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過去の遺産-05

「先ほどの三人――正確に言うと、島根のどかと久世良司は、現在四六に所属し、雷神プロジェクトを推進すべく、霜山睦の指揮下にある。そして神崎紗彩子は雷神プロジェクト自体への参加はしていないが、四六への指揮下にはあり、彼女もまた脅威となっている」


「雷神そのものが脅威ではないと?」



 オースィニの言葉に修一が頷くと、彼女は目つきを変えた。



「ボス、脅威は雷神そのものだろう。あの戦闘能力もそうだし、そもそも雷神という機体があるからこそ、彼女らはあの場で戦っている。本来ならば学生だ。雷神という機体を葬れば、彼女たちは元の生活へと戻る事だろう」


「それは違う。彼女達は雷神プロジェクトという計画そのものに加担をしているわけではない。雷神プロジェクトの持つ信念に加担している。


 仮に雷神という機体をこの世から消す事が出来たとしても、彼女達は雷神プロジェクトの果たせなかった世界を作る為に奮起するだろう」


「……平和を愛する子供たち、と?」


「そうだ。故に危険だ。だからこそ、無力化しなければならない」


「ボス。今から言う私の言葉は、この立場にいる者が言う言葉では無いかもしれないが、言わせて欲しい。子供を殺せと命じられて、ただそれを成すなんて、汚い大人になったつもりは無い」


「ヴィスナーやリェータ、ズィマーの実年齢も十五歳だよ。しかし君と同じ立場で、いつ死ぬかわからないこの場にいる」


「ではさらに言おうか。私はそれも気に食わない。彼女たちが、ではなく、彼女たちの様な幼い子供を戦場に出す事が、だ」


「そうか。その思想・理想は立派だ。僕も君がこの場にいてくれて何より嬉しいと思う」


「茶化さずに貴方の答えを聞かせてほしい。私はこういう事を言ったのだが、我らのボスとして、私をどう処罰する?」


「そんな事はしない。君の能力は必要だし――何より酷い誤解をされているので、それを解こうじゃないか」


「誤解?」


「ああ。とはいっても前半部分だけだが。僕は先ほど、三人の排除を確かに命じたが、それは『殺せ』という意味ではない。この意味が分かるか?」



 オースィニは、そこで初めて疑問符を浮かばせるように、首を傾げた。



「つまり、だ。四六にゃ内部までが完全にブラックボックスになってる秋風の完全修理が行える高田重工の技師はいねぇ。そして機体のストックも無い。日本へ帰ればストックはあるが、機体は無尽蔵じゃない。特にフルフレームはな」



 リントヴルムが、修一の言いたい事の半分を答える。


そしてオースィニも、その言葉で何が言いたいかを理解した。



「つまり機体さえ完全に破壊してしまえばいい、という事かい?」


「そういう事だ。現段階では、という注意書きが必要ではあるかな。


 そして四六と共に行動をしているのは、アーミー隊を指揮するガントレット大佐だ。彼と霜山睦ならば、自分の使い慣れていない機体の搭乗等許可しないだろう。


 ……いや、これも少し違うな。緊迫した状況であるのならそれも考えられるが、戦況が異なれば、彼らはそう言った許可を出す人間ではない、という事だ」



オースィニは、そこまで語った修一の言葉に、一旦は納得し、着席をする。まだ彼への疑念はあるが、しかしこの場で言う事では無いと自分の心を律して。



「話を戻そう。現状ではこの三人がいる事により、四六やアーミー隊の戦力が高いと判断せざるを得ず、ただここに襲撃を仕掛けるだけでは、雷神と連携を組んだ三人が非常に厄介だ。


 ――そこで重要なのは、如何にして雷神と向き合う事なく、三人の機体を破壊するか、だ」


「歩兵部隊でも使うってのか?」



 リントヴルムが聞くが、修一は苦笑と共に首を振る。



「アーミー隊は紛いなりにも特殊コマンド部隊だ。歩兵部隊を突入させるだけでは、ただ返り討ちにあうだけだな」


「じゃあどうするってんだ?」


「あの子たちは今――夏休みなんだよ」

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