護衛依頼なんですよねぇ」


「ごえい? 誰かを守るのか?」


「えぇ、商人や、貴族なんかを護衛するのよ」


「貴族っつうと偉そうにして権力振りかざすようなやつらか?」


「そうじゃない人もいるからあまり大きな声で言わないほうがいいわ」


「ふんっ。気に入らねぇ」


(うわーっ。めっちゃ不機嫌になってるじゃん! どうすんのよ。でも、護衛依頼は確実に受けて貰えないと困っちゃうし……しかも、この人一人じゃーん! 一人じゃ護衛できないでしょー。まあ、やんわりやらなければいいように話そうか)


「リューさん、お気に召さなければ、受けずにD級のままでいるっていう手もありますし」


「俺は、てっぺん目指してぇんだ! えす級だ!」


(なんでこの人こんなにS級にこだわるんだろう! いや、そういう人もいないわけではないけども! あなたには無理でしょ! って言ってんのに!)


「でも、一人じゃ難しそうですよ?」


「それなんだよなぁ。ダインに頼んだって二人だしなぁ。依頼受けるやつらは何人で受けてんだ?」


「だいたい4人くらいでしょうか」


「ふーん。そうか。わかった。また来るわ」


手を振りながらギルドを後にするリュー。


(あぁ。ムスくれて行っちゃったよ。リューさんと臨時パーティ組んでくれる人なんてダインさんくらいだろうしなぁ。ホントにどうするんだか……)


ジーッと出て行った扉を見てもの思いに耽るエリーであった。



ギルドを出て歩いていたリューは路地裏に連れ込まれた冒険者を見つけた。


少し近付いてみると、争っている声が聞こえる。


『やめろよ! これは僕が今日稼いだ金だ!』


『おまえ貴族なんだろ!? 貴族様にそんなはした金いらねぇだろう? 俺達が有効に使ってやろうって言ってんだよ!』


『そうそう。俺達の栄養になる為に金を使ってやるからさ!』


『『ハハハハ!』』


路地に足を踏み入れるリュー。


「おいおい。随分しけたことしてんな?」


「あぁ? なんだおめぇ? てめぇに関係ねぇだろうが!」


チンピラが殴り掛かってくる。


バシッと拳を掴み捻り上げる。


「いででででで」


腰が砕けたように座り込むチンピラ。

もう一人も殴りかかってくる。


「てめぇ! 離せ!」


パッと離して避ける。


ドッドッ


腹へのパンチを二人にくらわせる。

腹を押さえ動けない二人。


「今日の所はこれで、勘弁してやる。取った金おいてけ」


その時光がリューの顔を照らした。


「す、すみませんでした! リューさんとは知らず! 勘弁してください!」


金を地面に置いて即座に逃げる二人。


「おう。大丈夫か? 兄ちゃん?」


「はい! 僕、昨日のリューさんの試合見て、リューさんみたいになりたいと思いました! すごくカッコよかったです! 弟子にしてもらえませんか!?」


「で、でし? 俺が師匠ってことか?」


「はい! そうです!」


「俺はそんなガラじゃねぇよ。舎弟ってことでいいか?」


「こぶん? というとなんでしょう?」


「んー俺の弟っつうか。まぁ家族ってことよ」


「本当ですか!? ありがとうございます!」


「丁度人手が欲しかったところだ。お前、名前は?」


「ジェイク・アーロンと言います。でも、弱小貴族の三男なので何の権限もないです……魔法が使えて速読ができるということだけが取り柄でして」


ジェイクと名乗った青年は、緑色のサラサラヘアーを靡かせ、細い体を弱弱しく縮めていた。


「まほう? 魔法が使えるのか?」


「あっ、はい。中級魔法までは使えます」


「すげぇ! 後で見せてくれよ!」


「は、はい!」


リューが握手を求めて応じたジェイク。


「何の依頼で稼いでたんだ?」


リューがジェイクに質問する。


「遠くから魔法で魔物を倒したりだとか、薬草を拾ったりとかですかね」


「なんかずりぃな。葉っぱ拾いかぁ。俺にはできねぇなぁ」


「ははは! 僕にはそのくらいしかできないですよ。リューさんみたいに強くなりたいです!」


「俺みたいにはなれねぇよ。俺には俺しかなれねぇ」


「は、はぁ。やっぱり僕には無理ですか……」


「ちげぇって! 俺になんてなんなくても、ジェイクはジェイクのまま強くなりゃいいだろうが! 俺みたいになる必要なんてねぇ! 魔法が使えるってすげえじゃねぇか! 俺にはできねぇ! 本が早く読めるのもすげぇじゃねぇか! 俺は文字も読めねぇ! 俺にはねぇもんを、ジェイクは持ってんだ! 自信もて!」


リューの言葉に感動して涙ぐんでいた。


「はい! 僕、頑張ります!!」


「おう! 飯食いに行くか! もちろん俺の奢りだ!」


「いいんですか!? 有難う御座います!」


この日一日を新しくできた舎弟と過ごすことにしたリュー。

家族がまた増えて賑やかになりそうだ。

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