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リェータ-07

「私は……私は……ッ、お姉ちゃんに、最後、笑って……って、トモダチを、大切に、って……そう、言われたの……ッ!」


「うん。それを破ってでも、復讐したい?」


「したいけど、したくない……ッ! お姉ちゃんの仇、取りたいけど、取りたくない……ッ! もう、頭ぐっちゃぐちゃで、よく、わからない……っ」


「これから、考えていけばいい。だから――ズーウェイは、死なないで。ボクの、大切な友達だもん」



 最後まで――哨は、ズーウェイから目を逸らす事は無かった。


梢は、そんな彼女の事を見て、ただ驚き、目を疑った。



――幼い頃、母親と喧嘩し、何時だって泣いていた、弱虫の哨。


――お姉ちゃんが守ってあげなきゃと誓った、か弱かった哨。



そうであったはずなのに、今の哨は、その面影を残しつつ、けれど慈母のような抱擁を以てして、ズーウェイの想いを受け止めきったのだ。



「ミハリちゃんは強ぇな」



 それは、リントヴルムが呟いた言葉。


声量からして、誰かに聞かせるために放った言葉では無いと、梢も気付いていた。


だから彼の言葉に返事はしないが、それでも最愛の妹が、狂人であるリントヴルムでさえも動かす程に、大きくなった事を、ただ喜ぶ。


そして――さらにリントヴルムは、三人にとって思いもよらない言葉を、今度は全員に聞こえるように、言い放つ。




「お三方。ここから脱出するって計画をオレが立ててるって言ったら、ノるかい?」




 突然の言葉に、三人は呆然とする他なかった。


リントヴルムという人物の事だから、本気ではないのではと考えるが、しかし彼の眼は真剣そのもので、涙を拭いながらズーウェイのが「どう、やって……?」と問う。



「その前に、いくつか確認だ。リェータちゃんはこのUIGがどこか知ってッか?」


「……いいえ。でも、輸送機の飛行可能距離と時間、気温等を鑑みると……多分、日本だと思う」


「やっぱか。オレもそうじゃねェのか睨んでたンだ。ンで、ココがニッポンだとしたら、非公式のUIGを建造できる場所なンざ限られる」


「……トーホク」



 現在、日本の東北地方、特に福島周辺の約六割は、原子力発電施設及び完全自動化整備の進んだ稲作場となっており、人の立ち入りが殆ど行われていない地域となっている。


仮に、日本のどこかに連邦同盟上存在する筈の無いUIGを建設する場合、どの地域が適しているかを考えると、この周辺になるのでは無いか、というのがリントヴルムとズーウェイの考えだ。



「ンでもって、アルトアリスはカタログスペック上で陸上作戦可能時間は二十三時間ちょい。派手に動かす事考えても、十五時間は十分に稼働できらぁな」



 仮に東北地方の何処かで無かったとしても、整備されしっかりと行われていれば、アルトアリスによる徒歩移動で十分に逃走は可能、という目論みだ。



「でも、脱出の方法自体、どうするんですか? いや、ボクも脱出自体は賛成ですけど」



 哨の目算では、UIG内のゲート等に搭載されているセキュリティシステムを突破するのは容易ではないし、ましてやAD兵器に搭載できる火器での突破は、不可能ではないが困難となり、突破を試みている間に鎮圧されてしまう。



「――リントヴルムさんかリェータさん、どんな低スペックでも構いませんので、通信端末を貸していただけないでしょうか」



 小さくため息をついた後、梢がそう申し出ると、リントヴルムが掌サイズの携帯端末を取り出した。



「性能自体は高いが、あくまで携帯だぜ?」


「通信さえ出来れば問題はありません。――清水程ではありませんが」


「セキュリティは突破出来るンだな?」


「ええ。後は作戦の実行を何時にするかで」


「今に決まってンだろ?」



 リントヴルムがニヤリと笑い、梢もまた、彼に合わせて笑みを浮かべ、携帯端末と自前の無線キィボードを接続。UIG内のローカル回線に侵入し、セキュリティシステムの改竄を行っていく。



「リアルタイムで改竄していきます。今すぐ脱出します」


「おう、リェータちゃん、動ける?」


「……はいっ」



 哨と梢の部屋を出て、走り出す四人。


二人の持つ役割から格納庫に近い部屋を割り当てられていた事もあり、特に妨害と言う妨害を受けずに格納庫へ辿り着いたはいいが、そこからが問題だ。



「リェータちゃん、二人は三号機に乗せてやってくれや」


「ええ」



 リントヴルムは、アルトアリス試作五号機の整備を行う整備班を殴りつけ、そのままラダー等を使う事なく、装甲を掴んで器用にコックピットへと昇っていく。


ズーウェイも同じく、試作三号機の整備班の手首を掴んで引き、男の頭を地面へ強く打ち付ける事によって気絶させ、そのままコックピットへ。

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