聖奈「AD兵器について学びましょ」-01
聖奈「はーい。今日はAD兵器について学びましょう!
講師の城坂聖奈、スリーサイズは国家機密よぉ♪」
紗彩子「補佐の、神崎紗彩子です」
織姫「わー」パチパチ
楠「わー」パチパチ
聖奈「ノリ悪いわねぇ二人とも。せっかくのお遊びコーナーなんだから、こんな時位遊ばないと」
織姫「別にあんまり興味ないし」
楠「お姉ちゃん、私たち現役の学園生徒なんだよ? その辺は中等部で習うんだけど」
織姫「その点俺は現場で使ってただけで、AD兵器の座学なんてこっち来てからしか全然やってないな」
聖奈「その通り。姫ちゃん、この間の座学テスト、百点満点中何点だった?」
織姫「ぎくり」
聖奈「二十五点、二十五点て。峰岸先生から伝えられた時『ホンマでっか?』って変な言葉遣いになる位ビックリしちゃったなぁ。流石に低すぎでしょ」
織姫「……別にテストで何点だろうと、実戦で百点出せばいいじゃん。俺はそうやって生き残ってきた」キリ
聖奈「でもそれじゃあ開発の第一人者だったお父さんにも面目立たないし、しっかりお勉強しなさいな」
織姫「はーい。……親父の事なんか全然覚えてねぇってのに」
聖奈「さて。今は立派な兵器システムとして名高いAD兵器だけど、その歴史は古いのよー」
聖奈「元々AD兵器は、日本のJPEF――日本惑星探査施設が、高田重工に発注したパワードスーツユニットだったの。
元々は二メートル半程度のものだったけど、実はこれすっごい特徴があったのね」
紗彩子「それが、無重力化で使用できる兵器としての側面を持っていた……と言う点ですね」
織姫「なんでそんなの付けたんだよ」
紗彩子「いろいろと言われておりますが、JPEFは今後の宇宙空間での活動を進める上で、一つの懸案事項があったんです。それが【宇宙人】との対話です」
紗彩子「宇宙人との対話に関して、まずは情報を持ち帰る立ち合い者の安全を配慮する為、と言う事ですね」
聖奈「まぁ結局、そのパワードスーツ案は廃止されちゃって、結局別のパワードスーツが今も現役稼働しているんだけど、その代わり高田重工が開発したパワードスーツは、AD兵器として生まれ変わったってわけ」
聖奈「まずは二メートル台の機体でいろいろと試作が行われる予定だったけど、これにはいろいろと問題があった。まずは【動力の確保】ね」
聖奈「最初はバッテリー駆動で検討してたんだけど、二メートル台の機体に搭載出来る小型電池の開発が難しいのでは、って懸念したんだけど」
紗彩子「それを解決したのが」
聖奈「いや、世の中バカばっかでさぁ。『じゃあ大型バッテリー搭載できるようにパワードスーツ自体をめちゃくちゃデカくすればいいんじゃね?』って言い出したバカが居たのよ」
楠「聞けば聞くほど、そんな馬鹿な話があるかって思うけどね……」
聖奈「いやでも理に適っててね。問題は機体を自立させられるかどうかだったんだけど、デカければいろいろメリットが出てきたのよ」
聖奈「まずは動力の問題だけど、戦闘機用のエンジンが一先ず流用できたの。後々AD兵器用のエンジン規格【ディアス】が開発できたのは、他の兵器からの流用で事足りて、データ取れたからよね」
聖奈「次に装甲強度の問題。二メートル弱のパワードスーツそのままだと、装着者の安全考慮が不完全になっちゃうのよ。それに重量の問題もね」
聖奈「で、『じゃあいっその事巨大ロボットにしちまおうぜ』って話になった段階で、コックピット全体を装甲で覆う形になったってわけ」
聖奈「けど問題もあったの。さっき言った『自立できるかどうか』ね。何十トンもある大型兵器を駆動させる上で、どうやって地上で自立させるかって問題があった」
聖奈「これを解決したのもバカの発言だったの」
織姫「……まさか『ずっと空飛んでればいいじゃん』とか言い出した、なんて言わないよなぁ?」
聖奈「まさかのその通りなのよー」
織姫「日本の技術者バカばっかか!?」
聖奈「ああ、一応言っとくけど、その考え自体は廃止された。でもその発言は別の考えに繋がったの。それが『電磁誘導装置』の開発」
聖奈「機体の制御をスラスターやブースター、脚部や腕部を振る事による姿勢制御運動に頼る事無く、電磁波で誘導をする為の装置ね」
聖奈「この電磁誘導装置の完成によって、その補助をうけた初期型AD兵器は自立できるようになって、後々自立できるように開発されたフレームシステムが完成した事によって、今度は機体の姿勢制御を容易に行えるようになったってわけ」
紗彩子「この段階で試作されたADは、教科書にも載っておりますが、GIX-000【元祖】でした」
紗彩子「この試作機が完成した段階で、米軍との共同訓練で一度演習を行いましたが……酷いものだったそうです」
織姫「なんかあったのか?」
紗彩子「米軍の兵士たちに『ガ○ダム開発したのか!?』、『日本逝っちゃってるよ。あいつ等未来に生きてんな』、『流石日本、俺達に出来ない事を平然とやってのける。そこに痺れないし憧れもしない』と散々バカにされた挙句」
紗彩子「模擬弾頭の一発で撃沈。おまけに自立するだけしか出来ずに歩く事も出来ないと言う問題大有りの初陣となったのです」
織姫「よくそこから巻き返したな……」
紗彩子「実際に開発部も面白がっていました。公式SNSアカウントの発言で『やっぱあんなんじゃダメですよねwwww』と公式コメントが未だネットに残ってます」
織姫「草生やすな!!」
紗彩子「ですがこの初陣を期に、様々な課題が浮かび上がりました」
紗彩子「まずは操縦システムの改良です。今は操縦桿二本とフットペダル、姿勢制御幹だけで事足りているADですが、その当時はコンピュータ制御が不完全だったこともあり、操縦桿は九つ、フットペダルも七つとおかしなことになっていました」
紗彩子「今は当時のテストパイロットが肺癌で無くなっている関係上、元祖の操縦方法が分かる人間は地球上に存在しません。まぁそもそも、その機体自体無くなってるんですが」
紗彩子「次に動作を行う為の処理能力の欠如。当時の元祖は一つの動作を行う為に命令を下した後、処理を完全に終了するのに必要な時間が五分かかったそうです」
織姫「使い物にならないじゃねぇかよそんなの……」
紗彩子「はい。その為様々な機体がデータ上のみ設計されました。GIX-001、GIX-002【希刃】 (この機体は一応きちんと製造されました)、GIX-003、GIX-004……」
紗彩子「その後、GIX-005【技獣】と言う機体が生まれました。――この機体から各国軍部も、このADと言うものに注目をするようになりました」
織姫「なんかあったのか?」
紗彩子「各諸問題が解決していたのです」
聖奈「操縦システムの改良ね。これは今のOMSに繋がるものなのだけれど、独自OS【礎】が開発され、操縦システムに組み込まれた結果、ズブの素人でも操縦が出来る様になっていた」
聖奈「そして機体の姿勢制御。これはそもそも自立用フレームの改良を行う事で、電磁誘導装置のみに自立をサポートさせる必要なく自立可能となり、姿勢制御ユニットとして電磁誘導装置の使用が可能となった」
聖奈「次に処理能力の欠如だけれど――これもバカの発言が元になって解決したの」
織姫「……思い浮かばないけど、何言ったんだ?」
聖奈「『覚えさせりゃいいじゃん』」
織姫「……はぁ?」
聖奈「ややこしいけど、処理を行うCPUだけに負担をかけさせるんじゃなくて、記憶容量の方に操縦方法のマニュアルを全部叩き込む事によって、操縦者が行ったマニピュレートを即座に反映できるようにした……って事よ」
織姫「ほ、ホントにややこしいな……」
紗彩子「こう考えてください。例えば料理で『カルボナーラを作って』と注文されましたが、カルボナーラの作り方を知らない場合、貴方ならどうしますか?」
織姫「作り方調べて、その調べた通りにやるよ」
紗彩子「ですが、元々作り方が頭の中にあったらどうでしょう?」
織姫「パパって作っちゃう……って、ああ。そう言う事か」
紗彩子「そう。予め操縦方法を記憶装置に叩き込み、入力されたマニピュレート情報を元にした操縦内容を記憶装置から検索、それをCPUに入力する、と言う処理を行うことにより、即時反映が可能となった……と言う事です」
聖奈「それによって次に行われた演習は、ADの独壇場だったわ。陸上は無敵。海戦は想定してなかったらその場では言われなかったけど、今後発展できる余地もあった」
聖奈「バカにされるオモチャから、一気に世界中の注目を集める兵器にまで昇華したってわけ」
紗彩子「結果、防衛装備庁がADにかける予算も莫大に上がりました。高田重工もそれまでは税金対策部署に開発を丸投げするだけに留まっていましたが、後に大型の開発チームを結成するまでに至りました」
紗彩子「その後開発された機体――この機体が、初めて作戦配備されるようになりました」
聖奈「流石にこの機体は知ってるでしょ姫ちゃん」
織姫「えっと……GIX-013【飛竜】、だっけ」
紗彩子「その通りです。その機体は独自OS【礎】はそのままでしたが、この段階で二本の操縦桿、一つのフットペダル、一つの姿勢制御幹での操縦が可能となりました」
紗彩子「そして処理能力も、記憶装置と処理装置を合わせ、並列処理を行うAD用チップ開発の成功により、先ほど説明した処理を極めて高速に行う事が可能となりました」




