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13歳 そして僕らは出会う

1986/04/某日


  中学二年になった新学期の始業式の日。


 僕にはクラス替えで変わったクラスメイトの顔を覚える余裕は全くなかった。


 なぜなら雪の残っている北国の春休みに、酷い風邪を引いてしまった。


 それなのに僕は春休みだと言うのに寝込んでいる暇などあるかと、熱もあって体の調子が悪いのに遊び歩くというアクティブさが招いた自業自得の結末だったからだ。


 というわけで案の定、風邪を拗らせてしまい高熱を出していたのである。


 だからと言って、クラス替えをしたばかりの新しいクラスに初日から休むという孤高の存在になる勇気はなく、朦朧とする意識の中で、早くホームルームが終わり、家に帰って寝る事だけを願っていたのであった。


 ホームルームがおわり、家に帰ってすぐ寝たのにも関わらず、翌日の朝になっても熱が引かなかったので、学校を休んで病院に行くことになった。


 診察した医師が馬鹿じゃないかコイツという口調で言った。


 「何でこんなになるまで来なかったの?肺炎になりかけてるよ」


 それから二週間、家で寝て過ごすこととなる。



 「キミが杉岡君?ずっと来ないからどんな人かと思ってたw」


 伝説のクラスメイトになりかけ、二週間も休んで新しいクラスに入るというのはなかなか気が引けるものがあったのだけど、諦めて自分の席に座ると隣の席の女子が笑いながらそう言ったのである。


 それが木村さんとの初めての出会いであった。


 最悪である。


 「わかる?ずーっと私の隣の席が空席なの。その気持ち。風邪だったら二三日休んだら普通は出てくるじゃない?それが何日経っても出てこない。これは死んじゃってるんじゃないかと思ったわよ。私の輝かしい中学二年生の始まりにどんな汚点を残してくれるのかと思ったわ」


 彼女はそう言ってケタケタ笑っていた。


 「肺炎だから仕方ないじゃないか」


 僕はそう抗議するのだけれど、担任から伝え聞いていた僕の春休みにおけるお馬鹿な振る舞いを彼女は自業自得であると切り捨てた。


 僕らは二週間の穴を埋めるように授業中もよく話をした。


 彼女は良く笑い、お喋りだった。


 多少、クラスの女子から浮いた部分はあったのだけど、そんな事を気にする様な人ではなかった。


 だから浮いていたのだと、後になって気が付くのだけれど。


 「わたしね、お母さんにね、キョンキョン(小泉今日子)に似ているとよく言われるの。だから杉岡くんも私の事をキョンキョンと呼んで良いわよ」


 ?


 そんな訳のわからない事をいきなり言うちょっと変わった子だったけれども、となりの席効果もあるのかも知れないけれども、そんな彼女の事を好きにならずにいるわけがない。


 僕は惚れっぽいのだ。


 そしてちょっと変わっていて、面倒くさそうな子がタイプでもある。


 だけども僕はまだ中学二年生であり、そんな気持ちをどのように持ち続ければいいのかも解らない。


 将来的にはささやかでも幸せな家庭を築ければいいなとは思うけれども、そこまでの課程はノープランだった。


 とりあえず、この好きだという気持ちを伝えなければ後にも先にも進まないとは理解していた。


 キョンキョン(自称)とは、よく話しもするし、クラスの中でも仲が良い方だと思うし、夏が終わる頃にはクラスメイトの何人かは木村さんに対する僕の気持ちに気が付いているクラスメイトもいるようだった。


 確率を上げる為に、僕は秋になるまで彼女との距離をさらに縮めるべくして、戦略と戦術を研鑚したのである。


 まさに蜜月。


 これが黄金時代。


 時は来た!!


 木村さんに僕の気持ちを伝えるべく、クラスの女子に仲介を頼んで学校帰りの後援に呼び出して告白した。


 「好きです。つき合って下さい!!」


 「は?それは無理」


こうして僕はそれまでの努力も全てドブ川に流し、 いままでの蜜月な日々は何だったんだと思いながら、泣いて過ごす負け犬の如き人生の始まりだったのである。 

次回 14歳 

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