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オースィニ-06

「アンタは、どんな世界を作るつもりだ?」



 世界平和を成したいという親父。


そして雷神という機体を建造した。


そして風神という機体も建造した。


さらには、アルトアリスという機体の量産にも入っている。


それは、矛盾しているようにしか見えない。



「織姫、お前に聞きたい。人間の操縦するADと、AIの操縦するADなら、どちらが勝利すると思う?」



 いきなりの問いかけに、既に頭がこんがらがっているオレは、尚も今までの考え方と思考で、返答をこなす事が出来た。



「……状況によるけれど、力量が同等と仮定するなら人間が操縦するADじゃないか?」


「楠はどう思う?」


「えっと……私も、人間の操縦するADだと思う」


「それはどうして? 人間は恐怖などの感情によっても左右されてしまう。操縦をする人間が不確定要素となり得る要因にもなるのに?」


「それでも、AIでは人間の操縦以上をこなす事は出来ないと思う。


 だって感情が無いんだ、それは人間の持ち得るカンだったり、感覚を持っていない。


 その時に最適と思われる解を導き出し、行動するだけじゃ、場数を踏んだエースパイロット以上にはなり得ない」



 だから、状況によるけれど、という言葉を先に置いたんだ。


確かに、AIならばその辺にいる新米パイロットよりは強い個体を仕上げる事は出来るだろう。


だが、これまでの戦場を勝ち残って来た兵士以上にはなれない。


彼らは、様々な場数を踏んで、時には最適ではない答えを感じ、行動する事で生き残る、経験則と感覚が存在する。


AIは、戦闘経験を積む事は出来ても、感覚を有する事は出来ない。



「勿論、時としてそれが有利に働く事はある。だけど人間以上の嗅覚を持てないAIじゃ、戦場を知る者はそれの上を行く」



 オレの答えに、親父は複雑そうな表情を浮かべた。



「そう……そうだね。僕も、そうだと思う」


「何で、そんな苦い顔をしているんだ」


「正しいからだよ。正しすぎるんだ。……お前たちは子供なのに、どうしてそう戦場に慣れ過ぎてしまったのかと思うと、どうにもね」


「今更、親父面すんじゃねぇよ」


「そう、その通りだ。僕に父親面をする資格は無いと、分かっているけれど、それでもだ」



 親父は、紙の束を机に置いた。ドサリと重い音を鳴らした紙の束を、オレは表紙だけを見据える。



「以前僕達が根城としていた屋敷に、ある程度資料は残しておいたから、おそらくガントレットは何となく概要を想像してはいるだろうが、まだデータが足りない。後でそれを持って帰りなさい」


「どうせ、説明はしてくれるんだろう?」


「人が人へ伝達する情報には齟齬が生じやすい事も事実だからね。しっかりと資料を残しておくことが必要だ」



 親父が、窓越しに見える大量のアルトアリスを示す。



「あれは全て自動操縦によって動く自立型ADだ。


 まだテスト段階だから、量産の比較的容易いアルトアリス機で大量生産した。後に量産型風神の生産を進める予定だがな」


「それをどうするってんだ?」


「一から説明しよう」



 予め存在した椅子に腰かけた親父は、壁にプロジェクターの光を照射し、資料画像を映し出す。


 今映しだされる画像は、世界地図である。



「まず現状で世界平和を成す為には、非公式に【冷戦】と呼ばれる、新ソ連系テロ組織が行う情報奪取のテロ行為が問題となる」


「それは、レイスが元締めを止めれば事が済むんじゃないか?」


「違うな。レイスが管理する事によって火種を少なくできているんだ。レイスの管理が無くなれば、より多くの人命が亡くなる結果となり得る」



 レイスは新ソ連系テロ組織へ命令を下す事により、舞台となる戦場を管理する。


 そうする事で被害を最小限に抑え、かつ新ソ連系テロ組織に対して活動を抑制する事にも繋がるという。


確かに、新ソ連系テロ組織という存在が、例えば何の情報も無しに、ただ活動するだけになれば問題だ。


例えば、UIGへの襲撃は、襲撃を行うUIGの場所を把握している事が重要である。


仮に愛知県に存在するTAKADA・UIGへ攻撃しようと企んだ組織がいたとして、大雑把に愛知県にあるとだけ知っている場合――


 極端な話だが、あても無く主要都市へと攻撃行動を仕掛ける等も、あり得ない話ではない。


だが、細やかな座標さえ分かってしまえば、TAKADA・UIGが戦場になったとしても、それ以上に被害は広がらない。



「次に、新ソ連系テロ組織を操る国家・新ソ連系国家と、新ソ連系テロ組織の攻撃対象となる連邦同盟国家の存在だな。


 連邦同盟における情報開示を受ける権利が無いからこそ、新ソ連系テロ組織を操り、情報を得ようとする。


 言ってしまえば、先ほどの冷戦機構はこの二つの隔たりがあるからこそ起こってしまう」


「一番手っ取り早いのは、全国家が連邦同盟加盟国になる事……だよね?」



 楠の言葉に、オレと親父が首を振る。

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