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1-ハッケン-

あれ、0時投稿って言ったのに24日にしてない←

すいません、セットするの忘れていました。ちゃんとした0時投稿は25日からで。

 とりあえず今日は、お昼の12時←(活動報告より)

 その日、色素の薄い茶色の髪・紺色の瞳を持つ中学二年生、園枝颯希は初めて授業をさぼった。その確固たる意志は誰にも負けやしないだろう。


 まず、颯希はいつするか考えた。そこで、午前中の授業は出て午後からさぼることにすると決めた。午前から居なかったら無断欠席とされ、親に連絡がいくだろうと見越してのことだった。

 次に、どこに隠れるか。有名であり、人気なのはなんといっても屋上だ。今はちょうど夏で、気候は最悪。ギラギラとした太陽が照りつけてくるだけである。颯希は夏の気候が大嫌いだ。その理由は簡単、単に暑いためである。そのため、颯希は適度に日影がある中庭を選んだ。多少、虫がいるだろうが虫より日差しの方が嫌いである。


 さて、あとは決行するのみ。


 颯希の通う学校は実は都内屈指の名門私立なのだが全二百人程度いる二年生の中で常にトップ近くを誇っている。さらに、空手の実力は高く河原割りもお手の物。また、清潭な顔立ちで人あたりも良い(というか周りとあまり干渉しない)。しかし今まで一度も授業を欠席・早退、無論、無断欠席をすることもなくまじめである。

 これらを含め、颯希が授業をサボろうと思ったのは一種の混乱を狙うためだ。というか、夏休みが次の日だというのに午前も午後も勉強するこの学校に少し嫌気がさしたというべきか。日々の退屈な生活に飽きてしまった、と言ってもいいのだろう。とにもかくにも、颯希はそのどうでもよい計画をその日実行に移った。


 雲一つない青空の日だった。


 中学二年生に三か月前になったばかりの颯希は授業をさぼっている。昼休みにふらりと席を立ち、そのまま中庭にいついたのだ。強い日差しが木洩れ日となっていたり、いい匂いの草木・花の香りにふわりと颯希のショートカットとの髪や枝につく葉を揺らす優しい風に包まれて、颯希はころりと眠ってしまっていた。


 〝神木〟といわれる大きな桜の木(毛虫が降ってきてもいいように颯希の上だけ完全防御だ)に寄り掛かり何ともいえぬベストポジションに驚きながら颯希はその思考に支えられるまでもなく、温かな天然ベッドの中眠っている。


 それから数時間立った頃だろうか。颯希は目を覚ました。目の前が真っ暗になっていることからすでに日が暮れてしまったのかと多少焦るが何とも穏やかな気持ちで目が覚めたので気持ちの焦りは一瞬で消えた。

 うーと伸びをし、草が生えている地面に触れた。――否、生えていると思っていた地面に触れた。柔らかな草の感触を期待して触れたのだがどうにもざらざらとしている。さらに、周りを見渡すと光源がなく、唯一有ると言えるのは大きな月の明かりだけだったがそれさえも雲に隠れていた。そんな状態で目を覚ましたのだから、周りが全く見えないのは納得がいった。完全な闇なのだ。


 雲が流れ、月が出てきた瞬間、周りの景色があらわになり颯希は絶句した。


 そこにあったのは、学校の中庭とは似ても似つかない景色だったのだ。


 神木だと思い寄り掛かっていたのは青々とした葉を蓄える大樹ではなく朽ち果て、颯希がいた少し横の根元には大きな穴が開いており、折れた枝は時折吹く強い風に虚しく揺れていた。さらに、颯希が座っていた地面には草の一本も生えていない。乾燥しきっていた。颯希の周りは木々に覆われ、周りの状況がこれっぽっちも分からない。なぜかそこだけこれ見よがしに茂っているのに少し驚き、むかついた。

 ただ眠っていただけで、まったく違うところに来てしまった自分に驚くが、それより冷静に状況分析をしている自分がいることに颯希はただただ驚いた。たった一回、しかも一日ではなく午後だけと言うなんと至極親切な授業の無断欠席でなぜこんな目に合わなければならないのか。

 そう思い、立ち上がりながら小さいころから習っていた空手で少し遠いところで生い茂る木々に回し蹴りを喰らわせた。立派な木を倒すほどの実力はない颯希だが今は怒りのパワーもあるのかかなりひびが入った。満足したのか、自分がいつの間にかそこにいたであろう朽ち果てた木のそばに座った。


 とりあえず、今の状況を確認しようと考えた。なぜここにいるのか。それは皆目見当もつかないがどうやら眠っていた時の記憶がほぼないことから、どこかへ誰かに連れ去られたと颯希は思っている。私立に通うならそこそこお金があるだろうと踏んだ身代金目的の誘拐かと考えた。ただそうなると、見張りや拘束器具がどこにも見当たらないのが不思議だ。

 ここがどこなのか。勿論、それも皆目見当もつかないものだ。というか、こっちの方がつかない。こんな朽ち果てた木を中心に乾燥しきった地面、なぜか三百六十度ぐるりと木々に囲まれている、という土地には訪れたことも聞いたこともない。まあ、日本もその気になればそこそこの穴場だってあるだろうし、これを考えるのはやめにした。

 誰が誘拐を企てたのだろうか。これもわからない。というか、初めの身代金目的の誘拐を仮に本当だとするならば犯人を考えるのは無理がある。誰かにこっちにおいでをされた覚えもないし、というかされても易々とは行かない。ここは黙って一人で犯人(誘拐を本当だと仮定した場合存在するだろう人物)を待つことにする。


 そんなことを考えていると生い茂る木々の一部がごそっと揺れた。ついに犯人とご対面かと思い、一応すぐに対応できるように心を構えておく。こういうのは気弱な女子を演じていれば無駄な危害は加えられないだろうと考えているのだ。


 木をかき分けてくる人物はどうやら木に火をつけたものを持っているらしい。松明(たいまつ)というものだろうか。そんなものを使うなんて、よっぽど田舎なのだなと思った矢先、それを持った人物が現れた。


 みすぼらしいフードが付いたコートをかぶっている。ベージュのような色で松明の明かりに照らされ、その人物の姿が浮き彫りになる。背が高いようで百七十ぐらいはありそうなものだ。細身の肩、すこし膨らんだ胸から女性だとわかる。フードから少し見える髪が真っ赤だ。


 女は颯希が目を覚ましているのに気が付いたようで、一直線に颯希に向かい歩いて来る。どう出るかと思い、乾いた唇を舌でなめた。目の前に立った女は何の行動も起こさず颯希をじっと見る。するとフードをとり、その顔をあらわにした。

 まず目に入ったのが赤い髪。炎に照らされているだけかと思ったがそうでもないようでフードをとったときに一緒になって出てきた長いポニーテールにしている髪も赤い色をしていた。さらに、緑の目をしている。こんな人がいるのかと驚きつつ唾を飲み込む。不思議な雰囲気を持つ女だった。


「ねえ、あんた」


 急に声をかけられ肩がこわばる。その時に女の顔を凝視する。女は一瞬驚いたような表情をしたので颯希は不思議に思うが、一泊遅れて返事をする。


「は、はい?」

「……早く帰りな」

「はっ?」


 思いがけない言葉が発せられ、一瞬固まる。その瞬間に肩をグイッと押され後ろに倒れる。どうやら、バランスを崩した先には朽ち果てた木の根元の穴があったようだ。

 あ、と声を発した時にはもう遅く穴に落ちた。すぐに着地するだろうと思ったが穴は思いのほか深く一向に着地する気配が現れない。穴の入り口に立った女が言った。


「もう二度とこっちに来ちゃダメ」


その言葉が、妙に耳に残った。


***


 次の瞬間、目を覚ましたのは学校の中庭だった。神木に寄り掛かり、柔らかな草が手の下にあり、ふわりと風が髪をなでる。息が乱れていた。外の景色は真っ暗闇から夕方へと姿を変えその眩しさに目が眩んだ。


 不思議な体験をした、と思った。また、そこに行こう、とも。あの女の顔、声、表情が頭から離れない。何が起きたのか分からないが、颯希は何か普通ではないなにかに触れ、興奮したような気がした。


次回は必ず0時投稿!!

目指せ0時投稿!!


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