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兵器足りえるもの-08

「オレは確かに、マークを殺してしまった。その心が未だに戦場を求めているのかもしれない。


 けれど、今この心に芽生えた戦う決意は、マークに対する後悔だけじゃない」


 マークJrという青年の人生は、オレの撃った弾丸の軌跡によって、絶たれてしまった。


けれど、それを後悔していても、悔やんでいても――オレは、前を向いて生きる事に決めたんだ。


だってそうしなきゃ、あの時彼が抱きしめた、優しいオレではなくなってしまうから。


「――俺に出来た大切な友達を、皆守りたい。その為に今の俺が出来る事は、皆をサポートする事だと思う」


 そして、引き金を引けないオレにも、楠にも、雷神にも、敵を撃つ事も出来なくても、それは出来ると言い放つ。


「城坂修一が……親父もし、レイスのボスだったとしても、俺はそんな親父と戦うよ。そうすれば親父を止められるし、何よりぶん殴る事が出来る。そうしたいと、俺は心から思ってる」


『男の言葉を吐きやがって』


 ダディは苦笑と共に、そう言った。


『あと五分もすればこちらの部隊も駆けつける事が出来る。皆をサポートしろ、欠陥機』


「了解!」


 コックピットまで駆け、転がるように入り込む。


楠がハッチを閉鎖すると同時に、生体認証を再度開始。一秒もせずに完了。


それと同時に、オレのポンプ付きに乗った村上も起動を開始した。


イケる、オレは楠と視線を合わせ、彼女に問う。



「楠は、吹っ切れたか?」


「まだ。でも、こうやって戦っていれば、いつの日か、お父さんともまた会えるよね」


「うん、きっと」


「なら、その時に私も、お兄ちゃんと一緒にお父さんをぶん殴る!


 それでどうしてこんなバカな事したのって肩を揺さぶって、最後にはお姉ちゃんの所へ放り投げてやる!」


「そりゃいい。きっと親父は泣いたって許されないだろうさ」



 格納庫から飛び出す村上機。


その後を追う様に跳んだ雷神。


村上に久世先輩への援護を頼んだオレと楠が駆る雷神は、島根機と未だにひと悶着している、恐らくリントヴルムの駆る機体へと、思い切り上段から踵落としを決める。



「ぐ――おおおおおおっ!!」


『あ――があぁあああッ!?』


「やっぱテメェか、リントヴルムッ!!」


『やっぱオメェもいんのか、オリヒメェッ!』



 寸での所で、右腕で雷神の踵落としを受け止めていたリントヴルム機が、掌に備えていたパイルバンカーを起動させ、脚部を破損させる。


だが、足なんて飾りだ、くれてやるッ――!!



「島根! 遠慮なくやれっ!」


『姫ちゃん邪魔すんなよ――っ!!』



 文句を言いつつも、リントヴルム機のコックピット部に強く蹴りつけた島根機の打撃が、彼をどれだけシェイクさせた事だろう。


その間に雷神は奴の手から逃れ、島根が蹴りつけたリントヴルム機の背後から、両手を組んだ状態で強く頭部へと叩きつける。正式名称はダブルスレッジハンマーらしいが、今はどうでもいい。


『っはぁっ!!』


 機体が陸へと叩きつけられる寸前で姿勢制御を行ったリントヴルム機が、アサルトライフルの銃口をこちらへと向けて無造作に放つ。


――しかし、銃弾は思わぬ方向に。


何と、村上と格闘していたもう一機の方へ飛び、脚部に命中したのだ!



『なぁ、リントヴルム――オマエッ!!』


『あぁ!? お前に当たった!?』



 流石のリントヴルムも想定外だったのか、動揺が見られた。



『ナイスアシストだ村上!』


 今まさに四川を振り込み、相対する機体の右腕部を切り落としたフルフレームを駆る久世先輩からの賛辞。


『村上さんのおかげですね!』


 今まさに帰港を直前に、尚も援護射撃を怠らぬ神崎からの賛辞。


「俺ってホント強運だな!」


 そして村上自身の自画自賛と共に。


『それは無い!』


 全員からツッコミが入る。コレこそお約束!



『ッ、おい嬢ちゃん!』


 劣勢を悟ったか、リントヴルム機が僅かに後退を示すようにアサルトライフルの銃弾をばら撒き。


『ムカつく、ムカつくムカつくムカつくぅ!!』


 冷静さを失いながらも、リントヴルム機に引かれるように後退を開始し、両掌にある速射砲とレールガンを放てるだけ放ったもう一機。



「リントヴルム!!」


『――あばよハニィ。勝負はまたお預けだな』



 それだけ残して、二機は去っていく。


追いかけてもいいが、それは監視衛星等に任せよう。



「今は、何とか無事に済んだこの状況を、良しとするか」


 ホッと息をついたオレと楠。手を繋いで互いの体温を確認した後――。


『欠陥機』


 ダディの言葉が通信機に入ってきて。


『よくやった』


 たった五文字の賛辞だけれど。



オレは、たった一筋の涙だけを流して、そのままダディの言葉を、無視した。



『おい、いじけるなよ息子』


「ふん。反抗期の息子をあんだけイジメた罰だ、バカダディ」

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