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16、お月さま
ある日、私はお月さまを眺めた。
小さい頃にお月さまはすっごく遠いところにあると聞いたっけ。
だから、一生懸命に腕を伸ばして。
ついでに背伸びをしてお月さまを取ろうとした。
けど無理だった。
お父さんに言ったら。
「そりゃあ。無理だよ」
困ったように笑われた。
私はこの日から取るのはあきらめる。
代わりにまんまるな満月になったら窓を開けて眺めるようになった。
今日も綺麗ですね。
内心でそう呼びかけてみる。
お月さまがにっこりと笑ったような気がした。
ちょっと秋の夜はひんやりとしているけど。
いつまでも眺めていた。




