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戦いの中で-01

 作戦を開始する。


城坂修一の言葉を、ヴィスナー全機と霜山睦が聞いている。


現在、AD総合学園の二千フィート上空には、ステルス輸送機が十七機、距離こそおいてはいるが、隣接して滞空している。


一つの輸送機には三機のADを収容でき、実際に総機体数は風神を含めて五十機。


それらが一斉に、空へ放たれる。


少しずつ、空から見る地上が見えてきて、その小さな島を捉えた一機の量産型アルトアリスが、率先してAD総合学園高等部格納庫区画へと着地した。



城坂修一の立案した作戦は、大量のAD兵器を投入した電撃作戦だ。


まず上空から急降下した量産型アルトアリス全機による着陸、十機編成で高等部区画、中等部区画、商業区画、居住区画、そして駐屯基地区画を占拠するという、作戦と言いつつ子供でも立案できそうな単純なものだ。


しかし、単純な作戦程効果は高い。


事実早々に格納庫区画にあるADを破壊し、駐屯基地区画も占拠してしまえば、学生や教師陣には成す術はないし、占拠した後であれば、横須賀基地からのスクランブルも慎重にならざるを得ない。


しかし、ヴィスナーはそれが若干不満だった。


勿論、彼女とて修一の目指す世界の事は知っているし、それを元々望んでいた人物が、彼女の崇拝するお父様である事も知っていた。


 だからこそ作戦には従うが、それでもリントヴルムより受けた屈辱を、ガキ共を殺しまくって発散しようとする彼女にとっては、詰まらない作戦としか考えられなかった。


だから、満足にロックもかけず、掌速射砲を向け、今銃弾を放とうとした時。



格納庫のシャッターが突然開かれ、何だと動きを止めたヴィスナーの隙を付くように。



115㎜砲の砲身を向けた三機の秋風が、今一斉に弾頭を、放った。



『な――ッ』



 突然の事で反応が遅くなったヴィスナーは満足に避ける事も出来ず、放たれた弾丸は全て着弾。


少し遅れて着陸した九機の量産型が慌てて拡散するが、しかし弾丸をまともに食らった一機は、何とも無さそうに立ち上がった。



『っ、は……? なに、模擬弾頭?』



 実弾の115㎜をまともに着弾すれば、機体は四散していてもおかしくない筈なのに、何ともない。


 ともすれば、それは実弾ではなく安全対策の施された模擬弾頭に他ならない。



『……はっ、アタシなんか模擬弾頭で十分だってェの……!?』



 湧き立つ怒りを抑える事無く、再び速射砲を構えて、三機の秋風に向けて、放つ。


着弾。避ける動作も、慌てる様な動きも見せる事無く散っていった秋風を見て、ヴィスナーはそこで何かがおかしいと感じ取る。



 格納庫の奥から、何かが動いた。



それは、姿勢を低くして走り、ぼうっとしていたアルトアリスの懐まで潜ると、レーザーサーベルを展開し、正確な動きでコックピットを、焼いた。



『実弾攻撃確認! 当方・坂本千鶴、実戦装備へと変更し、一機撃破!』


『結構。では無人機を含め一班三十機編成で作戦を開始してください』


『了解いたしました!』



 一機が落とされた事を知ったアルトアリスが、固まって速射砲を構えようとするも、しかし次々に115㎜砲を構えた高火力パックの秋風が格納庫から現れ、一斉にそれを放つ方が早かった。


弾頭の雨を躱していく量産型アルトアリス。それは狙いが浅いものもあれば、中には回避ルートを想定した砲撃もある。



『隊長、隊長代理!』


『第三班はこのまま高火力パックでの砲撃を続けて。味方に当てないでよ』


『では天城さん、千鶴、お願いします』


『了解!』



 高速戦パックを装備した、二機の秋風が115㎜の砲撃が止んだ瞬間、駆けた。


既に量産型アルトアリスの数は、格納庫区画へ着陸した数だけで言えば残り四機。



『な――めんなぁっ』



 アルトアリスは速射砲を放つ機体、電磁砲を放つ機体とそれぞれアクションは異なるが、突撃を仕掛ける二機に対して攻撃を開始。


しかし、冷静に射線を見切るように、キャタピラ装甲を駆使した稼働を見せる二機が避ける間に、その奥から冷静な115㎜の砲撃が襲う。



『ち、くしょ、何よ、何なのよぉ……っ』



 115㎜の弾丸を無視する事は出来ない。避けつつ、接近する秋風に向けて胸部CIWSを放つものの、その程度は堅牢なT・チタニウム装甲の前に弾かれるだけ。



『ッ――!』



 一機の秋風が振るったレーザーサーベル。真っ二つに裂けたアルトアリスの果てた姿を見届けた一機も、今真っ向から襲い掛かるレーザーサーベルを何とか避け、反撃として速射砲を向けようとするも、しかしそれは叶わない。



背後に回っていたフルフレームが、今四川を構えてそれを振るう。


背後から叩き切られたアルトアリスが姿勢を崩し、前のめりに倒れ掛かった所を、コックピットに向けて突き出したレーザーサーベルが貫き、沈黙。

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