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最後の想い-03

ここから先は私――城坂楠が語らせて頂きます。



AD総合学園防衛隊及び航空自衛隊第507飛行分隊と、城坂修一率いるアルトアリスの軍勢による抗争は、終わりを告げました。


その日の明け方から翌日にまでかけて、AD総合学園島は殆どパニック状態にあったと言っても過言ではないでしょう。


まずは翌日すぐに首相を含めた政府関係者、及び関連閣僚による視察、事態の把握、押し寄せるマスコミ――私と姉である城坂聖奈はそれらの対応に追われてんやわんやの状況でした。


ただ私は現場で戦い負傷していた事もあって、仕事は久世先輩を含めた生徒会の面々や、あの神崎紗彩子率いる部兵隊も対応を手伝ってくれて、処理自体は概ね速やかに完了しました。


ですが、問題はそれだけではありません。



まず、マスコミ対応。



これは(正直平気だったけれど)久世先輩の指示で車椅子に座らされた状態で行った記者会見での事。


私に一つ質問が入りました。



「秋沢……失礼しました。城坂楠さんは、城坂修一さんによるテロが起こり得ると、既に情報を取得していたという事でよろしいでしょうか?」


「情報筋に関しては国家間AD機密協定に触れかねませんのでお答えは出来かねますが、情報は取得しておりました」


「素人考えで誠に申し訳ありませんが、情報を取得していたという事ならば、テロを回避する手段があったのではないでしょうか? ああして戦場カメラマンである藤堂さんを使って全世界へ中継を行う理由は無かったと、ネットでも大変話題となっておりますが」


「どこまでお答えして良いですかね、会長補佐」


「機密協定に触れかねませんのでお答えしかねます、としか」


「との事です。我々だけでは分かりかねる、国連で定められている機密条約上お答えが難しい事実関係に関して、全て防衛省を通して国家間AD機密協定上お話出来る部分を、防衛省の方からご案内させていただく事になるかと思います。申し訳ありません」



 という風に、実際どこまで喋るべきか分からない事態が多すぎたので、答えは全て防衛省に丸投げしていたのですが……。


翌日、ワイドショーはこう編集して放送してました。



『テロを回避する手段があったのではないでしょうか?』


『我々だけではわかりかねる。申し訳ありません』



 チクショウと。やりやがったなあの野郎めと。私は奴を恨みました。


 ちなみに質問したのは以前ミィリス襲撃時の記者会見で質問してきた朝読新聞の加納で、ワイドショーは朝読新聞と連携しているブジーテレビでの放送でした。(後日防衛大臣から抗議が入り、番組が一分くらい謝罪に時間を使ったが)



 さらに、何と驚きの証人喚問です。



「貴方のお父さんである城坂修一とAD総合学園において会合をする時間がありながら、どうして貴方は生徒の安全を鑑みなかったのでしょうか?」



 私が質問をしてきた人物は、第一野党の民治党党首・喜多見だ。


野党による予算委員会の時間を使った証人喚問で呼ばれた私は、証人喚問で虚偽の証言をする事が出来ない関係上「防衛作戦に関しましては国家間AD機密協定の関係上、ここでのお答えは出来かねます」とだけ返答をしていた。



「貴女は、この場所がどういう場所かおわかりなのですか?」


「証人」


「予算委員会における先日のAD総合学園テログループ襲撃事件についての証人喚問と認識しております」


「喜多見議員」


「この場所での虚偽は刑事告訴の対象となりますよ?」


「証人」


「事実なのですから、これ以上お答えは難しいです。それとも、貴方の責任で、国連で認可された国家間AD機密協定上お話してはいけない内容を、生放送されているテレビやネットに垂れ流していいという事ですか? もし垂れ流していいのならばお話を正直にさせて頂きますが、防衛大臣様、よろしかったですか?」



 後ろを向くと、クスクス笑いながら手をクロスさせて「ダメダメ」とジェスチャーする室見防衛大臣の姿があって、私も「ですって」と笑う。


顔を真っ赤にさせてプルプルと身体を震わせる喜多見と、それを援護するように「事態の説明責任はあるだろー!?」とヤジが飛ぶので「証人喚問ってヤジは厳禁じゃありませんでしたっけ?」とカメラに聞こえる程度の声で笑うと、押し黙った。


静かになったと確認してから手を上げて「証人」と許可されたので「では抵触しない範囲で説明しますと」と前置きをおく。



「中継における私の発言は全て、父である城坂修一の戦意を低下させる為のものでした。そして私としても戦闘状態になる事は避けるべく、対話は試みております。それでも尚戦闘の意志有と判断せざるを得なかった為に起こった戦闘である、とはお答えできます」


「喜多見議員」


「ですが事前に情報を取得していたのならば別の方法で防衛作戦を展開する事が可能であったのではないでしょうか!?」


「証人」


「どこまで話していいか……まず第一の前提として、我々が敵襲情報を取得したタイミングは当該テロ事件の十数時間前です。この状況で防衛省及び文科省に認可されている防衛部隊を動かさずに生徒や一般市民の安全に配慮は不可能でした」


「喜多見議員」


「本当に不可能だったのですか!?」


「証人」


「どの様にして不可能だったかは国家間AD機密協定上、この場でのお答えは出来かねます。


 ただ余計な発言かもしれませんが、以前AD総合学園へテログループの襲撃があった為、いざという時に参加できる防衛作戦参加生徒の範囲拡大は防衛省と文科省に認可されていますから我々の独断ではありませんし、果ては『AD総合学園への防衛戦力の増強』は議題にも上げて頂くようにお願いをしておりますが、未だに上がっていなかったと記憶しております。タピオカ問題とかで議題が先延ばしにされていますからね。テロ組織に『自衛隊の戦力増強がまだだからテロを遅めてくれ』と交渉するのは無理でしょう」


「喜多見議員」


「……情報取得を行ったのは貴方だったのですか?」


「証人」


「少なくとも私ではありません。私も予測はしておりましたが」


「喜多見議員」


「では情報はどこから? 我々にはその情報すら入ってきて無いんですけど!」


「証人」


「情報の出所も国家間AD機密協定上、この場でのお答えは出来かねますが……え? 室見さん、野党に話って通ってなかったんですか?」


「えっとね、あの日野党は別議題での野党会合に出てて、その情報はデスクに伝わってはいると思うよ?」


「あー……との事なのですが、私には分かりかねます」


「喜多見議員」


(ちょ、どうなってんの!?)


(だから情報取得は防衛省の方から来てたって言ったじゃないですか)


(聞いてないし!)


(タピオカ問題だけに注力し過ぎなんですよ喜多見さんは!)


「喜多見議員?」


「え、あ、はい、その、それは良いとして」


「いいんだ……」


「今何か!?」


「いえ何も。……というよりこれ証人喚問を非公開にしてやり直しをした方がいいのではないでしょうか?」


「証人、許可の無い発言は控えるように」


「失礼しました」



 そんなこんなで証人喚問は野党における認識力の甘さが露見した形となり、私の勝利で終わりましたが、後日色々といちゃもん付けながら「首相はどうやって責任を取るおつもりですか!?」に繋げて行った時は、私も開いた口が塞がりませんでした。



……ちなみにタピオカ問題は与党議員の一人がタピオカミルクティを党費で飲んでいた可能性があると野党に突っつかれている問題です。

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