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26、花も散りて
ちょっと今回は暗いです。
桜の花がひらひらと散っていく。
それと似たような感じで私の心に咲いた花びらも散っていった。
ある人に抱いていた淡い憧れ。
けれど。
それは儚くも散り散りになって壊れてしまう。
あの人が小さな子を見て嫌な顔をしていたから。
そして酷い言葉を投げつけていた。
小さな子は何で言われたのかもわからないながら泣いていた。
私は「なんだ」と胸中で思う。
そして気がついた。
あの人に優しさや温かさを期待していたのだと。
だから余計にがっかりしてしまったのだ。
私は愚かだった。
あの人にも醜い一面があるのに。
気づかなかったのだから。
私にだって醜い一面はあるだろう。
気がついていないだけで。
ホロリと一粒涙が流れた。
はらりと桜の花びらが頬を撫でる。
まるで慰めてくれているようだ。
くすりと笑ったのだった。




