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ズーメイ-01

敵が拠点とするUIGは、樺太島に存在する旧式のUIGである。


強固な電子制御によるセキュリティは突破する事が難しいものの、しかし旧型故に堅牢さでは現在のUIGと比較すればもろいものだ。


四六の有する強襲母艦である『ひとひら』に存在する作戦室に入室した城坂織姫、楠、聖奈、久世良司、村上明久、そして島根のどかは、パイプ椅子に腰かけて、モニターの前に立つガントレット大佐の説明する内容に耳を傾けている。



「作戦は単純な電撃作戦だ。敵のUIGへ歩兵部隊による爆発工作の実施、山岳に存在するUIGの出入り口を破壊し、諸君らのADによる突入だ」


「質問があります」


「なんだリョウジ」


「捕虜となっている明宮姉妹の安全が、このままでは確保できません。今作戦ではどのように奪還を行うと?」


「敵のAD総数は、アルトアリス型五機及び風神という少数部隊だ。歩兵部隊はADという脅威に対して有効にならないので、諸君らはあくまでADの殲滅に力を注げ。敵部隊のADを沈黙させる事が出来れば、後は白兵戦による奪還作戦が実施できる」


「アーミー隊はそっちに力を入れるから、今回のAD戦に参加できないって事っすか?」


「それもあるし、総計十二機のポンプ付きがやられた事が痛い。しかし予備機は何時でも稼働できるようにしてあるため、もし現場でADの損傷により行動不能となったら、信号弾を打ち上げろ。その場合は緊急用の展開ブースターによってポンプ付きを届ける」



 緊急展開ブースターは、外付け型のブースターユニットだ。通常のAD兵器では搭載した場合パイロットへの負担が大きいため、あくまで輸送用として用いられる。自動操縦による輸送となり、この自動操縦用のAIは清水康彦によって改修され、より高精度の物となったという。



「問題は二つだが、今回はある程度この問題を解決できる。エンドウ」


「ハッ」



 映像出力と共に、二機のADが映し出される。



「一機は勿論風神だ。しかし、風神の特性は主にパイロットへの負担を鑑みない高機動性によるものだ。UIG内はADが暴れまわるには小さな洞穴のようなものだから、風神の機動性は活かせない」


「ただそれは、こっちの雷神も同じことになりかねないって事ですよね」



 楠が漏らすも、しかし織姫は首を振る。



「映像を見る限り、風神のパイロットは狭い空間で戦う戦略に慣れているとは思えない。相手がリントヴルムなら警戒するべきだけど、あのパイロットならオレ達でどうにか出来る」



 そう、織姫と楠にはある程度狭い空間での戦闘経験もあり、風神と渡り合う事は十分に可能と踏んだ。



「そしてもう一機は、先日のプロスパーでお前たちが襲撃を受けた、レーザー狙撃銃装備型のアルトアリスだが、しかしこちらも狭いUIG内では取り回しが難しく、また内部破壊の可能性がある事から、使用を控えると予想できる」


「そしてあの武器は、今のところ量産されている気配はない。つまり、この機会に破壊さえ出来れば」


「もし今回奴らを逃してしまったとしても、状況の改善に繋げる事が可能という事だ」



 簡単な事では無いが、出来ない事では無いとしたガントレットに、全員が頷く。


そして、のどかもコクンと頷いて、拳を握る。



「……それに、この戦いで敵を全員やっつければ、それだけでハッピーエンドだよね?」


「ああ。もしシュウイチが何かを企んでいたとしても、それは尋問すればいい。そして敵を全て倒せば、レイスという資金源を失う事で、新ソ連系テロ組織の動きを抑制する事も出来る」


「なら、アタシ頑張ります! こんな戦い、早く終わらせて夏休み満喫しないとやってらんないし!」


「そう、その意気だ」



 ニヘヘと笑ったのどかの表情に、織姫は少しだけ視線をやると、笑みを浮かべる。問題なさそうだと感じたのだろう。


そして、作戦開始まで三時間を切る。



「奴らを叩くのに、早くていかん理由も無い。作戦開始まで各員は待機」



 そう言ったガントレットに続き、全員が退室を始める。


 織姫と楠が率先して部屋を出て、格納庫にある雷神の元へと行き、整備士達に喝を入れに行った事だろうとした聖奈は、最後まで立ち上がらなかった明久に声をかける。


「大丈夫、村上君」


「い、今更ながらに震えて来たっす……」



 無理もない。


織姫は言うに及ばず、楠は成績と実力、そして愛しい兄と共にいる事が自信に繋がった。


良司も優秀な成績と、自他共に認める優秀さが、自信になっている。


のどかはどうだろう。今は少々悩んでいるかもしれないが、元々彼女の強みは狂気である。彼女は考える事を辞めた時にこそ、そのケモノの様な性質を活かして戦う事が出来る。



けれど、彼には何もない。


こう言っては失礼だが――そもそも彼には、悪運と呼べるものしかなく、成績も並みだし、自信になるようなものが何一つない。


この状態で彼を励ました所で、却って逆効果を産んでしまうのではないかと思い、聖奈は正直に彼へ言う。

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