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雷神プロジェクト-01

 現地時間、2089年7月10日、0510時。

日本・愛知県海部群。TAKADA・UIG――高田重工アンダーインダストリグラウンド。


リントヴルムは、自身が駆るディエチのコックピットシートに寝転がったまま、手に持つタブレット端末へ入ってくるデータを一つ一つ参照し、鼻歌を奏でていた。


現在、彼は高田重工が有するUIG――アンダーインダストリグラウンドへと進行し、その機密情報の取得を行っている。


 彼の周りでは、四機編成のディエチ小隊が二つ、日本防衛省が有する秋風四機編成の守備隊との殺し合いを行っている。


「――まぁ、スペックいい機体に乗ってたって、実戦経験もない上に情報も守らなきゃならねぇってんなら、こうもならぁな」


 リントヴルムが駆るディエチには、弾丸一つ届かない。こちらはどれだけでも大暴れできるものの、秋風の守備隊はこの地底工廠にあるデータを、一つとして欠けさせてはならないのだ。


 中にはバックアップを取る事が許されない機密も存在するし、それらを守る為には最低限の火力で、ディエチのみを討伐しなければならない。相手の守るべき物を人質にしている状況が、今のリントヴルムを守っているのだ。


「――にしても出てくる出てくる。アキカゼの機密情報」


 日本・アメリカ・ドイツの三カ国は、AD兵器の所有数や開発情報などを開示する情報開示条約と言うものを結んでいる。


 これはAD兵器を生み出した日本が取り決めた、あまりに強すぎる軍事国家を作り上げない為の条約であり、他国への監視を強める事が出来る条約と言っても間違いない。


軍事力の高い三カ国が取り決めた条約である事から【連邦同盟】と非公式で呼ばれ、条約に与しない国家の事を【新ソ連】と呼ぶようになっている。リントヴルムの祖国・ロシアが、率先して条約に反発した事から名付けられた名である。


連邦同盟が生まれた結果、新ソ連側にAD兵器の開発情報などは一切入る事が無くなり、現在の表立った武力衝突は、全て情報取得を目的に行われている。


中でも高田重工だけが有するGIX-P4【秋風】の情報は、機密レベルが段違いに高い。秋風は、開発から製造までを、全て高田重工が自前で行っている。


 つまり開発には日本防衛省が一切関与していない為、連邦同盟に対する情報開示を行う必要が無いのだ。


 無論アメリカやドイツも、連邦加盟国として高田重工に情報開示を願い出てはいるものの、未だグレーゾーンとして位置付けられており、秋風をアメリカやロシアが有する事は無いのである。

(日本防衛省も高田重工に高いライセンス料を払い、買い取る形を取っている。製造及び改修は高田重工に丸投げをしている状態だ)


その情報が今、手元のタブレットにある。


リントヴルムは溢れる笑みを抑える事無く、ニヤニヤと表情を歪ませながら、一つ一つに目をやっていた。


――が、そこで気になる情報が入って来た。


秋風の情報では無い。名も知らぬ機体の名がタブレットに入り込んだ事を認識した彼は「新型?」と小さく呟きながら、そのデータに目を通した――瞬間。


「……ハハッ、アハハハッ、アハハハハ、ヒャハハハハッ!!」


 高笑い。回りに点在するディエチのパイロットたちにもその通信が届いたのか、一瞬身構える機体も存在した。


「こんな所で、お前の名前を見るなんてよぉ……っ! 【オリヒメ】ェ……!」

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