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神々の街。  作者: 夜久
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プロローグ

西暦30XX年。

技術の進歩していた20世紀からさらに衰退化した未来。

この時代の人々に紙幣や金貨といった概念はなく、太古の昔のような、物々交換が主流である。

発展していた過去の創造物等は【遺跡】と呼ばれ、管理され、使用されている。

だが、発展していた過去と違って衰退した未来イマには、いくつもの惑星が一つの【国】として存在し、繁栄している。

そして、そんな中にもやはり、神は存在した。

【国】の統治者であり、そして、それぞれの【街】の守護神として。

この物語はそんな神々の話。

過去と現在、そして未来を唯一すべて知る、神々の話。



「うーん……」

ゼウスは、暇を持て余していた。

毎日の日課であるアルボルの街の散歩はとうに終えたし、今日の新聞だって既に二回は目を通した。

他の街に行こうにも、きっとみんなはまだ職務の途中であろう。特にウラヌスの統治するカエルムの街では事件が起きたらしいし。

彼女・・はふうとため息をつき、自身のその長い金色の髪をくるくると弄んだ。

「アルボルが平和なのはいいことなんだけど、こうも平和すぎて暇になるのも嫌だなあ」

彼女は不謹慎だと分かりつつも、そう呟きを落とした。

窓の外をふと見ると、外はまだ明るかった。けれど、そろそろ街の子供達がおやつを食べたいなどと母親や祖母に強請る時間だろう。

騒がしい方が好きだけれど、たまには平和すぎるのもいいか、と彼女が頬を緩めた時。

「ゼウス、起きてるのか!?」

勢いよく部屋の扉を開けて入ってきたのは、青い髪の青年だった。

「ん?やあ兄さん、起きているとも。丁度暇を持て余していた所なんだ。どうしたの、そんなに息を乱して

ゼウスが兄さんと呼んだ青い髪の青年__メルクリウスは、荒々しく息をしていたのを落ち着かせると、彼女にでこピンを喰らわせた。

「痛い!来て早々なんて酷い仕打ちを!!」

「お前が会議を忘れるのが悪いんだろうが……!!」

彼がそう毒づくと、「えっ!?」とゼウスは驚いてカレンダーを見た。

今日を指し示す数字の下には、彼女の字できちんと『会議(昼から)』と書かれてあった。

「えっ、あ、あー……」

彼女は冷や汗を流しながら後ろを恐る恐る振り返った。

彼女の後ろには、怖すぎるほど爽やかな笑みを浮かべたメルクリウスが立っていた。

「さ……3分で着替えてきます……!!!!」

言うが早いが彼女は走って更衣室へと向かった。


メルクリウスの言う『会議』とは、それぞれの街の守護神が一斉に中央都市「ソール」へ足を運び、互いの街の現状報告をし、改善点等を話し合うことである。

けれども、ゼウスは『会議』と称してただ駄弁りたいがために毎週と言っていい程神々を集めるのだ。

それ故に、ゼウスが神々に収集をかけるため彼女が会議を忘れることはほぼ無いのだが……今回ばかりは違ったらしい。

「全く、来ないと思ったら当の本人は昼寝をしかけているし……」

メルクリウスはさらに大きなため息を吐いた。

「仕方ないでしょ、私だって忘れることくらいあるよ」

ゼウスは頬を膨らませて反論した。

木製の扉を開け、外へ出るとこの季節特有の暖かな空気が彼女の髪を攫った。

「こんな気候だと眠くなるのも仕方ないけどね〜」

「全く……」

メルクリウスは呆れて物も言えない、と頭をかくと、ゼウスの前を歩き出した。



ゼウスの家から少し離れた場所へ着くと、彼女は転送装置〈ネブラ・マクラ〉を起動させた。

このネブラ・マクラは各街に一台ずつ設置されていて、ここアルボルの街とソールや、その他の街と繋がっている。

そして、ネブラ・マクラは衰退化した現在に残る珍しい遺跡の一つでもあるのだ。

彼女は自らの掌を液晶に翳した。

液晶が彼女を認証すると、透明なガラス製の扉が開いた。

手馴れた様子で行き先指定、人数を設定すると彼女はそっと目を閉じた。

次いで、体を上から強い力で引っ張られる感覚がした。ネブラ・マクラの独特なアラームが鳴ると、彼女とメルクリウスは目を開けた。

目の前にはソールの賑やかな街並みが広がっていた。

ゼウスはネブラ・マクラを降りると軽やかな足取りでソールの中央にある、この国の中枢『ムンドゥス』へと向かった。

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