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ズィマー-06

その日、オレ――城坂織姫と、妹である楠は、四六の有する試作UIGの格納庫に呼び出された。


姉ちゃんの手配した車で向かうと、既にオレ達以外の面々がそこにいる。



秋風・フルフレームと共に、久世先輩。


秋風・高機動パックと共に、島根。


秋風・高速戦パックと共に、村上。


秋風・高機動パックと共に、姉ちゃん。


 そして今、雷神の元へオレと楠が向かって、それでパイロットが全員揃った形となる。



「急に呼び立てて申し訳ない」



 睦さんがいない為、現在は四六の指揮を任されている遠藤義明二佐が、状況の説明をする事となる。



「先日、アーミー隊はウェポン・プライバシー社から得られた情報を基に、レイスの有する基地を襲撃した」


「何故我々に声が掛からなかったのでしょう」



 久世先輩が問うと、それには姉ちゃんが答えた。



「多分だけど、私達に声をかけている内にお父さんが撤退して情報も残らない事を危惧したんじゃないかしら」


「その通り。ウェポン・プライバシー社が堕ちた事を知れば、即時撤退もあり得ただろうから、早ければ早い程良いとの判断だ」


「結果は」



 オレが気になる事だけをまず問う。すると結論自体は容易に想像できたが、しかし問題は内容だ。



「計十二機のポンプ付きが、四分も経過しない内に、風神によって破壊された」



 流石にこの内容はオレも予想しておらず、思わず唸ってしまう。


確かに風神という機体が雷神と同等スペックであるならば、可能ではある。


けれど問題はパイロットの方だ。オレと楠の二人が操縦する雷神で出来るかどうかならば可能だが、それ以外のパイロットで如何にして、それだけの機体を操縦したというのか。



「あの機体のパイロットね」



 姉ちゃんが呟き、村上が首を傾げる。



「あの機体?」


「村上君が助けてくれた、例の紗彩子が負傷した戦いで、私が交戦した機体。


 装甲強度と機体の格闘能力が、他のアルトアリス機より明らかに高かった。


 元々雷神に近いコンセプトなんだろうと思ったんだけど、アレは風神パイロットの試験用だったんじゃないかな、って」


「映像見れる?」



 姉ちゃんはコクンと頷いた後、自身の持つタブレットに機体のコックピットカメラの映像を映した。


素早い連撃による格闘、そして銃弾を跳ね返す脅威の装甲強度、何よりもパイロット自身へ与える負荷を考えぬ、無理矢理の稼働スピードは、確かに雷神に似た開発コンセプトの末に生まれた機体だろうと想定できる。



「ダディの部隊に映像が残ってれば、それと合わせて見る事が出来るんだけど」


「今回の招集はそれが理由だ。現時刻を持ってAD学園での待機を解き、四六はこれからアーミー隊に合流、次の作戦に備える事になる」


「二佐ぁ~、時間ってまだありますかぁ?」



 そこで、島根が手を上げて質問する。口調こそ砕けているが、しかし表情は真剣そのものだ。



「三時間後には出発予定だが、何故かな」


「雷神と模擬戦したいの。――多分、風神とまともにやり合えんの、姫ちゃん達とアタシしかいない」



 先ほど姉ちゃんが見せた映像を食い入るように見て、島根が核心を得たようだった。



「どうしてそう思った、島根」


「コイツ、多分まともな神経してないよ。アタシや、あのリントヴルムって奴より、数段ヤバい奴だと思う。でもアタシは、何となくコイツの癖、分かる」


「ソイツが風神に搭乗しているからこそ、オレと楠で戦うべきだとしたんだが」


「戦場じゃリンキオーヘンに対応しなきゃ死ぬじゃん。もし雷神が相手に出来ない状況で、ただやられてろっていうの?」



 一理ある。楠と視線を合わせて、彼女が頷いたので、オレも遠藤二佐へと申し出る。



「島根に賛成だ。どっちにしろ戦力強化に繋がるなら、一つでも出来る事をしておいた方がいい」


「分かった。聖奈君、模擬戦の準備に取り掛かれるか?」


「あ、じゃあ私と良君も、ちょっと模擬戦しよっか」



 姉ちゃんが久世先輩の肩に触れると、先輩も「ええ」と頷く。



「例のレーザー兵器への対抗策ですね」


「そっちは神崎から聞いてるけど、超遠距離からのレーザー狙撃なんか、対処する方法あるのか?」


「うん。良君と紗彩子の映像データ見せて貰って、高田重工の開発に持ってったんだけど、あのレーザー銃は多分、秋風に搭載されているレーザーサーベルの技術を応用してる」



 レーザーサーベルは確か、数百メガワット程度の熱量を放出し、それを電磁波によってサーベル上に形成する技術だった筈だ。これを狙撃中に転用したという事は――。



「あ、電磁誘導装置で掻き消せるんじゃ?」



 そこで村上が指を鳴らし、姉ちゃんが「ご明察!」と鳴らし返す。



「けど、タイミングは相当シビアだし、それに肩部に搭載されてる大型電磁誘導装置の出力を相当に上げないといけないから、滑空はおろか姿勢制御もし辛くなる。でも一撃でコックピット潰されるよりマシだから、いざって時に使えるようにしときましょ」


「あ、それオレもやりたいっす! つっても、あんまりオレじゃ、役に立つかわかんないけど」


「ううん、村上君がいれば、案外何とかなるかも。一緒にやりましょ」



 善は急げだ。


各員は機体へと乗り込んで、一度試作UIGから出て、既に夕暮れで誰もいない高等部グラウンドの使用申請を無理矢理通した姉ちゃんが、周りに人っ子一人いない事を確認した上で、それぞれ行動を開始した。

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