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生徒会-02

 ――と、そんな世間話をしているところで、オレと哨の前に、二人の生徒が立ち塞がった。



一人は、短い銀髪をした、俺より少し背の高い男だった。まぶたが重いのか物凄く眠そうな印象がある。もう一人は、腰まで伸びるロングの黒髪を下し、その鋭い目付きに似合う、大人びた顔立ちをした女性である。



「あの」


「城坂織姫だな」



 銀髪の男がオレの名を呼び、戸惑いながらも頷くと、隣に立っていた女性がぺこりとお辞儀をした。



「私は、三年OMS科所属、及び生徒会副会長を勤めております、明宮梢こずえと申します」


「同じく三年OMS科所属、生徒会書記、清水康彦」



 名を名乗る二人。「はぁ」と適当な返事を返した所で、女性が名乗った苗字に、どこか聞き覚えがあった。



「えっと、明宮って事は、哨の」


「はい、私は哨の姉でございます。愚昧がご迷惑をおかけしていなければ良いのですが」


「いや。妹さんにはお世話になってます」



 などとありきたりな言葉を口にしつつ、哨に視線を寄越したが――彼女は、今まで見た事も無いような、心底イラついていると言うような表情していて、少しだけ驚いた。



「……何の用さ、お姉ちゃん」


「別に。あなたに用はないわ。しばらく席を外しなさい」


「はぁ? ボクがお姉ちゃんに命令される筋合い無いんだけど」


「あなたは本当に何時まで経っても子供なのね。姉として恥ずかしいわ」


「あーあー、すみませんでしたー。でも姫ちゃんに何の用なの? 一緒に居る所を邪険にされるんじゃ、用を言ってくれないと気が済まないじゃん」


「あなたに知る権利はないわ。早く席を外しなさいと言っているのよ」



 睨み合う、明宮姉妹。ウチの姉ちゃんが何時もにこやかな人だから、姉と言う者がこれほど乱暴な物言いである事に戸惑いを隠せない。



「生徒会長が、城坂織姫に会いたがっている。来てくれ」



 そんな様子に構っている暇はないという態度で、清水と名乗った男が要件を手短に話した。



「はぁ……生徒会って事は、村上と楠が所属してる所ですよね」


「そうだ。来てくれ」


「まぁ別に、構わないですけど」


「ではこっちだ」



 翻り、歩き出す清水さん。オレがその背についていこうとすると、梢さんもオレの隣に立って歩き始めた。



「ちょっと! 生徒会が姫ちゃんに何の用なのさ!」


「だから――あなたに知る権利はないと、何度言わせるの」



 最後にキッ、と哨を睨み付けた梢さんの表情に、哨が歯を鳴らし、その場で立ち尽くす姿を、オレは何だか申しわけない気分で見据えていた。


後で無糖のコーヒーを奢ってやろう。



彼女は、砂糖入りのコーヒーが嫌いなのだ。



 **



連れられた場所は、三年OMS科の教室である。


 OMS科とは、パイロット科、整備科と同じくAD学園にある学科の一つである。オペレーティング・マニピュレート・システムと呼ばれるAD兵器の操縦システム構築を勉強する学科であるのだが、OMS科の生徒数は高等部三学年を合わせても、四人に満たないと言う。


と言うのも、内容があまりに複雑すぎるが為、編入試験にほとんど合格出来ないというのが現状で、編入システムに問題があるらしい。かと言って難易度を下げる事は避けるべき事態なので、改善が難しい所だと聞いた。



 部屋のドアを開けて入室した清水さんに続き、部屋に入り込むと、梢さんがドアをしっかりと閉めた。


 そこは教室と言うよりも、談話室と呼ぶ方が相応しい内装をしていた。教室の中央に長机が二つ置かれており、パイプ椅子が乱雑に配置されている。


 長机の奥には、教卓にも似た大きな机があって、それだけやけに立派で、椅子もゆったりと腰かけられる、数万円はしそうな椅子であった。



「こちらへどうぞ」



 長机の前に一つのパイプ椅子を用意して貰った上で、そこに着席すると。


眼前の立派な椅子を回転させ、その席に腰かける――少女と目が合った。



「城坂織姫さん」


「あ」


「私は一年Aクラス、生徒会会長を務めております、秋沢楠と言います。宜しく」



 橙色の髪を後頭部でひとまとめにした、端麗な顔立ちが印象強い少女に、オレは見覚えがあった。



――何せ、毎日毎日顔を合わせ、とりとめもない会話を繰り広げる間柄なのだから。



「楠……? 生徒会やってるってのは知ってたけど、会長だったのか。なんだよその余所余所しい言葉使い。それに、秋沢って苗字は」



 妹である城坂楠だ。何時もオレの事を「お兄ちゃん」と呼び、柔らかな笑顔を向ける妹であり、長い時間を一緒に過ごしたわけではないが、最近ではちゃんとした会話を設ける様にもなったのに、今はまさに他人行儀、といった所だ。



「……何を言っているのか、分かりかねます。私は、秋沢楠です」



 フンと鼻でオレの事を笑い、両手の指を絡ませてどっしりと椅子に腰かける姿は――確かに、いつもの楠と様子が違う。やはり他人なのだろうか。



「ん……すみません。人違いでした」



 確かに、彼女が本当に楠であるのならば、それこそ帰って顔を合わせる時に話をすればいいだけなので、わざわざ生徒会の会長として、オレを呼び出す事もあるまい。



「で、話しって」


「あなたには、生徒会へ所属して頂きます」


「は?」


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