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戦いの中で-02

『こちら生徒会会長補佐・久世良司だ。旧世代パケット通信は出来ているな』


『こちら生徒会書記・清水康彦。問題無し。オレが趣味で通信システムと受信機を作ってて良かったな』


『やはり敵は現在の音声通信に使用される周波数帯の通信妨害を行っているようだな。旧世代のパケット通信は阻害されていない』


『音質は悪いけどねぇ。二千年代の人ってコレで通話してたってマジ?』


『オレが趣味で作ったものだからな。本物はもっとマシだったんじゃないか?』



 今、放たれた速射砲をゼロ距離から回避した秋風が、左右の拳でアルトアリスの顔面を殴りつけた後、脇腹を蹴りつけて動きを止めた敵機に向けて跳び蹴りを叩き込み、沈黙させた。レーザーサーベルを使用して、敵機の両腕両足を切り裂いたので、動けたとしても攻撃は不可能だ。



『第一班、そちらはどうだ?』


『あー、こちら第一班の村上明久です。今三機撃墜されましたけど、全機無人機なんで大丈夫っす。けどオレの指揮だとあんま持たないかもしれないので、誰か来てくれると助かります!』


『了解、我々の第二班が行く』



 現状確認。


現在高等部区画、中等部区画、居住区画を占拠しようと着陸した敵機は、全機放置。


続けて格納庫区画は、全戦力の八割――第二・三・四班を投入し、戦線維持に務めている。そして今、格納庫区画を占拠しようとしていたアルトアリスを全機撃墜確認。


続けて商業区画には残る二割――第一班の戦力を割いているが、これには現状苦戦中の為、久世良司の率いる生徒会組――第二班が商業区画に駆け付ける為、向かっていく。


自衛隊駐屯基地のある基地区画は――既に自衛隊駐屯基地に席を置く第507飛行分隊による迎撃準備を既に手配しており、敵の侵入を確認した段階で警告及び攻撃へと移っており、こちらも現在迎撃中だ。



秋沢楠の立案した作戦は、こうだ。


城坂修一は恐らく上空からの強襲で、一気に各区画へとアルトアリスを投入し、鎮圧する事。


 そして重要なのは自衛隊駐屯基地のある基地区画と、全ADの整備や補給を行う格納庫区画の鎮圧をされる事。何としてもこれは回避しなければならない。



だが、問題が大きく二つ。



AD総合学園は、敵の攻撃を確認していない段階で実弾装備を行う事は、文科省及び防衛省との取り決めで禁じられている。


その為、模擬弾頭装備の秋風を全機第二警戒待機を維持し、敵機の襲撃があった場合、まず模擬弾頭装備の無人操縦システムを搭載した秋風で攻撃し、敵機の攻撃を引き出した後、実戦装備へと切り替えた有人機で攻撃を開始する事。



もう一つは、居住区画等に要る筈の、住民の安全だが――


これは、本日全居住者対象の大型避難訓練を実施しており、九割の市民は既にシェルターへと逃げている事。


そしてさらに、避難訓練参加をサボった者に被害が万一にも及ばないよう、あえて中等部、高等部、居住区画へ戦力は投入せず、元々夏休みで帰省している生徒も多かったことから、もぬけの殻だ。


 敵対勢力の無いアルトアリスは現在迎撃されている格納庫区画か、もしくは商業区画へと向かっている。



そしてここからが、本当の作戦開始だ。



『――AD総合学園へと攻撃行動を仕掛ける、テロ部隊へと警告いたします』



 秋沢楠の声が、学園島全域に配置されたスピーカーより流れた。


これは通信によるものではなく、録音による再生で、敵による通信妨害の影響を受けない。



『貴君らは現在、無垢な子供の教育現場となるAD総合学園へ無秩序の攻撃を行っております。即刻中止し、投降願います。


 もし聞き入れる事が出来ぬという事ならば――この戦闘を指揮する城坂修一は、GIX-P006【風神】に搭乗の上、AD総合学園高等部第一校舎屋上まで、単独でお越し下さるよう、お願いいたします』



 その音声を聞いていた城坂修一は、風神に搭乗しながら、今AD総合学園高等部校舎へと向けて、ゆっくりと降下を開始。


第一校舎屋上には、二人の人間が立っている。


一人は知らない成人男性だが、もう一人は知っている。



その橙色の髪の毛を、夜風で揺らしながら上空を見据え、今風神を視認した少女――城坂楠。


 彼女は拡声器を手に持ち、声を吹きかけた。



『聞こえていますか?』


『……聞こえるよ』



 応じる修一は、機体スピーカーから声を放つ。



『互いに一時休戦と致しましょう。まずは、話し合いの場を設ける事が重要と考えますが?』


『互いの機体を待機状態とする、というわけだな』


『ええ。練度と兵力、どちらも現在は拮抗しておりますので』


『分かった――全アルトアリスへ通達。攻撃を一時中断せよ』


『ありがとうございます。――敵攻撃行動の中断を確認次第、第一、第二、第三、第四も攻撃行動を終了し、別名あるまで待機。第507飛行分隊の方々も、ご了承ください』


『第一班、了解』


『第二班、了解』


『第三班、了解』


『第四班、了解』


『第507飛行分隊、了解』



 しばらくして、発砲音の絶えなかった学園島が、無音となった。


それを確認した後、風神は高等部第一校舎にゆっくりと着地し、コックピットハッチを開けて、城坂修一が体を出した。



「僕の狙撃を狙ってはいないだろうね」


「まさか。日本には銃刀法というモノが存在し、AD総合学園も例外ではありません」


「言うね、楠」

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