生徒会室にて
現地時間、2089年7月22日、1035時。
日本AD総合学園諸島。
AD総合学園高等部・三年OMS科教室兼生徒会室。
本日は交流戦の二日目・最終日である。その為の準備として、俺と楠は先んじて生徒会室でプログラムの見直していた。
既に校庭でADの整備を行う生徒達の状態を確認している他の役員達から電子メッセージでの連絡が届く。
「今日のプログラムは」
「島根と天城幸恵さんの二回戦と、久瀬先輩対あの女……神崎紗彩子の二回戦だね」
「神崎、勝ちあがってきたな」
二年Aクラス代表・神崎紗彩子。彼女は学園の治安維持を目的として設立された部兵隊の隊長を務める女で、オレが一目置いている生徒でもある。
彼女の操縦能力は一流の兵士と呼んでも良く、何度か背中を預けた事もある。
……まぁ、一回戦で負けてるオレが言うのもなんだけどさ。
「ただ三つの対戦だけだと時間余っちゃうなぁ……授業を潰して交流戦を行うわけだし、中等部の見学と外部からの取材もある。何か余興も考えておかなきゃね」
この交流戦は、生徒同士の交流や力量差を計る為という目的も勿論だが、下種ではあるが「AD総合学園に入学希望をする生徒を増やす宣伝」としての目的もある。
あまり簡単に頂点が決まってハイ終了ではつまらない。
「敗者復活戦でもやるか?」
「お兄ちゃん、出たいだけだよね?」
「そうとも言う」
何たって天城さんに負けた事、未だに納得してないからな。
「でもいいかもね。勝ちあがった二人と敗者復活戦を勝ち抜いた一人での総当たり戦だったら多くの時間も取れるし」
「予め時間が取れてたら、この辺もちゃんと調整出来たんだけどな」
元々総当たり戦を予定していた今回の交流戦は、基本的に行き当たりばったりで構成されている。
実は交流戦の前日までテロ事件に関する業務を行っていたので、仕方ないと言えば仕方ない。
「じゃあ敗者復活戦にしようか。村上さんに連絡取って、一回戦敗退組を準備させておいて。お兄ちゃんも準備してね」
「はいよ」
ちなみに村上とは生徒会会計の一人で、オレと同じクラスの村上明久だ。運が悪すぎて逆に運がいいと、トラブルメーカー兼願掛けとして有名だ。
携帯端末を取り出して、村上に電話をかける。数コールの後に電話が取られた事を確認し「村上か?」と声をかける。
『お、おう……姫……』
「どうした村上。何時もの元気が無いぞ」
いつも「俺は超運が良いぜ!」と言いながら死にかけてるのに。
『……あのさ、姫』
「ああ」
『助けて』
「何があった」
『爆弾見つけた』
「へぇ。どんなの?」
『一年Cクラスの格納庫で見た事無い段ボール見つけたから、開けてみたら時限爆弾入ってた……』
「大変だな。まるで」
…………あれ?
何時も村上は何かしら死にかけてるので、爆弾程度ではあまり驚かなかったが……よく考えると、ソレって……。
「……テロじゃん」
『今気付いたのかよ――ォッ!!』
「ホントゴメン。お前なら何起こってもおかしくないと思ってた」
オレと楠は、急いで現場へと向かうのだった。




