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戦いの中で-07

「カウレス、動けるか?」


『ええ、行けます』


「では――地獄まで付き合ってくれ」


『イエス、サー』



 機体を一瞬しゃがませ、まるで機体の整備をするように五秒ほど立ち止まったグレムリン。


その隙に装甲に捕まり、掌に乗ったガントレットを連れて駆ける。


走り抜けた先に、剥き出しになったUIGのゲート。既にロックは遠隔操作で解除されていて、そこから飛び出した一機のアルトアリスと交戦に入る直前、僅かに機体をしゃがませたカウレス機が、ガントレットを下したと悟らせない、地を這うようにした移動によって、一機のアルトアリスと交戦に入る。


その隙に、ガントレットは福島UIGへの入口へと入り、事前に作っていたダミーカードキィを用いて人間二人程度の大きさしかない通路を通っていく。


妨害は無い。妨害出来る人員がいない。


ガントレットは備えていたP90を構えつつ、事前に叩き込んでいた地図データを基に、UIG内部を駆け抜けていく。


辿り着いた場所は、UIGの施設を統括する管理室。トリガーを引き、管理用コンピュータに向けて放つ銃弾。一度UIG内の電源が落ちるが、しかしすぐに予備電源へと切り替えられる。


すぐに退室すると共に、再び走り出す。



 駆けた先に、待ち構える一人の男がいる事を知りながら。



肩にかけたP90を下しながら、そのまま古びたドアを開け放つ。


扉に放たれた銃弾。ガントレットは癖で一度身を引くが、すぐに息を吐きつつ、再びドアを開け放って、入室。



そこには、バレッタの銃口と共に冷たい視線をガントレットに向ける男がいた。


 ――否、違う。


男だった物だ。



「シロサカ・シュウイチ……いや、ヒューマン・ユニットと呼ぶべきか?」


「どちらでも構わないけれど、君には城坂修一と呼んで欲しいよ」


「シュウイチ、お前はもう終わりだ。大人しくしていれば、私がお前を殺してやろう」


「君らしからぬ事を言う。やはり君は老いたんじゃないか? 昔の君なら、僕を殺すなんて事の為に自分で出張るなどなかった。


 君は年を取り、感傷に流される様になったのではないかな」


「否定はしない。私は年老いた。随分と衰えて、ここまで走るのにもだいぶ苦労をした。デスクワークで鈍っている」


「でも、それが嬉しい。僕は君と、こうして一度ゆっくり話をしたかった」


「私もだ。だが、何もかも遅すぎた」


「遅くなんかないさ! 僕がこれから、どれだけでも時間を作ってやる。


 勿論これからも君は、統一された国家の軍部で、才能ある兵士を育てる教育者となり得るだろう。


 けれど、それはあくまで自衛の為に必要となる軍備だけだ。


 君達アメリカ軍の様に、他国の争いへ無駄に介入し、国家警察を気取る必要なんかない、そんな平和な世の中を作り上げようとしているんだよ、僕は」


「いいや遅いのさ。お前の野望は絶たれたよ」


「君が僕を殺すからかい?」


「いいや――お前や私が考えている程、次世代を担う若者達は、この世界に絶望なんかしちゃいない。


 どうせお前も、何かしらの共有手段で聞いているのだろう? クスノキは、お前を否定した」


「ああ、そうだね。きっと聖奈だって僕を否定するんだろう。誰もが僕の願いや理想を、受け止める事をしない。


 けれど、僕はそれでもいいと思う。それこそ次世代を担う若い子供たちを守る為に、僕の過激で大胆な革命家モドキのやり方が、どこかで必ず必要となる筈だから」


「なぁ、シュウイチ――お前は、今のオリヒメと、抱き合えるか?」


「あの子が許してくれるのならば、僕はあの子を力の限り抱きしめる。痛いと言われようが、気色悪いと言われようが、僕はあの子の父親だから」


「私は、あの子の義父として、ダディと呼ばれた。


 あの子が小さい頃、私の事をパパと呼べと教えても、あの子は頑なに、私をパパと、父と呼ぶことはなく、ただダディと呼んだ。


 その意味が、分かるか?」


「……分からない。僕には、あの子の気持ちが、分からないよ。


 あの子は、僕が目を覚ますまでにどれだけの人を殺した?


人を殺す為の銃を、ADを、ありとあらゆる人の殺し方を、教えたのは誰だ?


それは君だ、ガントレット。親友として、あの子の父親として、あの子を育ててくれた事には感謝する。


 けれど、あの子にはもっともっと、違う生き方があったと……雷神プロジェクトという夢物語を信じる権利があるのだと、そう教える事も出来た筈なのに、君はあの子に、兵士として戦う道を指し示したんだろう?」


「それを望んだのは、オリヒメ本人だった。それを受け入れたのは、オリヒメ本人だった」


「義父ならば、それを誤った道だと教える事が出来ただろう。お前の様な子供にそんな道は似合わないと、オモチャの銃でも与える事が出来ただろう。


 これが八つ当たりなんて事は百も承知だけれど、親友として、あの子の父として、僕は君に言わなければ気が済まないんだ。


 レビル・ガントレット――君はどうして、織姫にその道を指し示し、別の選択肢を与えなかった?」

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