エレンとリリー
エレンは、おっとりした少年です。そのせいか、同い年の男の子たちからいじめられます。
エレンが川縁を歩いていると、男の子たちの声が聞こえてきました。
そこにいたのは、エレンをいじめてくる三人組でした。
彼らは「飛べ、飛べ」と言いながら、木の棒を使って蛙を驚かせていました。
いつものエレンなら、彼らに関わらないよう離れるのですが、今日は違いました。
「止めろよ、蛙がかわいそうじゃないか!」
三人は、手を止めてエレンの方を見ました。
「何だエレンか。俺たちに文句でもあるのか?」
三人の中でリーダー格のダグという子がエレンに近づいてきました。
「蛙をいじめるなんて、良くない、と思って……」
エレンは、自分より大きなダグが目の前にきたので、後退りしてしまいました。
「エレンのくせに生意気だぞ!」
ドンッとダグはエレンを突き飛ばしました。
「どうした。早くやり返してこいよ」
尻餅をついて動けなくなったエレンを他の二人も加わって囲みました。
その時です。
「痛っ、誰だ!」
ダグの背中に何かが当たりました。彼が足元を見ると、それはニンジンでした。
「あんたたち!またエレンをいじめてたわね!」
ニンジンをぶつけてきたのは、リリーという女の子でした。
「さっさとどっか行きなさい!」
リリーは、持っていたバスケットからもう一本ニンジンを取り出しました。
「おこりんぼうリリーだ!逃げろー!」
ダグたちは、一目散に逃げて行きました。
リリーは、逃げて行くいじめっ子たちを睨みながらエレンの側へ行きました。
「あんたね!何だっていつもやられっぱなしなの!」
リリーは、未だに尻餅をついているエレンの前に仁王立ちになり、今度はエレンを睨みます。
「あ、えーっと、ごめん……でも、助かったよ。ありがとう」
エレンは、にっこりとしました。
「っ……!もう良いわ!」
リリーは、エレンのこの笑顔に弱いのです。
「それより、ニンジン、汚れちゃったじゃない」
リリーが投げたニンジンは、少し泥がついていました。
「洗ってくるよ」
そう言うとエレンは、ニンジンを拾い、川まで行きました。
リリーもニンジンを洗っているエレンの側に座りました。
「で、今回は何でいじめられてたの?」
「蛙がいじめられてて、助けようと……」
「それで、あんたがケガしてたら意味ないじゃない……」
「そうだね……あはは」
「笑い事じゃないわよ!帰るわよ!」
リリーは、さっさと立ち上がると歩き出しました。
「ま、待ってよ~」
エレンも急いでリリーの後を追います。
エレンとリリーは、お互いの家に着きました。二人の家は隣通しなのです。
「ねぇリリー、明日は林に行こうよ!見せたいものがあるんだ!」
「見せたいもの?何なの?」
「ひみつだよ、明日のお楽しみ!」
エレンはとても嬉しそうに言いました。
「ふ~ん、ひみつねぇ、まあ、楽しみにしとくわ。さよならエレン」
「うん!じゃあねリリー」
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エレンは、リリーの家の前で彼女が出てくるのを待っていました。
しばらくすると、バスケットを持ったリリーが出てきました。
「おはよう!リリー」
「おはようエレン、お弁当作っといたわ」
「わあ、ありがとう」
エレンは、嬉しそうに笑いました。
「林に行くって言うから作ったのよ。さあ行きましょ」
エレンとリリーは、林へと向かいました。
林道まで来ると、草木が青々と茂っています。小鳥のさえずりも聞こえてきます。
ここには、リスもいるので、エレンはリスを見つける度に「あそこにリスがいるよ」と指を指して教えます。
「ねぇエレン、あなたは私にリスを見せたかったの?」
「違うよ~もうすぐだから」
「いい加減教えなさいよ~」
「あ!こっちだよ!」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
エレンは、突然走り出しました。そして、開けたとこにやって来ました。
「あなたねぇ……突然、走り出すとか……何、考えてんの……」
「ご、ごめん、でも、ほら見て」
「何……」
二人の目の前には、橙色のヒメユリがたくさん咲いていました。
「きれいね」
「でしょ!リリーにも見せたくて、気に入ってくれた?」
リリーはうっとりとしていました。
「リリー?」
「え?あ、そうね……エレンにしては、やるじゃない。それより、もうお昼にしましょ。走ったからお腹すいたわ」
「そうだね」
リリーは敷物を敷き、そこにバスケットを置きました。バスケットの中には、水筒とサンドイッチが入っています。
「わ~美味しそうだね~食べていい?」
「もちろんよ。ほら、紅茶もあるわ」
リリーは水筒からコップに入れた紅茶をエレンに差し出しました。
「ありがとう、すっごくおいしいよ!」
「あ、当たり前よ、私が作ったんだから」
リリーは、顔が赤くなってしまいました。
「どうしたの?顔が赤いよ?」
「な、何でもないわよ」
「そう……?ところでリリー、ヒメユリの花言葉って知ってる?」
「ヒメユリの花言葉?えーっと……『強いから美しい』だったかしら」
「うん!僕、お母さんから聞いたんだけど、その時リリーみたいだって思ったんだ!」
「何言い出すのよ、いきなり!」
「僕ね、このお花リリーの次に好きになっちゃった」
「……!」
リリーは耳まで真っ赤になってしまいました。
「あれ?どうしたの?」
エレンはリリーの顔を覗き込みました。
「何でもないわよ!」
エレンとリリーは、それからずっーと一緒にヒメユリを眺めていました。
花言葉を使って書いてみました。
花言葉は色々あるので調べたので、自分が知ってるのと違ってもあしからず。




