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第1話 ヤンキー、異世界へ

「オラァ!!」


バキッ


そこには無数のヤンキーの屍が広がっていた。


「おめぇら気合いが足りねぇなぁ!!」


ツッパリと言う言葉が世間に知られ始めた時代。


この男、皇龍すめらぎ りゅう別名、気合いの龍は伝説の総長であり、敵対していたグループを壊滅させたところであった。


「どいつもこいつも気合いが足らなくていけねぇな」


ブォォブオォォォ


バイクに跨り帰路につく龍。


白い特攻服の後ろの気合いという刺繍が風に舞っている。


周りの景色が矢のように流れていく。


すると、突如黒い穴が出現した。


「なんじゃこりゃーーーー!!」



目を覚ますとそこには鬱蒼とした森だった。


「はっ! なんだ!? 森? 田舎に来ちまったのか?」


辺りは見渡す限り森である。


「こんな時は、川を探して下っていけばいいんだっけ? 遭難した時の話をばぁちゃんから聞いといて良かったぜ」


龍の親は、母親は男漁り、父親はギャンブルばかりでロクに子育てをしてこなかった為、ばぁちゃんに育てられたようなものであった。


ばぁちゃんは間違ったことは言わないと龍の中で絶対的な信頼を得ているのだ。


川を探して森をさ迷っていると。


サラサラサラ


「おっ!? 川があっかな?」


水の音がする方に向かうと。


ガサッ


林の向こうからゴブリンが出てきた。


『プギッ』


棍棒を振り回すゴブリンに龍は冷静に考える。


「あん? なんだコイツは? 人じゃねぇな。妖怪てぇなツラしてやがんな。ドーグ持ちか……」


ブンッ


棍棒が振り下ろされるが、サッと避ける。


ドゴッ


「コイツァ本気マジみたいだな。気合い入れるぜ!」


ライオンのような金髪をかきあげながら、気合を入れる。


「ふーっ」


気合を入れていると、龍の周りに赤い湯気のようなものが揺らめく。


「ウリャァア」


ボゴンッ


ゴブリンの顔が陥没し、そのまま地面へ倒れ魔石に変わる。


「結構強そうだったが、ワンパンだったな……ん? こりゃ何だ?」


魔石が落ちているのを見つけて、不思議そうに拾う。


「これは、石か? まぁ、拾っておくか」


ポケットに入れた龍は水の音がする方へ向かう。


水が流れる音が段々近付いてくる。

茂みを抜けると、視界が開けた。


「おっ。やったぜ。やっぱり川だったな」


龍はしゃがむと水をすくい口に入れた。


「あ゛ぁぁ。うめぇ」


川の底が見える透き通った水であった為、普段飲んでいた水とは違う、格別な水であっただろう。


川は緩やかに下って流れているようだ。


「これを下っていけばなんかあるだろ」


龍は川の横を沿うように歩き出した。


(しっかし、さっきのバケモンみたいなのは何だったんだ? 俺は誘拐されてどっかの山に捨てられたのか? どこのもんがやった?)


龍は思考を巡らせながら下へ降りて行く。

1時間程下ったあたりで、物を燃やす匂いがした。


「ん? 焦げくせぇ。なんか燃やしてんな?」


匂いのする方向へ向かって歩き始める。


すると、集落のようなものが見えてきた。


「ん? 誰かいる」


近付いて行くと、お爺さんが火を起こしているところであった。


こちらに気付くと。


「なんじゃ? ヘンテコな格好して? 道にでも迷ったんか?」


「あぁ。道に迷ったっつうか、知らない間に森に捨てられてた? っつうかな」


「捨てられた? そんなヘンテコな格好してっからじゃねぇか?」


「これは、俺の正装なんだ! ヘンテコじゃねぇ!」


「ホッホッホッ。それが正装か。それならバカにして済まなかったのぉ」


「い、いや、別にいいけどよぉ。それよりよ! ここは日本か!?」


「ニホン? ここはベールの村じゃが? ニホンというのは知らんのぉ。どっかの街の名前か?」


「日本じゃないのか? 日本は国の名前だ」


「国とな? ここはロベルタ王国の外れの村じゃよ?」


「ロベルタ? 外国に来ちまったのか?」


小さい頃からツッパっていた龍が日本以外の国の名前を知っているはずもなく。


ただ、外国に来てしまっただけだとそう勘違いしてしまうのであった。


「考えても仕方ねぇ。ここで生きていかねぇとなぁ」


龍は割と前向きな考え方であった。


「なにやら、よくわからんが、飯はちゃんと食っているのけ?」


「ん? 飯は……」


グゥゥゥゥゥゥ


「ホッホッホッ。こっちへ来なさい。いいものは無いが、食べ物はあるのじゃ」


家の中に案内されると、中は1LDKのような作りになっていて、寝室の他に広めのリビングダイニングとキッチンがあった。


テーブルに案内された龍は大人しく座っているのであった。


「ほれ、これでもよけりゃ食いねぇ」


出されたのはイモを湯掻いたものと豚汁の様な肉の入ったスープであった。


この村では肉はあまり取れず、貴重な物であった。


「ありがてぇ。いただきます」


両手を合わせて食べ始める龍。


ばあちゃんに育てられた龍は食事の礼儀などはばあちゃんから教えられていた為、見た目のイメージとは違うしっかりした所があるのだ。


ガツガツ食べる龍を見て微笑みながら食べるのを見ているお爺さん。


「美味かった! ごちそうさん!」


「ホッホッホッ。美味かったか? そいつはよかったのぉ」


外は暗くなり始めた。

それを見たお爺さんが龍に提案をする。


「お前さん、夜は魔物が活発になる。今日はここに泊まっていくといい」


「魔物? もしかして人みたいな形して気持ち悪い顔したやつか? ドーグ持って」


「ドーグ? はよく分からんが、そいつはゴブリンじゃろうな。魔物じゃ」


「はぁー。外国はバケモンがそこらを歩いてんだな。そいつぁすげぇな」


「だからのぉ、今日はここに泊まっていくといい」


「いいのか? 恩に着る」


軽く頭を下げる龍。


死んでも人に頭を下げる事などしない龍であったが、この見知らぬ地で優しくされたことによって、感謝の念が出てきたのだろう。


「そこに寝るといいのじゃ。朝になったら川から水を汲んでくるから、水で体を洗うといい」


「あぁ。そうするよ。今日は俺も疲れたみてぇだ。寝るとする」


床にそのまま寝転がる龍。


お爺さんは、リビングに寝るようだ。


龍の異世界一日目はこうして、終わったのであった。


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