AD総合学園の一日-03
「終わっ……たァ!」
「お疲れ。コーヒーでも飲むかい?」
「頼んじゃっていいですか?」
「明宮、いいかな」
「結局私なのですね……まぁ構いませんが」
本日までに終わらせなければいけない処理を終わらせた生徒会メンバー達は、各々自分が一番リラックスできる状態で話し始める。
「所で島根は一切来なかったな」
「奴がまともに生徒会として参加した覚えはまるでない」
良司が苦々しく言い、梢はコーヒーをその場にいる全員分を用意した上で席に着く。
「のどかは今、格納庫で色々と整備科のパートナーを酷使しているようですよ」
「酷使って何してるのさ」
「さぁ。しかし哨が言うには『これじゃ姫ちゃんに勝てないかなぁ』と言っていたらしいですが」
「島根相手は俺も疲れそう」
「んじゃあ今度の交流戦でのどかと当たるようにしたらどうだよ。どうせ一年Cクラスはお前が出るんだし」
「いや、一回戦は三年の天城先輩と当たるようにした。あの人と一度やってみたかったんだ」
「職権乱用だな」
織姫と良司はブラックで、明久はシュガースティックを一本入れて、梢はシュガースティック三本とフレッシュを二つ投入して、四人はそれぞれの好みでコーヒーを飲んでいる。
そんな中、突如生徒会室の扉が勢いよく開かれる。
「姫ちゃんっ!」
「噂をすれば」
生徒会会計の一人、島根のどかだ。
「アタシとヤろ!? 気持ちいいよぉ、楽しいよぉ!」
「相変わらずいかがわしい言い方をするのね、のどか」
「雷神とヤリたいのー! いいでしょ姫ちゃん!」
「無理。だって今楠いないから雷神動かせないし。秋風でいいなら相手してやるけど」
「雷神じゃないならアタシ勝っちゃうし、いいや」
「言いやがったなお前! 表出ろ!」
「城坂君、島根、そこまでだ」
「会長がジャッジしてくれるんですか?」
「久世は黙っててよ。アタシってば姫ちゃんにケンカ売られたんだよ!?」
「売ってきたのはそっちだろ!?」
「いやそうではなくて、まずAD使用申請が出てない。合わせてグラウンドの使用申請も。そして使用申請許受付時間は既に終了している」
「そんなのあったの?」
「そんなのあったの?」
「あるよもちろん。もしグラウンドに何も知らない生徒がいて踏みつぶしたり等あってはたまらんだろう」
「部兵隊とかの訓練グラウンド使えば」
「私的利用は感心しないな。有事でもないし、今回は諦めたまえ」
結局その場では納得せざるを得ず、五人はそこで解散することとなった。
**
「ただいまぁ」
城坂楠が、疲れた顔を浮かべながら織姫と共に住む寮へと帰って来たのは、夜の九時を回った段階であった。
まだ織姫は夕飯を食べていない。作ってはあるが、楠の帰宅を待っていたのだ。
「おかえり楠」
「ただいまお兄ちゃん。いや、凄かったよ防衛省と文科省。すっごい数のマスコミがいた」
「そりゃその二つが経営するAD学園が戦場になったんだからな。マスコミに見つかったか?」
「裏ルートから入ったから、マスコミには見られてないよ。けれど今度AD学園にも来るみたい」
「姉ちゃんあれで記者会見できるのか?」
「それがねぇ、あの日お姉ちゃんはTAKADA・UIGに視察してたって事になってるから、陣頭指揮を取った事になってた私が記者会見やらなきゃいけないの」
「一学生にそんな事させるなよ……」
「まぁ慣れたものだけどね。ここまで大掛かりなマスコミ対応は初めてかも。それより、ごはんもう食べちゃった?」
「そんなわけないだろ。可愛い妹放っておいて先に食べる兄ちゃんがいるかよ」
食事の準備は既に済ませていたので、織姫が用意を終える。
少し冷めてしまっているが、美味しそうな食卓が目の前にあり、楠は疲れた表情を一変させ、ニッコリと笑うのだ。
「ありがと、お兄ちゃん。大好きだよっ」
「おう、俺も大好きだぞ、楠」
二人で箸をとり、食事としよう。
幸せを噛みしめながら、他愛もない話で一日を振り返る食事を。




