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作戦終了-07

無事にティレニア海上の島に建てられた豪邸に辿り着いたオースィニ、リェータ、ズィマーの三人と、別動隊として活動していた修一とヴィスナーが、顔を合わせる。



「まず、一つ聞きたいのだが、ボス」



 オースィニが、修一の後ろを歩く、三人の女性に目をやる。


資料に目を通した彼女の記憶が正しければ、その三人は本来四六の人間であるはずだから。



「彼女達の事かい?」


「ああ。――もしや今度は私たちが囮だった、という事かい?」


「その通りだ。正直に言うと、今回君たちが行った作戦に意味はない」


「だが機体を破壊すれば、彼女達をしばらく無力化できると」


「君たちがただ破壊しただけならば、その通りだ。しかし歩兵部隊を突入させ、プロスパーにはほとんど余力が無い状況だ。


 プロスパーは別の部隊が着任し、アーミー隊は恐らく現地で置き去りにした者から情報を尋問してウェポン・プライバシー社に乗り込み、更に四六は霜山睦という求心力を失った結果、少ない戦力の補給として、日本へ一時帰国するだろう。


 その時に、恐らく雷神の修理も、秋風の修理も行う筈さ」


「、っ!」



 修一の胸倉を掴み、ギギッと歯ぎしりを鳴らす彼女の事を、修一の後ろにいた哨が怯えている様子が見て取れて、オースィニは舌打ちと共に、彼を放した。



「ごめんよ、 ragazze(少女達)。怖がらせるつもりは無いんだ」



 精いっぱいの笑顔を浮かべて、オースィニは哨へ手を差し伸べる。哨も、若干怯えつつも手を繋ぎ、そのまま梢と、睦とも手を繋ぐ。



「では、せめて説明を要求しよう」


「そうだね。ブリーフィングルームへ行こう」



 移動の間、全員は無言だった。


睦も先日注入された睡眠導入剤の影響か、まだ頭がぼぅっとしていて現状把握が上手くできていない状況であり、哨が彼女の手を引っ張り、連れ歩いている状況だ。



「おいシューイチ、そのカワイコちゃん達、誰?」


「特別ゲストさ。ちゃんと説明をするので、そのままかけていてくれ」



 部屋に先んじていたリントヴルムにそう説明した修一と、いつもの定位置にかけていくメンバー。


 その中でもいつもお喋りばかりのオースィニが口を閉じている状況に疑問を持ち、ヴィスナーに「何があったン?」と問いかけるも、彼女はプイと顔を逸らすだけで、何も答えなかった。その素っ気ない態度がリントヴルムの性癖に刺さった事は黙っていた。



「リントヴルムにも分かりやすく説明する為に、順序立てて説明しよう。


 ――今回オースィニ、リェータ、ズィマーの三人に命じた、AD学園生徒の秋風破壊命令は、囮の方便に過ぎない」


「またかよシューイチ」


「敵を欺くにはまず味方から。囮という事を知っている君たちの動きを見たガントレットが数多の状況を想定し、動くとも限らなかった。ガントレットはそれ程恐ろしい相手だ」



 そして、と一拍置いてから、修一は特別に座り心地の良いふんわりとしたチェアーを用意して、そこに三人を座らせた。



「本命はこの三人だ。――まぁ、正確に言えば彼女、明宮梢君は偶然だがな」


「お、自己紹介タイム?」


「君と話をさせると教育上問題がありそうなので、僕が説明する」


「ちぇっ、なんでぇ」



 それぞれ、明宮梢と、明宮哨と、霜山睦を説明した修一。



「梢君はOMS設計などの成績優秀者で、彼女には風神のOMSプログラミングをお願いする。


 そして哨君は、あの織姫とパートナー契約を結んだ技師であり、雷神のポテンシャルを引き出す事に特化した少女だ。彼女にも、風神の整備士をお願いする」


「それで、霜山睦さんは? 彼女は四六の責任者であり、指揮者だろう。そんな彼女を捕虜として、それで彼女達の戦力を低下させる目的かい?」



 オースィニの、苛立ちを隠しきれていない言葉に、リントヴルムはようやく(利用された事を怒ってんのね)と理解し、若干笑いを浮かべた。



「彼女は風神のサブパイロットだ」


「何?」


「彼女は風神プロジェクトの薬物投与被験者――その百番目なんだよ。彼女が風神に搭乗する事で生体認証を突破でき、あの機体を動かす事が出来る」


「サブパイロットって事ぁ、誰かがメインパイロットやるんだろ? オレやりてぇなぁ」


「残念ながら、風神も殺人的なGによって肉体への負担が無視できない。リントヴルムでは五分と持たずに死ぬことになる」


「うへぇ、乗ってみてぇ。いややっぱ乗りたくねぇ、いや乗りたい……?」


「では、誰が乗ると?」



 オースィニの言葉に、修一は視線を――黒髪の少女へ、向けた。



「ズィマー」


「う……? シュー、イチ?」


「君ならば、あの機体を乗りこなす事が出来ると、信じている」


 

瞬間。


オースィニとリェータの視線が、一瞬で殺意に変わった事を、修一もリントヴルムも気付いていた。


しかし、二人はそれを無視する。



修一にとって、これは決定事項であるから。


リントヴルムにとっては――面白い事が起こってやがるという、享楽がそこにあったから。

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